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番匠一代記  作者: まさき
序章
4/38

魔物到来2

(もしかしたら魔物かもしれない・・・)


昔、師匠から聞いたことがある。物の怪とは違い固形の体をもつ化け物がいるらしい。

師匠自身も見たことがないらしいが、意思を持ち時に人を襲うと存在らしい。一応、物の怪の上位に位置する化け物で、基本的には物の怪と同じく神官の祈りによって退治することができると聞いた。だが、魔物を上回る力をもつ神官でなければどうすることもできないらしい。


(私ごときで大丈夫だろうか・・・)


心配しつつも急ぎ門へ向かう。

門の近くでは聞いた通り熊のような化け物と懸命に戦っている男がいた。

化け物は黒い煙のようなものを纏っており獣ではないことが一目でわかる。


「熊吾郎さん、大丈夫ですか!」

「おせぇよ神主様。早く退治してくれよ!」


神主が化け物に向かって祈りを込めた。


「ぐぎゃ、ぐぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ・・・・」


聞くに堪えない呻き声を上げ苦しそうにはするもののいつもと違い体が溶けない。


「ふぬぬぬぬぬ・・・・」


神主はさらに力を込めて祈るが一向に溶ける気配はない。


「ぐはっ、はぁはぁはぁ」


神主が息をついた瞬間化け物が熊吾郎めがけて腕を振り下ろしてきた。

熊吾郎は持っていた木っ端で必死に防御する。

化け物は何度も何度も熊吾郎に向かって腕を振り下ろす。


「神主様ぁ!もう・・・耐えらんねぇよ!」


熊吾郎は弱音を吐きつつも必死で攻撃に耐える。


「すまないっ!」


息を切らした神主がまた化け物に向かって祈りを込める。

今度はさっきよりも一層に力を込めて祈った。


「ぐぅぅぅぅぅ」


化け物はさっきよりは苦しそうだ。

だが熊の化け物は突然神主の方に振り向き腕を振り上げた。


「あぶねぇ!」


熊吾郎は神主を蹴り飛ばし間一髪化け物の腕をかわす。

爪の攻撃こそ避けることができたものの今度は振り上げた腕に当たってしまい吹っ飛ばされてしまう。


「うぅ・・・」


神主は倒れこんでしまう。


「神主様っ!」


熊吾郎は電光石火の勢いで神主を抱え近くの家の中に逃げ込む。

すると化け物はこちらに向かってくるのではなく反対に向きかえりのそのそと進む。


「もしかして・・・」


熊吾郎の予感は的中した。

化け物の向かっている先は熊吾郎の家だ。中には逃げ遅れた嫁と小さい息子がいる。


「裏から早く逃げろっ!」


熊吾郎が叫ぶ。

すると家の裏手から人影が見えた。化け物は熊吾郎の家のガリガリと爪を立てて削っており、まだ人影には気づいていないようだ。

熊吾郎は安堵の表情を浮かべる。

とその時、こともあろうことか人影はこちらの家に向かって逃げてくるではないか。


「馬鹿野郎っ!丘のお社に向かうんだ!」


熊吾郎が叫ぶも嫁の耳には全く届かないようだ。

脇目も振らず熊吾郎のいるこの家へ向かってくる。しかもこともあろうことか化け物の横を通ってだ。


「うっうがぁぁーーー!!」


化け物が気づかないはずもない。振り向きざまに大声で叫び猛突進していく。

子供を抱え必死に逃げる。しかし、その差はどんどん縮まっていく。

熊吾郎は近くにあった木の棒を片手に家から飛び出し化け物に向かって駆けだした。


「ぐおりゃぁぁー!」


化け物に向かって渾身の力を込め木の棒を叩きつけた。

上から叩きつけられた化け物はその場に倒れこむ。


「早く丘の上へ行けっ!」


早く逃げるよう促すと倒れこんだ化け物に向かって何度も何度も叩き続けた。

とどめの一発とばかりに力を込め木の棒を振り上げたその瞬間。

バンッ

化け物の振り上げた腕が思い切り胸に当たり吹っ飛ばされてしまった。


「あっあんた!」


逃げ始めた嫁が振り返り熊吾郎を見る。


「は・・・・・うぅ」


早く逃げろと言っているつもりだか胸を強く打ったため言葉にならない。

化け物がのそのそと近づいてくるが体が思うように動かない。


グシャッ


横倒しになった熊吾郎の左肩を化け物が引っかく。熊吾郎は首をもたげ動かなくなってしまった。


「キャーーーー!」


女は目に大粒の涙を浮かべ叫び、その場に力なく座り込んでしまう。

化け物がこちらに向かってきた。

女は嗚咽を上げ己の死期を悟ったが何とか子供だけでも思い自分が盾となるよう力強く抱きしめうずくまった。


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