1話
いつ終わるか作者本人もわかっていません。「僕」に任せっぱなしです。彼はあれでもなかなか優秀だからたぶん大丈夫だと勝手に思っています。感動のヒューマンドラマになるか、はたまたどんちゃん騒ぎの面白劇になるのか…更新されてからのお楽しみ☆
毎週更新を目指しています。
『昔この世界は、魔力のある者達に支配されていた。私達の先祖はそれに気づかず日々を過ごしていたが、ごくたまに「魔女」として現れる彼女らに恐怖の念を…』
「もういいです。これでは駄目ですね。」
そう言うと女史はネタ帳の切れ端を僕に投げてよこした。
「あの作品の切れ味はもう無いんですか?私はああいうのが読みたいんですけど…。」
嫌味っぽく意地悪そうな口調で僕を追い詰める。
編集の女って奴はみんなこんななのだろうか?
今後の人生にもう少し希望を持つためにも女性は素晴らしいものだと思い込みたいものだ。
歴史に「もしも」はないと昔先生が言っていた気がするが、
たいていは夢の中での出来事だった。
いわゆる睡眠学習、落ちこぼれの生徒、はみ出し者。
そんな生活の中で吹き溜まりにゴミが集まるように集った仲間たち。
悪くもなれず、頭も顔も良くない。
全部が中途半端だった。何だかんだで就職して、久しぶりに飲みに集まった吹き溜まり達が俺の机に
「エロ本が隠してないか調べる」
なんて言い出した上に例の作品を見つけてしまったのだ。
仕事の合間に暇つぶし程度に書いていた理想のワルの物語が一般大衆には大変受けたみたいなのだ。
吹き溜まりの妄想力もやるもんだと他人事のように感心していたが、
もうそんな場合ではない。
二十八歳独身塾講師が一夜にして小説界の若手ホープになってしまったのだから。
たかが吹き溜まりの妄想力と吹き溜まりの酔った勢いが一人の人間の人生を変えてしまった。
ひとまず女史には「また練ってきます」と乾いた声で伝え、のそのそと部屋の外へと出て行った。