14:忘れたころに、急にくる
「どうしたんです…?バタバタ聞こえてきましたけど…?」
「うぉあっ!!?クミトさっ…!?」
またしても、女子高生らしくない図太い驚き方をする私です。
いつの間にか後ろに立っていたクミトさんが
静かな声で話しかけてきたので…
しかも、いつもより少し低い声だったので
誰の声かわからなくて、ものすごくびっくりした。
「あ、クミト。ちょっと、まろんが
うめちよさんの怒りの鉄槌をくらってて…」
くるみ君はやんわりとそう言った。
怒りの鉄槌って…まぁ、確かにそうだったけど。
「あー…そうなんですか。まろん君は、やんちゃですね…。」
そう言いながら、ふわ~っと見たことのない
微笑みを浮かべるクミトさん。
今日、なんだかおかしくないか…?
改めてクミトさんを見てみれば、いつもの
パッチリ二重はとても重そうですごく眠たそうに見える。
クミトさんはそのクマのある目をごしごしと、こすりながら
大きなあくびを一つ。
もしかして、寝ていたの?
営業中だよ、ね…?
しかも今日はなぜか、大きな藍色のふんわりした
リボンでたいして長くもない髪を縛っている。
今日は、本当にどうしたんだ。クミトさん?
「クミ、寝てたの~?ただでさえ今日は満月なのに~。
徹夜なんてするもんじゃないよ~。」
「えっと、すいませんです…
どうしても今日、コハクちゃんにあれ食べてほしくてですね…
あれ、何度作ってもうまくできなくてですね…」
ぶつぶつと、言い訳をするように呟きました。
クミトさんかなり眠たいようです。
てか、あれって何…あれあれって何ですかっ。
とてつもなく気になるじゃないですか!!
「クミトさん、何を作っていたんです?」
私の声を聞いたクミトさんは急に、ぱちっと目を開けた。
そして何か黄色い粉がたくさんついたエプロンを
はたいてから私に向き直った。
「も、申し訳ないです!コハクちゃんが来ていたの
知ってたんですけど…あれがあとちょっとで完成しそうだったので
色々やっていたら、うたた寝してしまいまして…!!」
「あれ?あれって完成したんじゃなかったのぉ?」
「あれ、まだ作ってたんだ~…あれ簡単そうに見えるのにね~。」
あぁん、もうクミトさん焦らすのお上手!!
寝ていたことはもう見ればわかるから!
あんずちゃんもくるみ君も、一緒になってあれあれ言わないでよ!
あれあれ大パレードだよ!!
「ちょっと、コハクちゃん困ってるじゃない。
あれが何か聞いてるんだから、教えてあげなさいよ。」
先ほどまでまろん君をしめあげていたうめちよさんが
間に入ってきて口をはさんだ。
あぁ、あの時はとっても恐ろしかったけど
こういうときはとっても頼りになる…!
「あ、あのですね。先日なつめさんから人間は
人間界は満月の日にお月見、というものをやる、と聞いたんです。
それでですね、わらび餅を作っていたんです!」
「わらび餅…!?
そんなので徹夜したんですか、クミトさん!?」
「はい、とびっきりおいしいのを研究してたんです。
なかなかこう、うますぎる!っていうできにならなくて…」
「味見とたくさんできたわらび餅は
あんずたちがいっぱい食べたけどね~。」
「そ、そうだったんですか…でも、………」
そう人間ならばお気づきでしょう。
まず、今はお月見の時期ではないということ。
もう一つ、お月見の時に食べるのは団子である、ということ…
これは暴露するべきなのか、言わない方がいいものか…
いや、でもクミトさんの目の下のクマが物語るようにも、
徹夜までしたって言ってたし。
水を差してしまいそうで申し訳ない…
「もしかして、わらび餅お嫌いでしたか?」
あああ!そんなわかりやすい、しゅ~んとした顔しないで!!
ますます言いにくくなったではないか!!
「いいえ!わらび餅は好きです…けど…」
「けど…?」
あああ、けどなんて言ってしまったら
もうこの先言ってしまうしかないじゃないかっ。
ちらり、とクミトさんを見れば、私の隠し事が
とても心配なのか、まだしゅんとした表情で私を見つめている。
うっ…その表情を見てると、心が痛くなります!
あー!もう言ってしまえーっ!!
「お月見は春にやるものじゃ、ないんです…!
あと、月見の時はお団子を食べます、月見団子!!」
シーン…
クミトさんがが凍りついたことは言うまでもない。




