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番匠一代記  作者: まさき
序章
1/38

物の怪侵入1

「もうここもダメだっ!」


村の入口に扉を抑えている男たちが弾き飛ばされる。開いてしまった扉から十数匹の物の怪たちが一斉になだれ込む。

男たちは何とか村への侵入を防ごうと殴りかかるが物の怪たちは意に介さない。獣の形をしたそれは殴っても腕が体にめり込みまるで水を殴っているようだった。何度殴っても多少の足止めはできるものの止めることはできず、反対に触れるほどに脱力感に苛まれ、ついにはその場に倒れこんでしまう。


「なにしてるんだっ。早く逃げろ!」


侵入を防ごうとしていたものたちを叱咤し、逃げるよう促す。皆、悔し涙を浮かべながら村の中心にあるお社へ向かい一目散に駆け出した。

物の怪の目的はわかっている。村で育てた農作物だ。

やつらは畑を目指して突き進み農作物を食い荒らしていく。しかし、農作物は実施に食べるわけではない。物の怪に触れられた作物はあるものは枯れ、あるものは腐っていく。農作物の精気を食べているのだ。


「くそっ。もう少しで収穫できたものを・・・」


村の中心の小高い丘に逃げ込んだ村人たちはなすすべもなく、物の怪たちを悔しそうににらみつけることしかできない。お社の近くは強い結界が張られ、物の怪は侵入することはできない。村の周囲にも玉垣の結界はあるものの扉を破られてしまえばどうしようもない。


「神主様、早く追い返すことはできないのですか」

「ええいっ。気が散るから今は話しかけるでないっ」


お社の中にいる祝詞奏上している神主に助けを求めるが叱責された。祝詞を途中で遮られた神主は怒り心頭だ。


「・・・とり急ぎ結界を強くしている。しばし待たれよ」


先ほどとは打って変わって穏やかな口調でたしなめる。しかしその口調には焦り含まれ、むしろ自分に言い聞かせているようだ。話しかけた村人のみならず、普段は温厚で物静かな神主の態度に驚きを隠せず、みな素直に従う。神主は踵を返し、巫女とともに一心不乱に社の中で祝詞を奏上する。

しばらくすると神主様だけお社より出てきた。

「結界は張り終えました。もうこのお社の周りには物の怪は入ることはできません。私はこれから物の怪を滅しに行きますが、みなさんは危ないですから絶対にここを離れないでください」

そう言って神主は畑に向かい駆け出した。


物の怪は獣の成れの果てだ。生前、恨みをもって死んだもの、特に飢え死にした獣の怨念が具現化したものだ。その恨みを晴らすためだけに行動する。だから畑を荒らすのだ。

物の怪を退治するには神職に祈りをささげてもらうほかにはない。神職の祈りによって物の怪の魂を鎮めることで、その具現化された体を滅することができるのだ。


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