表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クミトさんの不思議な猫カフェにて  作者: 焼き焦がされたスルメ
コハクちゃんと不思議な半獣関係
9/16

8:満月の日の楽しみ


ようやく、春らしい暖かな風も花々を揺らし始める。


今日は、気持ちのいいくらいの快晴であった。

放課後の空には、遠くに雲が見えるくらいで

ほとんど澄んだ広い青色の空が広がっていて。


「だから、今日は立派な満月が見えると思うんだよね…♪」


昨日の夜、少し雲の残った夜空の中に微妙な感じの

満月とも何とも言えない月を見たのである。


「にゃん。」


「うん、やっぱり満月見るならお天気じゃないとね~。」


そして、やっぱり今日もみたらし君と

マグロカフェに足を運んでいたのだ。


もちろん、満月を見るのは私の住む世界の一興だと思う。

夜の満月はきっと人の心に希望を与える存在だと、私は考えて…


はぁ、こんなの口にしたらみたらし君ドン引きだろうね。

自分で考えておいてこんなの言うのも変だけど、

私もドン引きするくらいだもの…


そんなことよりも、私の住む世界になぜか繋がっちゃってる

マグロカフェの世界は満月の日、特別なことが起こるのです。


まぁ、お察しいただいてるかもしれないけれど

あそこにいる人たちはどう考えても普通じゃないでしょう?

猫は喋るし、人間ですか?なんて聞きよるし…


彼らが言うには、人と動物の境目の生物“半獣“だと聞いて。


「にゃ~お~ぅ。」


いつの間にか、歩いていた距離が結構広がっていたらしく

早く~、とみたらし君が鳴いた。


「意外に歩くの早いよね、みたらし君」


半獣の彼らが喋ることは造作もないこと、らしい。

だから人間界の、立派な“動物“のみたらし君は

人間の言葉が話せなくて当たり前なのだ。


というより、私の中では喋らないのが常識だもん…

猫カフェの皆が喋って当たり前でしょ?みたいに

喋っているもんで、ちょっとよくわからなくなってくる。


まぁ、それが癖になってるのか…

みたらし君に相槌をうつように私が話すのは、

決して言葉がわかるから、ではなくて

なんとなくこう言ってるのかなって思っているだけである。



満月の話に戻ってしまうけど、

クミトさんの住む世界の満月の日はちょっと

私の住む満月と違うものらしい。


「私たちの世界の半獣はね、魔力を持っているの。

 ぼーんって使うことはできないけど、微量なくらいの魔力を持つの。

 だから、私たちみたいな半獣は微量な魔力を調節しながら

 自分の姿を保っていられるのよ。

 ただ…満月の日は魔力が高まってしまって、姿が

 保てなくなっちゃう子もいるのよね…」


以上が、うめちよさんから聞いた簡単な半獣講座である。

初めて満月の日にカフェに行ったときに、私が混乱しないように

わかりやすく簡潔に教えてくれたのだ。


なので、今日は満月の日二回目のマグロカフェです。

なんだか、新鮮だなぁ…


満月が魔力を高める、と聞いてもう一つわかった。

この雑木林も魔力?がおかしくなってて

いつもより変な感じがするのだ。

体が浮いてしまうような、ぐんにゃりとした気分…


「うぇぇ、ちょっとやばい…」


そこを抜けてしまえば、なんともないんだけど。

うーん、気持ちは悪くないけど、何とも変な気分。

心配したのか、後ろを向いてみたらし君は私の様子を見ていた。


「うにゃ~…」


「ううん、大丈夫。平気だよ。」


すぐに気を取り戻した私は、みたらし君と

マグロカフェへと足を進めた。


さぁ、お待ちかねの…

満月の日のマグロカフェ、入っちゃいましょう!


カランコロン…


そう鳴り響けば、今日は奥からいつもの音ではなく

てとてと、と小さな足音が聞こえてくる。


ひょこっと玄関から見えるところに顔を出したのは

ふんわりとした狐色の髪のかわいい男の子であった。

そして、待っていました!というように

ふわっと笑みをこぼして口を開いた。


「ようこそぉ、マグロカフェへ~!

 コハクちゃん、いらっしゃいませ!」



ぴょんっと飛び跳ねるようにして私の前に出てきたのは、

双子猫君の片方。

人間の姿のくるみ君であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ