魔物到来4
すると魔物の体が光に包まれ少しずつ消えていくではないか。
「魔物退治は初めてですか?物の怪との違いに驚かれましたか」
溶けるようになくなる物の怪とは全然違うその光景に自分でやっているにも関わらず初めて見るその光景に驚きを隠せなかった。
包まれた光がすべて消え、魔物は文字通り跡形もなく消え去った。
「ううっ」
先ほど魔物に殺されたと思った熊吾郎が呻き声をあげた。
「あんたっ!」
女が駆け寄る。
左腕から血を流している。すぐさま布で腕を絞り止血する。腕は折れているようだがそれ以外に大きな傷はない。
「・・・俺は生きているのか。菊の顔が見える・・・夢か」
「夢じゃないよ、あんた。生きてるんだよ!」
熊吾郎を抱きしめた。
「生きているのか・・・化け物はどうした!」
突然大声を上げる。
「もう退治しちまったよ」
「お前がやったのか!」
「馬鹿だね、あんた。違うにきまってんじゃないか。そこの男の人に助けてもらったんだよ」
菊はクスリと笑い、刀の男に顔を向けた。
「ありがとうございました。うっ、痛たた・・・」
熊吾郎は礼を言うと安心したのか左腕の傷口を押さえ苦悶の表情を浮かべる。
「なーに言ってんの。命が助かったんだ。こんな傷なんてことないよ」
バチンと傷口をひっぱたいた。
「いっってえぇぇぇーーーー!!」
熊吾郎は村中に響き渡るような叫び声を上げた。
左腕を押さえながらのたうち回る。
「こらこら菊さんとやら。旦那になんちゅうことしよるんですか」
刀の男は苦笑しながらたしなめる。
「お父さん・・・」
子供が心配そうに熊吾郎を見つめる。
熊吾郎は息を切らしながらも起き上がり、子供の頭をガシガシなでる。
「ううっ。も、もう大丈夫だから安心しろ。菊っ!いてぇじゃねえか、こんちくしょうっ!この馬鹿がっ!」
熊吾郎に悪態をつかれた菊は微笑みを浮かべながらも感涙にむせぶ。
「本当に・・・よかった」
菊が優しく抱きつく。左腕の傷を避け包み込むように。