9:それぞれの半獣事情
「うわぁ~!くるみ君相変わらず、可愛いなぁ!」
「うひゅっ…」
そう言って、迎えてくれたくるみ君の
ほっぺをむにっと両手で包み込んで、むにむに…
実際、くるみ君は中学生くらいの子だけれど
可愛い容姿でもあるためか、人間の姿だととても幼く見えるのだ。
それで、猫の時の面影も残っているので
何とも言えないくらい可愛い。可愛すぎる。
「ひゃーっ、みょう、ひゃめてよぉ!」
(いやーっ、もう、やめてよう!)
さすがにもう満足もしたのでぱっと、離す。
ふわぁ…癒されたぁ…!
くるみ君はむぅっと頬を膨らませてから、
「みんな、待ってるからぁ。早くー。」
と、私の手をぐいっと引っ張った。
でれっでれになった顔を戻しつつ
ちょこちょこと歩く、くるみ君の後をついて行った。
「あ~、いらっしゃ~い。」
「あら、なんか兄弟みたいねぇ。微笑ましい。」
「そうかなぁ?」
「あんずちゃん、うめちよさん!!こんにちっ……」
挨拶をしつつ、二人の姿を確認する。
そして、声がした方向を交互に見つめる。
…はぁ、今日も二人は……
いいえ、二匹はいつもと変わらずの猫の姿である。
「ちょっと~、顔に出てる~。」
「そんな残念な顔しないでちょうだいよ…」
ううう、だって誰しもが人間の姿のあんずちゃんと
うめちよさんを想像しますよ、きっと。
特に、うめちよさんが一番気になる。
最初に来た時も、二匹は猫の姿のままで終始人間に
変わったりすることはなく、今日は見れるかとちょっと期待してたのに…
「私みたいに、成人した半獣は魔力が安定してるから
満月の日でもどうってこと、ないもの。」
「成人した、半獣…?」
って、ことはうめちよさんは二十歳すぎて「それは、考えちゃだめよ♪」
ちょ、なんで私の考えていることがっ…
うおぁ、うめちよさんの顔が悪に染まっている…
私はこれ以上を考えることをやめた。
「…あんずちゃんは、成人してなくない?」
「ん~?」
定位置のソファーのクッションの上で、毛づくろいをしていた
あんずちゃんが私の方を向いた。
それから、いつもの得意そうな顔で…
「あんずは成人に近いからだよ~。もう、立派なお・と・な!」
………?
何を言ってるんでしょうかね、この子は。
人間にならないことはわかったから、もういいか。
無視しy「ちょっと~?」
「ちょっと~じゃないよ!あんずちゃん、どこが大人なの…」
「え、全体的に~?」
すっとクッションの上に立ち上がって、その小さな体で
胸を張って主張しているあんずちゃん。
…うーん、むしろなぜか強がっているみたいで可愛い。
今日は、私が勝てた気がする…
「大人大人って、私からしたらあなたたちはよっぽど、子供ね。」
「うぐぅ~…」
「うめちよさん、痛いところを…」
猫タワーのてっぺんから見下ろすうめちよ様が哀れなまなざしを
私たちに向けていた…
しかもよっぽど、の部分を強調しておしゃってました。
多分、さっきの年齢的な問題の恨みだろうなぁ
…おっと、この話はやめとこう。
「ねぇねぇ、コハクちゃん。
せっかくなんだし、人間の姿で遊ぼうよぉ。」
そう無邪気にふわふわ笑いながら、くるみ君は
髪の毛を揺らして言った。
「うん!何して遊ぼうか?」
「うーんっと…ちょっと、待っててね…!」
そういうと、またもやくるみ君はとてとて、と
足を鳴らしながら奥へと行ってしまった。
くるみ君は、猫で言ったらもうちょっと大人なのに
本当に子供っぽくてかわいいなぁ…
そう考えていると、ふと、ようやく何かに気付く。
「…そう言えば、まろん君は?
クミトさんも、今日一度も顔を合わせてない…」
本当に、ようやく思い出して呟いた。
色々と新鮮すぎて、なんか、もう忘れてました←
「クミはね~、今日ずっと、お菓子作りに奮闘してるよ~。
話しかけても、反応しないくらいに~。」
つまらなさそうに、あんずちゃんがそう言った。
…今日は何を作っているのだろう?
「まろんちゃんはねぇ…頑張ってるのよ。ほら、その中で。」
え…!?いたのか、まろん君!!?
うめちよさんの視線の先の、猫が入る用の小さな小屋の中で
プルプル、と体を強張らせるようにしている猫を見つけた。
「ま、まろん君…?」
「…あんずより、まろんの方がず~っと子供だね~…」
やっぱり気にしていたのか、あんずちゃんは小声で
ぽつり、とそう呟いてあくびをした。




