3:二度目のマドレーヌ
「もう春なのに、まだ外はすごく寒いです。」
「ふふ、春はねぼすけさんですからね。
大丈夫ですよ、今日は温かいの用意してありますから。」
そう言って、彼は一度キッチンの方へ戻ってしまう。
そんな後姿を見つめながら、考える。
ここに通い続けてもう三ヶ月くらいかな。
いつの間にかここにいて、あっという間に今を過ごしてる。
前までは、時間がたつの長いなって思ってたけど…
「お待たせしました!今日はココアとマドレーヌです!」
目の前に、湯気の立つココアと
かわいらしいお皿にのったマドレーヌが置かれる。
「…マドレーヌのレベルが、前より上がってますな。」
「…えっと、琥珀殿、よくおわかりですな?」
おっ、ミクトさんノリがいいな。
今日は、黄色と茶色のマーブルなマドレーヌ。
ほんのりとバターの香りが鼻をくすぐって、誘惑する。
ここでマドレーヌを食べるのは二回目なんだけどね。
その時のマドレーヌは黄色と茶色、単色のマドレーヌだった。
そういえば、最初に食べたマドレーヌで思い出すのは…
~~~~~~
「ね、ねぇ?猫君?ここ、どこなの?こんなとこ来ていいの?」
仲良くなった猫(当時はみたらし君の名前をまだ知りませんでした!)
について行ってみれば、変な雑木林に入ってきてしまったのである。
なんだろう、進んでくたびに具合が悪くなってきた…
ちょっと気持ち悪いなぁ…
「ぅにゃ~ん。」
「う、うにゃーじゃないよっ。そこなに…?入っちゃだめだよ!?」
いつの間にか、変な建物のドアの前で猫君が待っている。
そして開けてくれ、と言わんばかりに尻尾をふりふり。
えええ、駄目でしょう?!やめた方がっ…
「にゃあ、にゃあ!」
「ええ、!?あ、開け、ろって?」
仕方がなく、恐る恐るドアを開けると…
ささっと猫君は先に中に入ってしまった!
…っておーい!なんで先行っちゃうの!?置いてくなよ!
困りながらにドアの隙間から、猫君を見つめる。
すると、奥からパタパタと音が聞こえてきて…?
「いらっしゃ…って、みたらし君じゃないですかー!
久しぶりですね!どこ行ってたんですか?」
「にゃん。」
猫君はひょいっと出てきた人に抱き上げられてしまった!
どんな人か見てみようとするも、抱き上げられた猫君で
顔が隠れてしまって見えない!
と、言うより知ってる人だったの?
みたらし君ってなかなかいい名前だな。
それより、この状況どうすれば…?
などと、頭の中はぐるぐると回って混乱していると…?
「あれ?お客様、ですか?」
「あっ、え…くっ、こ、こんに、ちはぁ…」
突然声をかけられたので、おかしな挨拶になってしまった。
おかしいというよりよりも女子高生なのか、と
疑うくらいの気持ち悪さであった。
猫君をおろして見えたその人の顔はやっぱり、驚いた表情をしてまして。
これもう店員さんどんびきだよ、硬直してるし…
「あ、あの、人間、ですよね?」
「はっ、はい!もちろんです!!?」
唐突に聞かれたので、私もびっくり。
そんなに!?そんなに気持ち悪かった!?
ちょ、さすがにショック受けますけど…?
しかも店員さん、なかなかかっこいいじゃんか!辛い!!
「あ、失礼しました!人間のお客様は初めてで…!
いらっしゃいませ、ようこそ!マグロカフェへ!」
慌ただしく、早口でぎこちなく彼は喋りだす。
私はまたもやびっくりして、声が出てこなくなってしまう。
ちょっと待って、なんかつっこまなきゃいけないことが…
「ちょうど、今、マドレーヌが焼けてっ…!
あぁ!すいません、先に、お席にご案内します!」
おおお、忙しい…!!
店員さん、落ち着こう!?私も急な対応についていけないし
なんかもう精神的に辛いです…私は人間です!(泣)
初めての会話は本当にもう、今思い返しただけでも恥ずかしいし
よくわからないし、お互いに大混乱。
そんな感じのおかしな出会いでした。