38.お勉強会!
「ソラっち~!聞いたよ~!あかりんに料理教えるんだって?」
朝っぱらからうるさいな。
あかりの席に三井と如月が集まってはしゃいでおり、俺が登校するやいなや声をかけられた。
「......なんだよその呼び方」
「えー、ソラっちって可愛くない?神谷君だとなんか距離あるし、この際変えてみようかなって」
この際ってどの際だよ。あかりに構ってくれるのはありがたいが、俺とは無関係でいてどうぞ。
ていうか三井っていかにもおとなしそうな外見なのに、こんなグイグイ来る奴だったのな。
「でさでさ~、私たちにも教えてほしいな~って」
「断る」
「えー、ついでだし教えてよ~」
あかりに教えるのは俺の目的のためだし三井に教えるなんて俺にメリットが......って私たち?
あかり、三井と並んで俺を見つめてくる瞳。あ、お前もなの?
「お前らそろいもそろって料理出来ないのか?」
「甘いよソラっち。実家暮らしの子なんてお母さんがやってくれるんだから自分でやるわけないじゃん」
いや、なんで偉そうなんだよ。もっと感謝してやれよ。やってもらって当たり前って思ってると痛い目見るぞ。
「わ、私も......お母さんの手伝いくらいはたまにするけど、1人ではやったことないし......」
「じゃあその母親に教わればいいんじゃねえの?」
「お母さんに聞いても、これくらいとかこんな感じとか曖昧で分からないんだもん......」
あー、そういうパターンか。まぁ慣れちゃえば味も時間も感覚で分かるようになるしな。あとは味見しながら調整するだけだし。
「それにさ、ソラっちのお弁当ってクオリティ高いじゃん?あんなの作ってみたい!」
言うほどクオリティ高くねえぞ。ただ俺自身が飽きないようにしてるだけだし。
どう断ろうかと考えていたが、ふとこいつらの顔を見て思いついた。
「まぁたまになら教えてやらんこともない。......が、条件がある」
「ホント?やりい!」
「じ、条件って......?」
「お前ら2人であかりの勉強を見てやれ。前回のテストはギリギリなんとかなったが、次は期末だしそう簡単にはいかないだろ。俺はもうゴメンだからな」
優等生の如月と見た目は文学少女っぽい三井。この2人ならなんとかしてくれるかもしれない。
それに、友達と一緒のほうが勉強も料理もあかりのやる気が出るだろうしな。
「おっしゃあ!ソラっち言質取ったからね!頑張ろうね、あかりん!」
「私も協力するから分からないことはどんどん聞いてね!」
「うん、ありがとう......」
と、上手く利用したつもりでいたのだが、そう上手くいかないのが人生というものである。俺の考えが甘かったとも言える。
その週の土曜日、昼食を終えてソファでついウトウトしていると、インターフォンが鳴った。
意識が覚醒しかけた俺より早くあかりが玄関に向かい、戻って来た時一緒にいたのは......
「お邪魔しまーっす!」
「お、お邪魔します......」
三井と如月だった。
「......は?」
「いきなりごめんね~!やっぱ勉強するなら広いとこがいいじゃん?」
あー、うん。そういうことか。理解したわ。
俺に言えばダメだと言われるから黙ってたのね。飯食ってる時もやたらソワソワしてたし。
まさかいきなり本拠地に踏み込まれるとはな......。
なんかもう相手すんのも面倒くさいしいいや。
「ちゃんと勉強しろよ。あと騒ぐなら追い出すから覚悟しとけ」
俺が自室にこもっていればいいだけの話だ。
「あ、ソラっち待って!」
「あん?」
「ちゃんと勉強するから、我々は夕食を希望します!」
「します!」
体育祭で選手宣誓するかのように片手をビシッと上げる3人。いやあかりは元々食うし関係なくね?
「却下だ」
「えー!あかりんが絶賛するチャーハン食べたいよーう」
「実際に作るとこ見ればお料理の勉強にもなるし......」
しかもメニューまで指定されんのかよ。なんか最近チャーハン多いな。まぁ作るの楽だしあかりは文句言わずに食べるからいいんだけどさ。
まぁ一応教えるって言っちゃったしなぁ。テストが終わって結果出てからの予定だったけど。
あわよくばそのまま夏休みに入って有耶無耶に出来ないかなって思ったけど。
「チッ。......チャーハンでいいんだな?その代わり勉強はマジでちゃんとやれよ。次の期末テスト、あかりのボーダーラインは平均以上だ」
「普通はクラスの女子が部屋にいたら喜ぶと思うんだけどなぁ。さすがソラっちは違うねぇ」
俺は自室で着替えてから家を出る。
さすがに4人分ともなると食材が足りないから買いに行かねばならないのだ。休日午後のスーパーは混むから行きたくないんだけどなぁ......。
結局3人はさして騒ぐことも無く、休憩を挟みつつもちゃんと勉強していたようだった。
あかりのノートを覗き見てみると、ポイントが分かりやすくまとめられていた。
俺は人に教えるのは苦手......というか自分が理解できてればそれでいいって考えだからそれを伝えられないんだよな。だからこうして分かりやすく教えられるのは素直にすごいと思う。
ま、約束だしと料理をしたのだが、さすがに3人しかも女子に見られながらだと緊張する。
完成したのはマーボー風あんかけチャーハンwithオムレツだ。卵が安かったからついオムレツも乗せちゃったけど、もうよくわかんねえな。
作ってる最中の女性陣はことあるごとに感嘆の声を漏らし、はしゃいでいた。さすが女三人寄ればなんとやらだな。
「うわ!んっま!パラッパラのチャーハンとかホントに作れるんだ~」
「オムレツもすごくない?外側こんなに綺麗なのに中はトロトロ......。お店で出てくるやつみたい」
「ソラ君のチャーハンは、世界一だから......」
チャーハンごときでそこまで言うか?文句を言われるよりはいいけど。
「こんなの毎日食べれるなんてずるーい!私もここの子になる~」
「あ、私も!」
「......ダメ。ソラ君のチャーハンは私の」
なんかよく分からない争いが起こってるけど、3人ともいらんわ。
うち1人はチャーハンしか眼中にないし。
テストが終わるまでこんなのが続くのかと1人ため息をつくのだった。
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