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女神の失恋  作者: 浅華
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ドアを開けるとそれは突然だった。



「かあたま!!!」


銀色の塊がアマリアに飛びつく。


アマリアは易々とそれを受け止め、抱き上げた。


サラサラの銀の頭で緑色の大きなリボンがカチューシャみたく結ばれている。


アマリアと同じ色で、丸々とした目はきらきらしてこっちを見ている。


「挨拶をしよう、ディー、ほら」


アマリアが子供を下ろし、挨拶を促す。


「ディーてゆです…さんさいなの」


目線を合わせるために、姿勢を低くする。


「よろしく、俺はベルク」


手を差し出すと、


ディーテルは、俺の顔と掌を交互にじーっと見る。


アマリアと同じ色綺麗な空色が俺を射抜く。


さすがに初対面で無理かなと手を引っ込めようとすると

先程アマリアに飛び込んだように銀色の塊が弾丸のように飛びついてきた


「おわ」


ディーテルを受け止めるも、予想外の衝撃にバランスを崩し尻もちを着く。


「あ、こらディー!?」


「ディー()ね、べゆくすき!」



か、かわ


ぎゅうっと抱きつかれて思わず片方の手のひらで顔を抑える。


「わはは、ディーテル、一撃で中将を仕留めるとは大物になるねぇ」


家主、アマリアの友達が腹を抱えて笑っている。













ディーテルを抱え直し、立ち上がる。


アマリアが、手土産を渡している。


「べゆく、」


「ん?」


「ディーのことディーってよんでね」


「わかった、ディー」


ディーが、俺に今日あった出来事を話してくれる。


「きょうね、ディーね、いいこだったよ!」


「えらいな、ディーは何が好き?」


「ディーね〜、かあたまとぉ〜…とりしゃん!!」


「そうか、今度一緒に鳥さん見に行こうか」


「やったあ!ほんと?かあたまも!??」


「3人で見ような」


ディーと話をしていると、アマリアの方も話が終わったみたいで目が合う。


「ほら、ディーバイバイしよう」


「そふぃおねえたま、ばいばい!!」


「ありがとうソフィアまた連絡するわ」


アマリアの友人に軽く会釈して、ディーを抱き上げたまま歩き出す。



しばらくすると、はしゃいで疲れたのか、俺に抱かれたままディーがうとうととしだした。


「ディー、母様の所においで」


「…んや。べ…ゅくの…だっこ」


「アマリア大丈夫だ。軽いもんだから。」


「もう、ありがとう、ベルク。それにしてもここまでこの子が懐くなんて…」



もとより人懐っこい子供だと思ったが、そうでもないのか?


気がついたら、ディーはすやすやと寝息を立てていた。



「それにしても可愛いなぁ、将来は美少女になるな」


本当にアマリアにそっくりである。


大きくなったらアマリアの生き写しみたいになるのではないか?


「ん?ディーテルは男の子よ???」


「ん?」


不思議そうなアマリアと目が合う。


アマリアは、ディーの頭を見て「あっ」と呟いた。


「そのリボンは、多分ソフィアが面白がって付けたんだと思うわ。」


「そう言われれば、名前だって女の子の名前ではなかったな…」


「よく間違えられるのよね」


もう一度、眠っているディーの顔を見る。


これは、当分は女の子と勘違いされるだろうなぁ。





俺の家は貴族街の隣、比較的治安のいい一番街にある。


「ここ、俺の家」


貴族の屋敷には程遠く、しかし明らかに単身者用では無い一軒家。


呼び鈴を鳴らせば、家の雑務を一任している家令と、ハウスキーパーが出てくる。

「おかえりなさいませ」

「おかえりなさいませ…!まぁまぁ!!」


子供を抱えて、女性を連れてきた俺を見て、2人が目を丸くする。


ハウスキーパーのミセスなんかは、両手をパチンと合わせて嬉しそうにしている。


「えー…バード、ミセス、紹介するな、アマリアだ。今日からウチで下宿する。客間を整えてくれ」


「アマリアです、ベルクに抱かれているのが私の息子のディーテルです。お世話になります。」


アマリアが丁寧にお辞儀するとミセスが迫ってきた。


「まあ!なんてこと!!なんてお可愛らしいの!?私は、アロマ、ミセス・アロマです!どうぞミセスとお呼びくださいませ」


ミセスがアマリアの手を握ってブンブンと上下に振る。


アマリアと、ディーの顔を交互に見ては嬉しそうに笑う。

ミセスにとってはアマリアも孫のような年頃なのだろう。

まぁ、アマリアは年齢よりかなり若く見えるので、どういう風に考えているか知らないが。



「私はこの家と屋敷の管理を任されているバードです。よろしくお願いしますね……ベルク様…こんなに大きくなるまでお子様が出来たこと、お気づきにならなかったのですか…??」


バードは、にこやかにアマリアに挨拶したあと、俺にキッっと目を向けて静かに問いつめてくる。


「そんな甲斐性なしじゃねーよ。アマリアは恋人ではなくただの同僚だよ。それに俺と2つしか歳変わんねーよ。」


「左様でございましたか……失礼いたしました。まぁどちらにせよお可愛いらしい家族が増えたことは喜ばしいことでございますね。直ぐにお部屋の用意を致します。」










バード

家令、元軍人のおじいちゃん。若い時に怪我をして退役、大将の屋敷で家令補佐をしていた。ベルクが中将に昇格して屋敷を貰ってから、使用人を探していたところ、大将の繋がりでダドリー家の家令となる。


ミセス・アロマ

バードの奥さん、おっとりしたおばあちゃん。ベルクを息子のように思っている。



ベルク・ダドリー

伯爵1年生。1年前の功績で、2階級昇格し、中将になる。帝国で史上三人目の平民から将官になった男。将官になる際に帝国から報奨として伯爵位と貴族街に屋敷を貰う。根っからの平民なので、大きな屋敷は落ち着かないという理由で平民街に一軒家を買った。本当は小さい家で良かったが、伯爵が住むには質素すぎると周りから猛反対を受けた。

伯爵としての仕事は屋敷の執務室でする。屋敷は金持ちの親戚の家くらいの感覚。

屋敷の方には他にも使用人を雇っているが、生活する家の方にはバードとアロマと他数名しか来ない。



書く予定のなかった設定とちゃんと後で書く予定の設定。




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