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シャルロットの呟き

八十話記念、初めての一人称

 はい、みなさまこんにちは。シャルロットちゃん、です。

 え? なんでわたしが話しているかだって?

 いやね、あのね、どうしても聞いてほしい話があるのよね。

 何の話かって? そりゃあんた、領主邸に住みつきはじめたドリアード(樹妖精)達の事よ。

 流石はクソビッチ、じゃないや、ビクトーリア謹製の品種改良種ね、さっそくやらかしてくれたのよ。

 え、 何をって? まあ、待ちなさいよ。最初から説明するから。


 あれはね、オーク(猪頭族)達が、まだ街に到着していない頃だったわね。

 何時もの様に、ぜんぜん減らない書類と格闘していたわたしだけど、不意に窓を叩く音で振り返った訳。

 まあ、こんな事するのは誰なのかは解っているから、わたしは無視する事無く窓を開けたわ。

 そしたらさぁ、案の定居る訳よ。

 誰がって? ドリアード(樹妖精)よ。


「「(あるじ)様、お早よう御座います」」


 四人が声をそろえて、ものすっごい良い笑顔で言って来たわ。

 でもさ、可愛いじゃない。朝の挨拶をする為に窓を叩いて来るなんて。そう思わない?

 でもさぁ、その後でドリアード(樹妖精)達、みんな表情が暗くなってねぇ。

 まあ、わたしは、良い領主様だから、当然どうしたの? って聞いた訳よ。

 そしたらね


(あるじ)様、実は花を植えたいのですが」


 こんな事を言って来たわけ。

 まあ、領主邸にも花壇はある訳よ、だからわたしは、どうしてって聞いたのよね。

 そしたらさぁ


「自分の眷族を育ててみようと思いまして」


 恥ずかしそうにそう返して来たわけ。

 なるほど。長期的に見て、カーディナルを守護する様な計画を立ててるって事ね。わたしは一瞬で看破してみせたわ。

 それでどうしたって? 当然許可したわよ。

 でもね、問題が無い訳でも無かったのよ。

 何が問題だって? そんなの物決まってるじゃない。あいつら物が持てないのよ。

 だって当然でしょ。ドリアード(樹妖精)の本体は、神聖樹の方なんだから。

 わたし達が見ている人型は、神聖樹から漏れだした霊気が形作った仮初の身体。他の生物とコミュニケーションを取る為の、一種のツール。だからね、コイツらが花壇を作るのは無理なわけよ。


 それでどうしたって? 作ったわよ、わたしが! わたしが! わーたーしーが!

 んん? なに? どうせ嘘だって? ええそうよ。嘘よ。全部ヒムロ達に丸投げしました!

 酷いって? 酷くなんかないわよ! ヒムロだって部下に丸投げしたんだから! わたしだけが非難されるいわれはありません!

 いいじゃない。シブヤもトラも楽しそうに働いていたわよ。

 土を掘り起こしてさ、振るいに掛けて石を取り除いて、それは見事な花壇が出来上がったの。

 花の種はね、なんかドリアード(樹妖精)達がどっかから持ってきたみたい。気が付いたら、まいた後だった。

 え? 何時まいたか気になるって? 夜中じゃないの? 知らないけど。

 

 それでさぁ種をまいてから二週間くらい経った時の事よ。

 この日も、わたしは書類仕事に追われていたわけ。

 なに? 書類仕事多すぎるって。そうよ! 多いのよ!

 この時期ってねぇ、建築許可書とか、建築図面の確認とか、それに伴う予算の確保とかいろいろ大変な時期だったのよ。もう、頭から湯気が出るほどにね。


 朝はさぁ、平和だったのよ。書類を前にウンザリするくらいにはね。どのくらいだったかなぁ? お昼前である事は確かなんだけど、突然屋敷内が騒がしくなったのよ。


「姫様! 姫様!」


 ってな感じでね。

 もうね、声だけでわかったの。誰が騒いでいるのかがね。


「オイ! 姫様!」


「うるさいわねー。少しは静かに出来ないの? タムラ」


 そう、タムラよ。

 バタバタ仕事しているかと思えば、日がな一日中ソファーに踏ん反り返っていたり。全く、真面目なのか不真面目なのか? 不思議なヤツよ、全く。

 黒凰会で、一番解んないヤツなのよねぇ。


「それで、一体どうしたっての」


「どうしたは俺のセリフだ!」


 顔を近付けて、すごい剣幕で言って来たわよ。なんかすっごく焦って見えるのはわたしだけ?

 でもさぁ、あんまり顔近付けるのやめてくれる。つばが飛んでくるじゃない。

 文句を言いたいのをグッとこらえて、わたしは対応するの。なんでって? 何度も言うわよ、わたしは良い領主様なのよ。


「それで、なにを慌ててるのよ」


「姫様よぉ、庭、見たか?」


「庭? 何度も見てるけど?」


「そうじゃねえよ! 今日の庭だよ!」


 なに? 今日の庭? 別段昨日の庭と変わらないでしょうが。

 庭なんて、一日で変わるわけでも…………まあ、あるけどさぁ。でも、あんな常識外れが、そう何度もあるわけないじゃない。たった数日で、種が大木になるような出来事がさぁ。

 そう思わない?


「「姫様! 姫様! 姫様ー!」」


 そんな事を考えていたら、また来たわよ。うるさいのが。


「ヴァネッサ! イレーネ! 静かにしなさいよ!」


 二人が顔を見せた瞬間に、カマしてやったわ! ふふん、どうよ!


「静かにじゃありません!」

「緊急事態、です!」


 なんかヴァネッサが嫌に反抗的ね。

 それにイレーネ、緊急事態ってなによ? わたしに、そんな所を視察しろって言うの? いやよ、危なそうじゃない!


 でもさぁ、何時までもダダこねても居られないじゃない。わたし、領主だし。この館の主だし。

 まあ、そんな事で、わたしは重い腰を上げたわけ。

 うんざりしながら、庭に行ったわよ。


「なんじゃこりゃーーー!」


 これが、庭を見たわたしの第一声。

 ねえ、信じられる? 推測できる? 想像できる? 庭が一晩で植物モンスターの楽園になっているって。

 花壇ではアルラウネ(妖精花)が十体くらい腰を振りながら歌っているし。

 その周りを行進する根っこの集団。マンドレイク(狂命草)

 そして、それを見ながら楽しそうに手拍子を打つドリアード(樹妖精)


 わたし、自分の目を疑ったわよ!

 でもねぇ………………事実だった。現実だった。本当の事だった。

 わたしは足早にドリアード(樹妖精)に達に近づくと、抗議の声を上げたわ。


「あんた達、なにしてくれてんの!」


 そうしたらさぁ、ドリアード(樹妖精)のサフィアがね、にっこり笑ってこういったのよ。


(あるじ)様、紹介いたします。私達の眷族です」


 わたしはその場で崩れ堕ちたわよ。


 わたしの話はここまで。ね、酷い話だったでしょ?


 え? その後、植物モンスター達はどうしたって? 今も元気に庭で騒いでいるわよ!


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