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番匠一代記  作者: まさき
序章
10/38

帰還3

「おーい。帰ってきたぞー」


半吉は丘の上に人影がみえるや大声で呼びかけた。

それに呼応するように十数人が駆け寄ってきた。


「おお、無事だったか」

「神主様も大丈夫そうで」

「熊吾郎!怪我してんじゃねぇか。大丈夫か」


みな口々に無事を喜ぶ。


「みなさん、魔・・・物の怪は退治できましたから安心してください。ところで村長はおりますか」


神主は魔物とは言わず、動揺をさけて物の怪と言い直した。余計な心配などさせるべきではない。

とりあえず今は無事なのだからそれでいい。

村長はお社近くの社務所の中にいたが、周りの騒ぎを聞き、外に出てこようとしていたところだった。


「神主様、無事でなによりです。それで首尾はいかほどでありましたか」

「物の怪は退治できましたのでご安心を。それこれもみな、この左甚五郎さんのおかげです。ぜひ村長にもご紹介したくてお連れした次第です」

「そうですか、そうですか。それはそれは危ないところをお助けいただきありがとう存じます」


甚五郎は少し照れながら会釈する。


「それと失念しておりましたが、村の門がまだ閉められておりませんのでどなたか向かわせていただけませんか」


村長はすぐに近くの若い男に指示をとばす。


「あのー、我々は丘をおりても大丈夫でしょうか?」


村人の一人が恐る恐る神主に聞く。


「ああ、失礼しました。みなさんもう大丈夫ですからお戻りになられて結構ですよ」


神主のその言葉を待ちわびていた多くの村人たちは神主にお礼をのべつつ丘をおりていった。


「それでは私も村の結界を張り直しますのでお社に入ります。また後程、失礼します」


普段はお社の周りではなく村全体に軽い結界が張ってあるのだが、今回は緊急事態のためお社の周りだけを強化した結界が張ってあった。

神主が甚五郎と村長それぞれに深々と頭を下げ、お社に入っていく。


「それでは甚五郎様、もしお急ぎでなければ旅のお疲れもあるかと思いますので可能であれば幾日かご滞在いたただければと存じますが・・・」


村長は恐る恐る聞く。

甚五郎は遠慮しつつも快諾してくれた。もともとこの村の隣・・・とはいっても10里ほど離れた町に用があり、帰りに休憩がてらこの村によったのだそうだ。

特に急いで帰る必要もないらしい。

そうこう話をしている間、ずっとお社を食い入るように見つめていたのは気になったが、甚五郎は村長の屋敷に招待されることになり、丘をおりていった。

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