表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
番匠一代記  作者: まさき
序章
2/38

物の怪侵入2

「こんなに多くいるとは・・・」


急ぎ結界を張り終え丘を降りてみれば異様な風景が広がっていた。村のいたるところを物の怪は我が物顔で闊歩している。


「か、神主様!」


畑に入らせまいと必死で物の怪を木の棒でたたき続ける青年が叫ぶ。神主は急いで祓幣を物の怪に向かって振り、祈りを込める。物の怪の体は溶け出し、見る見るうちにその体が消えていった。


「助かりました。ありがとうございます。ありがとうございます!」


青年は何度も礼を言う。


「こんなところにいないで早くお社に行きなさい。」

「でも、でも作物がみんなやられちまうよ」


退治できないまでも多少の足止めはできるのでここに留まっていたようだ。


「いいから行きなさい。ここは私に任せて」

「・・・わかりました」


青年はいやいやながらも指示に従い、お社の丘に向かって駆けていった。

神主は近くにいるものから順に片っ端から退治していく。


「ふぅ、あらかた済んだかな」


最後の一匹を退治したときにはもう息も上がり、精も根も尽き果てた状態であったが、退治し終えたことを知らせるため急ぎお社の丘へ向かった。


「あっ、神主様だ!おーい、神主様が帰ってきたぞー」


丘を登ってくる神主の姿を見るやお社の周りにいる村人たちに喜びの声を上げる。


「みなさん、もう大丈夫ですよ。でもちょっと今回は数が多くて畑がやられてしまいました」

「いいんだよそんなこたぁ。あなた様がいなけりゃ俺らは何にもできねぇんだから。作物なんかまたそだてりゃいいんだよ」


落ち込んだ口調で報告する神主を村人が励ましつつ礼を言う。

だが今回の物の怪はいつもとはかなり異なっていた。数が多いのもそうであるが、そもそもこんな収穫間際に来ることは少ない。ひと月ほど前に収穫に先立って作物を献上し、慰霊祭を行っているからだ。それによって村の周辺の物の怪は姿を消してしまうのだ。


「念のため強い結界をもう少し張っておきますから丘を下るのはしばらく待ってからにしてください」

「まだ下りれねぇって」

「臭くってたまんねぇや」


本当であればすぐにでも丘を下りて荒らされた畑の手入れをしたいところだが、物の怪も匂うが退治するとより異様なにおいが充満する。死の匂いというものだ。体に害こそないが、吐き気を催すその匂いを嗅ぎながら作業などできたものではない。幸い結界の張られた空間の中は浄化されているのか匂いはしない。だから匂いが風に流されるまでは誰も下りようとはしなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ