10:お客さんの半獣事情
「コハクちゃ~ん、かるた、しようよ~!」
そう言って、くるみ君がは片手に持ってきた
束ねられたたくさんのカードを二束、私に見せてくれた。
あ、読む札と絵の描いてある札を分けてあるのか!
にしても、この世界にもかるたなんてあるんだ。
ちょっと、意外でびっくり。
「へぇ…!この世界にもかるた、あるんだね。」
「あ、違うよ。ないけど、この前なつめさんって
人ががくれたんだぁ。」
「なつめさん?」
「うん!優しくて、面白いんだよ!」
あぁ、そっか。
ここは一応カフェだから、私のほかにもお客さんが来るんだよね。
しかも、ここにいる人(猫だけど)たちは親しみやすいし
やっぱりお客さんもお友達感覚な感じ、みたいだなぁ。
「そういえばコハクちゃん、なつめちゃんには
まだ会った事なかったわね。一週間に一回くらい来るのよ。」
「なつめさんは夜行性だから、いつも
コハクが帰った後に来るんだよねぇ~。」
「…夜行性?猫に夜行性とか、あるの?]
「あらっ、違うわよ。なつめちゃんは猫じゃないわ。」
くすっと笑いながら、うめちよさんは言った。
え?…ね、猫じゃないの!?
「コハク~?ここに来る人、いる人、み~んな猫だと
思っちゃってるの~?」
「えっ、むしろ違うの…?」
ポカン、としたままあんずちゃんの方を見る。
普通にそうだと思っていましたけれども…?
というより、たまたま他のお客さんと会ってしまった!?
なんてことはここに通い続けているが、一度もない…
それに、ここ最近はもっぱら猫としか遊んでない…いや、
猫とお喋りしかしてないです(真顔)
「違うからね~?ここには、ホントにいろんな
半獣のお客さんが来るんだから~。」
「そうね、冬も終わって暖かくなってきたから
また頻繁に、ここに遊びに来ると思うけれど…」
あぁ、なるほど!
動物が冬眠してました!みたいなそんな感じかな…?多分?
確かにクミトさんもこの時期はあんまり
お客さんが来なくて困ってるって言ってたなぁ。
「ちなみに、なつめさんは、ふくろうだよぉ。」
先ほどまで真剣にかるたを並べていた
くるみ君が唐突に口を開く。
くるみ君の方を見れば、かるたの絵札は
綺麗にぴしっと並び終えられていた。
ふ、ふくろうなのか。
それならば、夜行性という言葉が当てはまる。
でも、なんでまたふくろうさんがかるたを…?
「なつめちゃん、人間界にすごく興味を持ってるの。
多分、なつめちゃん、それ作ったんだと思うわ。」
「へ!?これを!?」
もう一度、くるみ君が並べたかるたを見てみる。
形、大きさ、絵柄…どれを見ても立派な和風のかるたである。
完成度、高っ!どんだけ器用なんだ、なつめさんって…!!
「コハクちゃんに会ったら、なつめちゃん喜ぶと思うわぁ♪」
「へ、へぇ…ちょっと、私も気になります。」
何よりもふくろうをあんまり見たことがないので、気になるし。
もし、会う機会があるのならぜひともお目にかかりたい!
だとすると、この先が楽しみだなぁ…
だって、ふくろうの他にもたくさんの半獣の
お客さんがくるってことだよね…?
しかも、もしかしたら人間と動物の両方が
見られちゃったりもして、面白そう…!
そんな想像をしていると、くるみ君が立ち上がって
どこかへと歩いていってしまった。
あれ?なかなかかるたを始める気配がなかったから
すねちゃったのかな…!?
「あ、く、くるみくっ…?」
だけど、そんなわけではなかったらしく…
「ねぇ、もう仕方がないんだから、人間になりなよぉ?
一緒にかるた、やらない??」
「へっ…へんっ。かるたなんて、子供みたいなこと…!」
プルプル…と相変わらず、体を強張らせながら双子猫のもう片方
まろん君がそっぽを向いて言った。
あ、まろん君のことすっかり忘れてた。
すると、くるみ君に続いてあんずちゃんと
うめちよさんも仕方ない、という風に話しかけた。
「まろん、頑張るね~?」
「まろんちゃんは素直じゃないところがくるみちゃんと違うわねぇ。」
もしかして、私の予想だけど…
まろん君は、人間になっちゃうのを必死にこらえてる…?
まろん君の顔は
眉間にがっつりしわがよって、下唇を強くかみしめていて。
猫が変顔してるっていう、謎の絵図ができている。
普通に面白い。
「オレは、もう人間にはならないっ。オレ、大丈夫っ!」
案の定、私の考えは当たっているらしい。
にしても、そんな顔してまでこらえなくても…
あの顔は崩さないまま、目をかっと開いてくるみ君は言う。
それを見た私は普通に吹き出してしまった。




