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19.ストーカーVS居留守

 



 翌日。目が覚めて時計を見ると午前10時だった。

 昨夜はなかなか寝付けなかったので、その分だいぶ寝ていたようだ。


 スマホを確認するとあかりからは何の返信もなく、ただ既読がついているのみだった。この俺相手に既読無視とはな。俺も返さなきゃよかった。


 腹減ったな......。時間も中途半端だし昼飯も兼ねて作ってしまおうか。

 少々気だるげな体を起こして部屋から出ると、当たり前だが静かだ。


 つい1か月前までは当たり前の光景だったのだが、なんとも不思議な感じだ。別に寂しいということではない。断じて。






 昼飯を食べ終えて、一通りの家事を済ませると時刻は12時半。さて、どうするか。

 ......よし、久しぶりに本屋でも行くか。あかりが来てからは本を買えてないしな。



 身支度を済ませ、さあ出かけるぞと玄関に向かおうとしたところでインターホンが鳴る。

 ......なんだ?荷物はなにも頼んでないはずだけど。


 玄関まで行って覗き穴から来訪者を確認すると、そこにいたのはまさかの如月だった。


 ......え?は?ドウイウコト?いったいなんの用だ?つかそもそもなんでウチを知ってんだよ。



 予想外の事態に動揺してしまうが、ここは迷うまでもなく居留守だ。早く帰れ。


 外を覗いたまま念じていると、如月は再びインターホンに手を伸ばす。


 おい、一度鳴らして反応なかったんだから出直してこいよ。そして金輪際近づくな。


「おっかしーなー。たしかここだったと思うんだけど......。出かけちゃったのかなあ」


 よしよし、そのままターンアラウンド、アンドゴーホームだ。


 そんな俺の願いは、突如自分のポケットのスマホから発せられた悪魔の音によって虚しく潰えた。


 おい、こんな時にメッセージ送ってきやがるのはどこのどいつだ。十中八九あかりしかいないんだがな。


 当然その音は扉越しでも聞こえていたらしく、来訪者の顔がパッと輝いた。


 ぐぬぬ。こうなってしまえば居留守は使えまい。愚かな義妹め、覚えておけよ......。



 しかし俺は諦めないぞ。反転して急ぎ廊下を戻る。

 そこにあるのは、外のインターホンと繋がっている受話器。それを取ると声色を変えて応答する。


「はい、なんでしょう」

「あ、えと、神谷く......さんのお宅でしょうか?」

「いいえ違います」

「え、あれ?たしかここ......っていうか、もしかして神谷君?」


 ナゼバレタ。俺の変声技術は完璧のハズだ。


「イイエ、チガイマスヨ?ワタシ、ソンナヒトシラナイ」

「やっぱり神谷君だよね!?聞き間違えるはずないもん!」


 おい、お前は某国のエージェントかなにかなのか?軽くホラーなんだが。

 もしかして俺は恨みを買ってしまって消されてしまうのだろうか。やだ怖い......。


「宗教の勧誘なら間に合ってますので、どうぞお引き取りくださいませ」

「違うよ!っていうかなんでインターホン越し!?せめて出てきてよ!」

「え、やだよ。めんどくさいし」

「だ、だって......なんかほかの人に見られているような気がして恥ずかしいんだもん......」


 ぐぬう。それを言われると弱い。だったらさっさと帰れよって話だけど。


 まあ居留守も変声も見破られてしまっては仕方ない。近所の人に変な噂たてられても困るしな。


 俺は諦めて玄関に向かって扉を開けた。

 そこにいたのは、花柄のスカートにシースルーの白いブラウスを身に纏った如月。学校ではストレートの髪には編み込みも見られる。

 ......いかにも清楚な優等生って感じだが、世の女子高生ってのは休日のたびにこんなにお洒落してんの?大変だな。


「はぁ......で、何の用だ」

「用っていうか......た、たまたま通りがかったから寄ってみただけなんだけど」


 ダウト。顔を背けながら言っても説得力ないぞ。半目で睨んでいると、如月は分かりやすく慌ててみせる。


「え、ええと......あれ?神谷君もしかして今から出かけるの?」

「ああちょっと買い物にな。だからお前も早く帰」

「じゃあさ!私も一緒に行っていい!?」


 おい、人の話は最後まで聞けって教わらなかったのか?ちなみに俺は教わってない。


 しかしなんだってこいつはこんなにもしつこく来るんだ?


()()()()()()()()()()()()()()は、どこかいく途中じゃないのか?」

「あ......、う、ううん、もう用事は済ませてきたから全然大丈夫だよ!ノープロブレムだよ!」


 なんてこった......。こいつ、通りがかった設定すでに忘れてやがる。実は優等生の皮かぶったポンコツなのでは?


 まあそんなことよりもだ。


「そもそもなんで俺の家知ってんだ?」


 こいつに限らず、俺はクラスの誰とも接点などなかった。故に誰にも家は教えてないし知るすべはないはずだが。


「うぇ!?あ、あの、えっと......、前に帰り道で話しかけようとしたけどできなくて結局家までついてきちゃった、とかじゃないよ?」


 はい、ご丁寧な説明どうもありがとう。目が泳ぎまくってるけど大丈夫か?視線の世界水泳でも目指しちゃってる系か?せいぜい溺れるなよ。


 というか、あれだな。それって普通にストーカーじゃねえか。こんなとこにもいやがったとは......。

 俺の周りのストーカー率やばくねえか?なに、そんなに俺に恨みでもあるわけ?


「ハァ......。とにかく、出かけるっつっても本屋行くくらいだし一緒にいく意味なんてねえよ」

「あ!私も欲しい本があるの!だから一緒に行こ!」


 クッ......、こいつ手強い......。なんだってこんなに粘るんだよ。モロヘイヤかよ。茹でるぞ。


 さて、どうするか。ここでこれ以上時間を無駄にするのも嫌だし、いっそのことさっさと行って済ませたほうがいいのではないか?最悪途中で撒けばいいしな。


 よし、そうと決まればパパッと行ってこよう。無言で鍵をかけて家を後にする。


「あ、ねえ待ってよ!」


 後ろから追いかけてくるが、俺は一緒に行くことを許可した覚えはない。

 ついてくるなら勝手にすればいいが、会話をしてやる義理はない。




ストーカーWIN!

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