12:素直な気持ちは程々に…
はっ、と人間になった自分を確認したまろん君は
くるみ君を睨みあげて、小屋から這いつくばってでてきました。
うお、でっかい●キブリホイホイみたいだなぁ…
「何するんだよくるみっ!」
「変に我慢するからそうなるんだよぉ。
尻尾と耳、でたまーんまだよ…?」
そう、人間の姿なんだけど…
くるみ君と同じような色の髪の毛からぴょこん、と
でていしまっている、あの狐色の猫の耳。
表向きからでもわかる、ふんわりとした長い尻尾が
ゆらゆらと揺れていて…
「ほぉら、中途半端じゃないの…」
ため息をつきながら、まろん君に言い聞かせるように
つぶやいたうめちよさん。
やっぱり、くるみ君の今の姿…
人間なのに猫の耳と尻尾が出てしまっているこの状態。
まさしく、中途半端という状態なんですな!
まぁ、そんなのを想像しましたよ!
「うぅ、うるさい…オレだって、早く人間の姿も
猫の姿も区別できるようになりたいし…!」
ものすごく、残念そうに口をとがらせながら
まろん君は呟いた。
すると、それを見たくるみ君がまろん君の隣に
駆け寄って顔を覗き込みながら口を開きました。
「…そうだよねぇ。だって急に満月の日に人間になるの
なんか変な気分だし、慣れてないから動きにくいよね。
僕もできるんなら、早く区別できるようになりたい!」
ふわふわの髪を揺らしながら、くるみ君は笑顔で言った。
それをちらっと見たまろん君は、口を固く閉じて
何か言いたそうだけど、無言のまま…
「でも、今のうちだけよ?そうやって、
人間になってみて、猫になって遊んだり。
言わば、成人までのお試し期間ね。」
「あんずはそん時までは、楽しかったけど~?
人間になったら人間にしかできなさそうな
遊びをするの、すっごい楽しかったし~。」
二匹もフォローするように、まろん君に言った。
少しずつ、うずうずとまろん君の瞳が揺らいでいる。
あと、一押しかな?
「私は、猫になれないからわからないけど…
人間も、そんな悪くはないよ?
だって、ここにいれば人間も動物も関係ないと思うから…」
思ったままのことを、私は口にした。
猫にもなれて、人間にもなれて…
私なんかには、本当に夢みたいな話。
ちょこっと、うらやましかったりもする。
「…迷惑かけて、ごめんなさい。」
しゅん、と耳を下に向かせたまろん君は
静かに呟くように言った。
それを見た私たちも少し気がふっと抜けたように
皆、笑顔になった。
「わかったのなら、いいのよ。
さ、その耳も尻尾もしまっちゃいなさい。」
優しく、笑顔で話しかけるうめちよさん。
だけど、ここで素直になれないのがまろん君。
怪訝そうな顔で、うめちよさんの顔をじっと
見つめて…
「うめちよさん、怒るとただのヤクザみたいだったよ。
すっげぇ、迫力あったもん。」
ええええ!?まろん君!?
何の気なく、仕返しのつもりで言ったみたい…
うめちよさんから、またもやあの時の謎のオーラがっ!!
まろん君、逃げた方がっ…!!
「…おうこら、人が優しくしてりゃあ、
言ってくれんな。表でろや、表。」
どええええええ!!??
うめちよさんは決して、その綺麗な顔は崩さずに
いつもよりとても低い声でまろん君に言って…!!?
いやいやいや、怖すぎでしょ。
綺麗だけど、怖い。はたから見たらただのヤクザッ…
そんなことを考えていると、うめちよさんは
ゆっくり私の方を振り向いてにっっっこりと笑う。
「…コハクちゃんも、お外でたいの?」
「いいえっ。まろん君、うめちよさんに謝ろうか!」
ひいいいいい!!
私はただ素直に自分の気持ちを思っただけではないですかっ。
自分の気持ちは大切にっ!大切にね!!
だからまろん君、素直にちゃんと謝ろう!それで解決するからっ!!
まろん君に目で訴えると、にんまりと笑ってから…
「誰が謝るもんか!今だってただのヤクザだったじゃんっ。
ねっ、コハクー!」
「ちょちょっ、なんで!?」
「………いい加減にしろやーっ!!」
そう言って、うめちよさんは背中の毛を逆立てて、
まろん君を追いかけた!
「うわーっ、怖いっ!
うめちよヤクザだ、にっげろー!!」
そう言って、小走りで逃げながら
まろん君は両手で自分の猫の耳をぎゅっと押さえつけた。
すると、あら不思議!
生えていた耳はマジックで消えたかのように、
頭の上からなくなっていた。
尻尾も同様にひとまとめにし、両手を離せば
跡形もなく消え去っていた。
「うわーい!猫の姿だといつも追いつかれちゃうけど
人間だと小走りでも余裕だねっ!」
「ちょっ…ずるいわね!そこが良いって
言ったわけじゃないわよっ!」
そう言いながら一人と一匹は
くるみ君とあんずちゃん、それに私を囲んでぐるぐる
追いかけっこを始める。
それを見たあんずちゃんは座り込んで
またまた大きなあくびをひとつ。
「なんだかんだで、み~んなまだ子供なんだよね~。
大人になんか、完璧になりきれはしないんだから。」
めちゃくちゃ正論だと思った。




