44.お前が信じるお前を信じろ
「あー!今日もクッソいい天気であっちいなぁ!」
姉さんがそう愚痴りたくなるのも無理はない。
今年の最高気温を連日更新中で、特に今日は10年に1度の猛暑になるとかなんとか。
10年に1度が何回来るのかは知らないが。去年も聞いたぞ。
そんな暴力的な日差しの下で、俺たちは錦野家からほど近い場所にあるキャンプ場に来ていた。
穴場なのか、人はそれほどいない。まだお盆前だからというのもあるかもしれないな。
まぁそんなことはどうだっていいんだ。
問題は——
何故全員水着になっているのかということだ。
いくら暑いからって開放的すぎない?上にTシャツやパーカーを着ているといっても足は丸出しだ。
そういうのは男子高校生には目の毒というんだと思います。はい。
大人組まで同じような格好をしている。
「ご飯の時間までは少しあるからみんな遊んでくるといいよ」
「じゃ、俺ちょっと散歩してくるわ」
ランランと目を輝かせた姉さんに捕まる前に逃げる。
「大丈夫か?迷子にならないようにお姉ちゃんがついていってやろうか?」
「いらんわ。みんなと遊んでろよ」
「チッ、可愛くねーの」
「わ、私も一緒に、行っていい......?」
驚いた。竹田なんかはついてくるかもとは思ったが、まさかあかりが行きたがるとは。
「......いいけどちゃんと日焼け止めと防虫スプレーしとけよ」
「うん、大丈夫」
このあたりはハイキングコースも設置されており、豊かな自然を楽しめる。
「先生、いとこだったんだね」
「ああ。おまえにとってもいとこなんだ。何かあったら頼るといいぞ」
「うん」
「あ、それとな。お前の母親、今カンボジアにいるらしいぞ。クソ親父と出張行ってなんかのトラブルで帰れないんだとよ」
「カンボジア......」
「心配か?」
「......うん。私、ソラ君のとこに来てからまだお母さんと連絡取ってないから」
そうだったのか。まぁトラウマは克服出来ても過去が消えるわけじゃないしな。
母親からも逃げてしまって、今更どう接すればいいのか分からなくなっているんだろう。
「ま、やりたいようにすればいいだろ。向こうだって接し方が分からないだけで、きっかけさえあれば上手くいくかもしれないし」
あかりの母親には会ったことも無いしただの希望的観測だが、今の俺にかけてやれる言葉は他にない。
「......うん。ありがとう。その時はソラ君のことも紹介するね。私の......自慢のお義兄ちゃんだって」
「はいはい」
まぁこいつがこれだけ変わったのを見てどんな反応をするんだろうなっていう興味はなくもない。
「——くらえっ!螺旋の力!ギガ・ドリル・スマーッシュ!!」
みんなの所へ戻ると、なにやら物騒な叫び声が聞こえた。
どうやらバドミントンをやっているようだが、約1名違う遊びに興じている気もする。
たしかにバドミントンのシャトルって回転するし螺旋なんだけどさ。
そのうち、あばよダチ公とか言い出さないか心配だ。
伯父さん伯母さんでご飯の支度をしていたのであかりとそれを手伝う。
あのよくわからんスマッシュをくらうよりはずっといい。
支度といってもバーベキューなので、炭や食材を用意するだけであとは各自でどうぞって感じだけど。
準備が終わったころにようやく全員集まってきたのだが、運動して暑いからか上を脱いで完全な水着姿だ。
如月はフレアタイプの白。スタイルの良さが際立っている。
竹田はフリルのついたピンク。水着でもあざとさは全開だ。
三井はまさかの競泳水着。三つ編みと競泳水着が似合いすぎている。
姉さんは大人な黒ビキニ。うっすら割れている腹筋がなまめかしい。
そして仲間に入りたかったのか、隣でパーカーを脱ぎ捨てたあかりはワンピースタイプ。スラっとした体に似合っている。
皆汗が流れていて頬も上気しているのが色気を増大させている。
目のやり場に困るからやめてほしいのだが。
この暑さで羞恥心も溶けちゃった?
もしかして俺って認識されていない?世界からはじき出されちゃった?
そんな俺の心のうちなどお構い無しに、お肉争奪戦が開始された。
肉や野菜の焼けてくるいい匂い。箸と箸のぶつかる音。宙を舞う肉。
お、あの肉焼けてるじゃん。もーらい。
「あ、センパイ!そのお肉私のですぅ!」
「油断してるのが悪い。ほら、代わりに椎茸やるよ」
「え、いいんですか!あー」
竹田が俺の隣まで来て口を開けている。雛かよ。
まぁ肉食っちまったしな。仕方ない。
口に突っ込んでやると美味しそうに噛みしめている。
「ん~!センパイの愛が詰まった椎茸美味しいですぅ!」
いや、愛とか詰まってないし焼いただけなんだが?ついさっき箸で姉さんとバトルしていたくせに肉いらんのか。
それならありがたく肉をいただくとしようと思ったのだが、何故か囲まれてしまった。
ソラはにげだした。しかしまわりこまれてしまった!
「そ、そら君、私ピーマンがいいな」
「......私、ネギ」
如月とあかりが俺に要望を伝えながら皿に肉をのせてくる。そういうシステムの店じゃねえぞ。
なに、こいつらベジタリアンだったの?野菜の戦士かなにかなの?怒りで髪が金色になるような人はちょっと勘弁願いたい。
「ほほぉ?じゃあ食べさせるので忙しいソラにはお姉ちゃんが食べさせてやろうじゃないか」
「いやけっこうです」
姉さんまで悪ノリして肉を食べさせようとしてくる。ていうかそのウザ姉キャラいつまでやるんだよ。
結局食べさせたり食べさせられたりのバーベキューは食材が無くなるまで続くのだった。
カムバック、皆の羞恥心。
1番好きな言葉は「墓穴掘っても掘り抜けて、突き抜けたなら俺の勝ち!」です。
螺旋族の皆様はギガドリル評価お願いします(o・ω-人)




