表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/12

6.いざ冒険者ギルドへ!

 ロベルトさんからもらった剣を()き、冒険者ギルトへと向かっていた。

 今はお兄さんのお古だというチュニックとズボンを着用している。

 初日に来ていたブレザーはジーナさんからもらった布のリュックサックに入れている。

 とりあえずこれで見慣れた格好になったわけだ。

 特に不審がられずに済むだろう。

 

「色々とあったけど、冒険者ギルドに到着、っと」


 本能に負けたせいで、二日目にしてようやく訪れることができた目的の建物を俺は見上げた。

 看板には『冒険者ギルド』とちゃんと書いてあるのが見える。

 入り口は開け放たれており、来るもの拒まずといった印象を醸し出している。

 ふっ、上等だ、入ってやろうじゃないか。

 何せ俺は異世界転生者だ。チートスキル持ちだ。

 ここから俺の華々しい異世界ライフがついに始まるのだ!

 背筋を伸ばし、顎を引き、顔を引き締め、冒険者ギルドへの入り口へと向かう。

 とうとう冒険者ギルドへと足を踏み入れた俺は記念すべき第一声を発した。


「……し、失礼しまーす」


 その声を聞いたものは後に語る。正に蚊の鳴くような声だった、と。

 

 ……仕方がないじゃないか。

 入った瞬間、壁に背を預けていたマッチョで強面のおじさんがジロリとこちらを睨みつけたんだから。

 いくらグレードアップしたスキルを持ってたって、こっちはド素人だ。簡単にひねり潰されてしまう。

 やはり目立たず地味に行動しよう。雉も鳴かずば撃たれまい、だ。


 こそこそと目立たないように、『受付』と書かれた場所に向かっていく。

 そこには胸が強調される服を着た金髪の綺麗なお姉さんが立っていた。


「あのーすみません、冒険者になりたいのですが……」


「はい、冒険者登録の方ですか? 身分証はお持ちでしょうか」


 おっと忘れていた。身分証が必要だったな。

 身分証の提示を求められ、背負っていたリュックサックを下す。

 無くすとまずいと思い、ブレザーの内ポケットに入れたままだった。


「はい。これで大丈夫ですか?」


 検問所でも有効だった学生証を提示する。

 黒髪黒目の俺の自画像が添付されたそれを受け取ったお姉さんはまじまじと見つめ、やがて笑顔を返してきた。


「はい、カイト・タチバナさんですね。身分証に問題はございませんので、必要事項をこちらの申込書にご記入ください。全て記入頂けましたら、こちらの身分証に冒険者ギルドカードの効果を付与しますので」


「……付与?」


 身分証にカードの効果を付与ってどういう意味だろう。

 というかそもそも俺の身分証って漢字で書いてあるんだけど、検問所の人も、この受付のお姉さんも普通に読めてるな。

 やはり何かしら魔法が掛かってるのか?


「はい、こちらの身分証はギルドカードの効果を付与できるアイテムですので、このまま冒険者ギルドのカード効果が付与できます。そうすればわざわざギルドカードを発行しなくてもこれ一枚で済むようになります」


 俺の学生証がそんなことになってたのか。

 十中八九あの女神様の仕業だろうが、今回はグッジョブだな。

 

「へえ、それは便利ですね。――はい、記入しましたので、確認お願いします」


 名前などの必要事項を記入し終えた俺は申込書を受付にいる彼女へと渡す。

 彼女はそれを受け取ると、内容を確認しているのだろう目が左右に何度か往復していた。

 少し経って、全てを確認し終えたのか、顔を上げ俺を見た。


「内容に問題はありませんでした。それでは冒険者ギルドのカード効果を付与しますので、こちらに手をのせてください」


 そういって受付の横にある手形の形に浅い溝が掘られた金属製の台を手で指し示した。

 言われた通り、卓上電磁調理器に似たそれに手を開いた状態で触れる。

 ヒンヤリとした感覚が手のひらに伝わり、しかしすぐにじんわりとした温かさが伝わってくる。

 お姉さんの方を見ると、受付の内側にも同じような金属製の台があり、学生証をそこに乗せていた。

 こっちの台との違いはお姉さんの方はキーボードに似た道具がくっついている点だろうか。

 そのキーボードをお姉さんが何やら操作している。

 さっき言っていた『付与』を行っているのだろうか。

 しばらく待っていると作業が完了したのか学生証を台から取り除き、笑顔でこちらに渡してきた。


「はい、これでカイトさんは冒険者として登録されました。こちらの身分証にもギルドカードの効果が付与されていますので、ご確認ください」


 ビジネススマイルと分かっていても少しドキッとしてしまった。

 やめてくれ、その笑顔は、――いや、もうそれはいい。

 心の中で頭を振り、学生証を受け取り内容を確認する。

 すると、今までは自分の名前と顔写真しか記載されていないと思っていた学生証から、それら以外の情報が頭の中に浮かび上がった。


  名前:カイト・タチバナ

  年齢:十七

  職業:学生

  クラス:転生者(1)、冒険者(1)

  スキル:ヒール(特)、アイテムポケット


 何だこれ。見たことない情報が頭の中に入ってきたな。

 これがギルドカードの効果ってことなんだろうか。

 クラスとスキル欄があるから、これが今俺が持ってるそれってことか。

 クラスは転生者と冒険者か。

 転生者は初期から所持していて、冒険者はさっき登録したから取得したってところかな。

 横の数字はなんだろう。取得数か? 転生者を複数取得する? いや意味が分からないな。

 そうなると習熟度、いやレベルか。

 スキルの、ヒール(特)って書かれてるのは通常のヒールじゃなくて、異世界特典のヒールだからか。

 でも、アイテムポケットってなんだ? スキルだから使えるんだろうけど最初から取得してたんだろうか。

 でもヒール(特)の次に表記されてるし、最初からというより異世界に来てから取得した可能性のほうが高そうだな。


「あの、アイテムポケットってスキルは、なんだかわかりますか?」


 あれこれ悩んでもしょうがないと思い、受付のお姉さんに聞いてみた。

 もしかしたら知っているかもしれない。


「はい、アイテムポケットは冒険者のクラスを取得された方が使用できるスキルになります。クラスが成長すると中に入れることができるアイテムの種類と個数が増えます」


 お、ビンゴだ。お姉さんが知っていた。

 なるほど、冒険者のクラスを得ると、アイテムポケットというスキルを習得すると。

 しかもアイテムを入れられるということは、リュックサックを背負わなくてもここに荷物を入れられるということか。

 いや、クラスが成長すると種類と個数が増えると言っていたな。

 ということはレベル一だから、まだ一種類一個しか入れられないということだろうか。

 当分はリュックサックは必要だな。

 まあ低レベルでそんなにアイテムが必要になる可能性は低いし、気長に待てばいいか。

 ヒール(特)がある俺には回復薬は不要だしな。

 しかし冒険者登録でアイテムポケットを習得できたということは、他のギルドで登録すれば別のスキルを習得できるってことか?

 おお、それはいいな。色んなギルドで登録すれば沢山スキルが習得できるのか。


「他のギルドでも登録すれば冒険者以外のクラスとスキルを取得できますか?」


 思い切って聞いてみた。

 俺の考えが正しければ多数のクラスと多数のスキルを使いこなせるチートキャラの完成だ。

 と思っていたのだが。


「はい、他のギルドでも登録すればそのギルドに合ったクラスが取得できます。ですが、冒険者のクラスは外れてしまいますので、アイテムポケットは使用できなくなります。クラスは一人一つまでしか設定できませんので。冒険者のクラスを再設定したい場合は当ギルドにお越しください」


 あれ、クラスは一つまでなのか。転生者と冒険者の二つを持っているんだが。

 いや俺は異世界転生者だから、転生者だけ特殊なクラスなんだろう。

 特殊なクラスだからそれを外せなくて、冒険者のクラスが追加で入っているというところか。

 他のギルドで登録して新しいクラスを取得すると冒険者のクラスは外れるといったところかな。

 世の中うまくいかないものだ。

 まあ他のクラスは今のところいいか。

 ヒール(特)あるし、手荷物減らす用にアイテムポケットも育てたいし。


「あと、アイテムポケットにはギルドカード、及びその効果を付与されたアイテムは入れられませんのでご注意ください。あなたがお持ちの身分証がそれに当たります」


 あ、そうなんだ。

 まあ当然か。

 冒険者のクラスが外れるとアイテムポケットが使用できなくなるって言ってたし、入れたままクラスを外したら一生取り出せなくなる。 


「なるほど。丁寧に説明頂いてありがとうございます。冒険者として頑張っていくつもりですので、よろしくお願いします」


 他のギルドにすぐ浮気するような発言をしてしまったバツの悪さから、とりあえず自分で自分をフォローする発言をしておいた。

 特に問題はないだろうが、お姉さん以外にも強面の冒険者が何人もギルド内にいるし、その人たちに睨まれたらたまったものじゃない。


「はい、頑張ってくださいね。期待してますから」


 俺の心配をよそに、ビジネススマイル全開の顔をお姉さんは向けてきた。

 その笑顔に自分の動悸が早くなったのを感じた。




 効果は抜群だ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ