失踪
「ファーあ。」
起きると、見覚えのない風景が広がっていた。
「うん?ここどこ。」
どうやらある家の一室の様である。
すると、
「ジョージ。早く起きなさい。」
部屋の外から、おれの名前と思しきものを呼ぶ声が聞こえた。すると、唐突に前世で起こった記憶がよみがえってきた。魔人との戦争。
「あああああ!思い出した!」
「なに。大きな声出してんだよ。ジョージ。やはり、成績が底辺だから行動もおかしいな。」
(あの感じが悪い奴はだれだ?それはそうと、急いでどっかいかなきゃ。おれは、二度と闘わないって決めたんだから。)
そう考えたジョージは、部屋の窓を開けると外に向けて思いっきりとんだ。
「障壁」
何もないところに、足場のようなものを作ると一気にそれを踏み台にいた家から遠ざかって行った。
(これって俗にいう家出ってやつか?)
そんなことを考えつつ、ジョージは、高度1000メートルらへんにいた。
(うわー高いなー。)
眼下には、壮大な山と栄えている都があった。空気もとてもきれいであった。
そんな高度で早速ジョージは、とりかかったのは家づくりであった。といっても、木や石で作るような立派なものではなかった。
「完全立方体」
まず、人ひとりが自在に移動できるだけの空間を作り出した。そして、
「次元断裂」
この世界の次元と空間の次元を切り離すことでこの世界では存在がジョージ以外からは認識できないようなものになった。
(よしよし。いいぞ。じゃあ早速入ってみますか。よいしょ。)
空間内には、なにもなかったが外では鳥が飛んだり、山がそばにあった。やるべきことが終わったジョージは、さっそく空間を操作して街中の上空へ移動することにした。
王都では、人々が朝の市場を営んだり騎士が警備を行ったりしていた。ジョージはいろいろなところを見ていたがこの空間に何か用意したくなったのか街中に降りてみることにした。目立たないところで、市場に降りると、さっそく商店を見て回ることにした。
「らっしゃい。あんちゃん。この野菜おいしいよ。」
「あら、イケメンだわね。どう、うちの商品買っていかない?」
(みんな、商売上手だねー。ついついほんとのこと言われて買いそうになっちゃう。)
と、外見13歳の子供が考えていると、
「きみ。ちょっといいか?」
「はいなんでしょうか。」
振り返ると、騎士の人が数人いて声をかけてきた。
「やっぱり似てませんか。」
「うーん。団長から配られた似顔絵とはよく似てるね。」
めちゃくちゃひそひそ声で話しているが断片的に聞こえてくる情報から自分を探しに来たのではないかと推理したジョージは、急いで離れることにした。
「すいません、たぶん人違いじゃないですか?」
「そうか。きみは、ジョージ君じゃないのか。」
「いえ。違いますよ。僕は、ロミリアって言います。」
「先輩どうも違うみたいですよ。」
「似顔絵はめちゃくちゃ似てるんだがな。」
「ごめんね。行っていいよ。」
「ありがとね。じゃあね。お仕事頑張ってね。」
「ははは。めちゃくちゃいい子っすね。」
と言って、ジョージは離れること成功した。しかし、
「うーん。やっぱり怪しくないか。」
「そうっすか」
「ちょっと俺つけてみるわ。」
そういうと、騎士は、ジョージの後をつけるようについていくことにした。
(ち!なんかついてきてるし。せっかくいい子風に演じることができたのにこれじゃあ意味がないな。よし、)
ジョージは、路地を曲がることにした。そして、そのまま、ダッシュした。つけていた騎士が、それに気づくと追ってきた。しかし、ジョージはすでに距離を離しており、もう一つ曲がったところで魔法を使った。
「障壁」
足場を階段状に作り空間につないでそのままジョージは登って空間に逃げ込んだ。
騎士は、
「あれどこに行った。くそ。こっちか。」
見当違いの方向に行くのであった。
(いやー危なかった。あいつ勘がいいな。にしても手配されるまで早くない?ここは危ないな。東のほうに行ってみよう。)
ジョージは、空間ごと東にだれにも気づかれないまま移動することにした。
道中、商品を運ぶ商人の姿や隊列を組んで移動している騎士などを見かけた。
二時間後、ジョージは、帝国にやってきた。街並みは、王国と異なり非常にきれいな金属製の建物が並ぶなど近代的な街並みをしていた。
(すごいきれいな街並みだな。なんと表現していいかよく分からないけどさて、この街に降りてみますか。)
そう考えて、ジョージは、帝国の建物の陰で空間から抜け出た。そして、メインストリートのほうに出てみるとたくさんの乗り物が走っていた。
(あらー。なんだこれー。馬を使ってないな。俺のいない間にこんなものまでできたのか。)
そう考えながら、散策を開始した。
(とりあえず、腹ごしらえできるところないかな。)
そう考えながら、歩いていると、ひとりでに動く人形みたいなのが店番をする面白そうな店があった。
「イラッシャイマセ。キョウハナンメイサマデショウカ。」
「えっと。一人です。」
「デハ、カウンター二オスワリクダサイ。」
店の料理人が作っているキッチンの前に案内された。
「何にされますか。」
「じゃあ、ラーメンで。」
「あいよ。」
10秒後
「へい。ラーメンお待ち。」
「はや。」
みると、うまそうな味噌ラーメンだった。
ズルズルズル。
(これは!程よいバランスのみそが麺とからんでとてもうまい。こんなに料理が進歩しているなんて。)
ジョージは、感動のあまり泣きそうだった。
「じゃあ大将ごちそうさん。」
「はいよ。10リルだ。」
それをいわれてジョージは、焦った。金を持ってなかった。このままでは、ヤバイ。
「大将ちょっとトイレ行っていいか?」
「なんだ。まあいいよ。そこの右側だ。」
ジョージは、案内された方向に行った。必死にどうしようか考えた。結果、逃亡を選択した。