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AO 《アーティファクト・オーバードライブ》  作者: 天道
第1章 運命の召喚と契約編
6/47

第2話 召喚の儀式

焦らずゆったりと書いていきます。

今回は召喚の話です。

千歳と恭弥が召喚します。

聖霊界から聖獣を召喚し、召喚の儀を行なう場所……それは星桜学園に植えられた巨大な大樹、聖霊樹だ。

聖霊樹は元々聖霊界原産の木で神聖な力が宿り、人間界と聖霊界を繋ぐ通り道……『ゲート』の役割りを担っている。

既に聖霊樹の周りにはたくさんの一年生とそれを纏める先生達で賑わっていた。

千歳は早速担任の先生に挨拶に向かったが、その先生は何と俺と恭弥と同じ柊先生だった。

柊先生は眼鏡をかけたおっとりした感じの女性の先生で、千歳は俺と恭弥と同じクラスメイトという事になる。

「やったー!天音と同じクラスだー!よろしくね!」

「あ、ああ……」

まさか同じクラスだと思わず、俺は軽い目眩に襲われた。

「さーて、学園に着いてひと段落ついたし、これを付けるかな♪」

千歳はキャリーバッグから小さなケースと動物の皮で出来たベルトみたいなのを取り出した。

「千歳、何それ?」

「んー?私の愛銃だよ」

「は?」

ケースを開けると中には銀色に輝く二丁の拳銃が納められていた。

二丁拳銃と言っても、両方同じではなく、一つはリボルバーの回転式拳銃で、もう一つはマシンピストルの自動式拳銃……構造が異なる二つのタイプの拳銃だった。

「フォーチュン&ディスティニー。リボルバーの方はフォーチュン。マシンピストルの方はディスティニーって言うんだよ」

よく見るとそれぞれの拳銃の銃口に『Fortune』と『Destiny』と刻まれていた。

英語が苦手な俺でも分かるけど、どちらも『運命』と言う意味がある。

「どうして『運命と運命』なんだ?何か意味があるのか?」

「この二丁拳銃はね、私の師匠がくれたの」

「師匠?」

「うん。女優さんで、銃の達人で私に使い方から戦い方を教えてくれたの。これは私が日本に戻ると決まって、それを報告した時にプレゼントしてくれたの。私の運命に幸ありってね」

「運命に幸ありか……中々ロマンチックな師匠さんだね」

「うん!多分今年に日本に来ると思うからその時に天音に紹介してあげるね!」

「ああ……」

なるほど、千歳の大切な師匠さんの贈り物ね……それなら『媒体』に十分適しているな。

聖獣との契約には後々、契約者である俺たちにとって思い入れがある大切な物……契約の媒体となるなんらかの『物』が必要となる。

ちなみに俺の契約媒体は去年の誕生日に師匠から贈られた物でこの場にはなく、学生寮の俺の部屋に置いているのでこの場にはない。

そして、いよいよ召喚の儀式が執り行われようとしていた。

「さあー、皆さん。いよいよ契約を始める時間ですよー」

待ってましたと、言わんばかりにクラスメイト全員の視線が柊先生に集中する。

「では、出席番号順に召喚を行います。それでは、浅木君からどうぞー」

「よっしゃあ! 俺が一番乗りだぜ!」

羨ましいことに、恭弥から召喚及び契約が始まる。

まあ、恭弥はア行の苗字だから当然といえば当然か。

他のクラスも少し離れた場所で既に召喚を始めている。

「がんばれよ、恭弥」

「かっこいいのを期待してるよー!」

「おう!」

俺と千歳で恭弥に声援を送る。

「浅木君。この魔法陣の上でこの呪文を詠唱してくださいね。ゆっくりでもいいので、間違えないようにお願いしますね」

「了解っす!」

先生から紙を貰い、すでに地面に描かれている魔法陣の上に立つ。

紙には人間界と聖獣会を一時的に繋ぎ、聖霊界から聖獣を呼び出すための召喚魔法の呪文が書かれている。

ちなみに魔法とは、森羅万象の自然が作り出すエネルギーを利用して神秘の術を発動させることであるが、俺たちはまだ魔法の勉強などしたことないので使えない。

ただし、聖獣を召喚することに関しては聖霊樹に秘めた魔力を借りて行うので難なく発動することはできる。

恭弥は緊張しながら紙に書かれた呪文を詠唱する。

「我が名は浅木恭弥……」

足もとに描かれた魔法陣が眩い輝きを放つ。

「人の世界と聖なる獣の世界、二つの世界を結ぶ架け橋をこの聖なる樹の下に繋ぐ。我は夢を追う者也。共に往かん、永遠の地へと。我が純粋なる魂と共鳴せし者よ。我の声、思いに応えよ!」

魔法陣が更に輝きを増し、人間界と聖霊界の二つの世界が一時的に結ばれる。

「来たれ、我と共に契約を望むこの時を!!」

恭弥の呪文を唱える声が強まり、遂にその時が迫る。

「聖獣、召喚!!!」

ドガァン!

小さな爆発が恭弥の目の前で起きる。

土煙が舞い、その中から人の形をした何かがいる。

『ああん? 何だぁ、これは?』

荒っぽい男の声がし、土煙を払うように手で仰ぎ、その姿が現れる。

「…………お猿さん?」

恭弥は目をぱちくりさせながら自分が召喚したであろう聖獣を見つめる。

最初は誰もが人だと思ったが、それは違っていて、その正体は人並みに大きい猿だった。

しかも、ただの猿ではなく、体に服を着用しており、赤や朱色を基調とした鮮やかな服を身に包んでいた。

『お前……人間だな? もしかして……俺はお前に召喚されたのか?』

その猿は理解力や察知力が高いらしく、きょろきょろと周囲を見渡す。

「そうだ。俺がおま――君を召喚した」

最初は猿の事を「お前」と言いそうになったが、さすがにそれでは失礼だと思ったのか、恭弥は慣れない「君」と呼んだ。

『ふーん、ようやく人獣契約に選ばれたか……そっか。それじゃあ、取りあえず名乗っとくかな?』

猿は耳の穴に指を入れると、とても小さな赤色の棒を取出し、空に向かって投げた。

『如意棒!!』

次の瞬間、棒が巨大化して猿の身長ぐらいの長い棒となった。猿はその棒を華麗に振り回してかっこよく構えを取る。

『おい、耳の穴をかっぽじってよく聞きな。俺様の名前は、闘戦勝仏、またの名を、斉天大聖だ!!』

その名前に恭弥だけでなく、俺たちも思わず耳を疑ってしまう。

「闘戦勝仏?斉天大聖?それって、あの『西遊記』の……?」

『んあ? そういえば確か、大昔に人間が書いた俺とお師匠様の冒険記の題名がそんなだったな……確かに俺はその冒険記の主人公だぜ?』

その事実に恭弥や俺たちも口をあんぐりと開けて驚いている。

西遊記とは千年以上前の中国大陸を舞台に、孫悟空が三蔵法師という僧侶と共に遥か西にある天竺と呼ばれる場所でありがたい経を受け取り、都まで持ち帰るという長い冒険の話である。

その話は後に人の手で物語として描かれ、現代でも多くの人が読んでいる人気の長編物語だ。

俺も一度西遊記を見たことがある。恭弥はその物語の主人公である孫悟空を召喚したのだ。

当然、恭弥の反応は……。

「うぉおおおお! 感激だぁああああ!!」

『な、何だ!?どうしたんだよ、一体……』

突然の恭弥の反応にさすがの悟空も戸惑いを隠せない様子だった。

「西遊記、小さい頃からずっと見ていました!あなたのファンです!」

『そ、そうか? そいつは嬉しいぜ。ところでよ……』

「はい?」

『お前は俺と契約したいんだよな?』

孫悟空の表情が真剣そのものになる。

「勿論っす!」

『なら、お前の夢を教えろ』

「夢?」

『契約するなら俺はでかい夢を持つ奴としたいからな。さあ、お前の夢は何だ?』

「俺の夢、それは……人間界と聖霊界、二つの世界を旅することだ!!」

『ほう……人間界と聖霊界を旅か。はっはっは!なかなかでかい夢じゃないか。気に入った、お前の名前は何だ?』

「俺は恭弥!浅木恭弥だ!」

『恭弥か。俺の事は……うーん、名前が多いから好きに呼んでくれ』

「それじゃあ、悟空って呼んで良いか?」

恭弥は世間一般に呼ばれている有名で言いやすい、孫悟空の名前で呼ぶことにした。

『悟空か……ははっ、懐かしいな。そう呼ばれるのは何千年ぶりか?』

そう言えば『孫悟空』と言う名は仙人に不老不死を習いに行った時に与えられた名で、他にもたくさんの名を持っていたな。

『せっかく人間界に呼ばれたんだ。楽しませてもらうぜ、恭弥』

「ああ、これからよろしくな、悟空」

恭弥と悟空は固い握手を交わし、互いを契約者と契約聖獣として認め合った。



恭弥に続いて、クラスメイト達は次々と無事に聖獣を召喚していく。

色取り取りの聖獣に俺自身の期待が高まりつつある中……。

「次、天堂千歳さん。お願いします」

「はーい」

千歳の番が来て、フォーチュン&ディスティニーをホルスターにしまいながら魔法陣の上に乗る。

そして、一呼吸を置くと胸に手を当てて詠唱を始める。

「我が名は天堂千歳。人の世界と聖なる獣の世界、二つの世界を結ぶ架け橋をこの聖なる樹の下に繋ぐ。我は夢を追う者也。共に往かん、永遠の地へと。我が純粋なる魂と共鳴せし者よ。我の声、思いに応えよ! 来たれ、我と共に契約を望むこの時を!!」

練習をしたのかまるで歌うように滑らかな口調であっという間に召喚魔法の呪文を詠唱する。

「聖獣、召喚!!!」

ドガァン!

恭弥たちと同様に爆発が千歳の目の前で起きる。

さて、千歳の聖獣はどんなのかな?

俺と恭弥は期待しながら目を凝らして千歳の召喚した聖獣を見る。煙の中から現れたのは……。

「狐……?」

千歳が召喚した聖獣は大きめの体をした銀色の狐だった。

普通の狐かと思ったが、圧倒的に違うところがあった。

「九本の尻尾……?」

その狐の生えている尻尾の数が九本もあり、それが狐の存在感を大きく見せていた。

九本の尻尾を持つ狐と言えばアレしかいなかった。

「あなた、九尾の妖狐ね?」

千歳は九本の尻尾を持つ銀色の狐・九尾の妖狐に向かって微笑みながら言った。

九尾の妖狐とは、万単位の年月を生きた古狐が化生したものだともいわれ、数ある妖狐の最終形態の存在だ。

恭弥に続いて千歳も中々の上級な聖獣を呼び出したな。

「ヒュー♪」

千歳は思わず口笛を吹いてしまった。

それほどまでに九尾の白銀の姿に美しい姿と思ってしまったからだ。

「こんにちは、九尾の妖狐さん」

『シャァーッ!!』 

九尾の毛が逆立ち、九本の尾から青い狐火を作り出して千歳に向けて一斉に発射した。

「えっ……?」

「千歳!」

とっさに走り出して動いた俺は狐火が千歳に当たる寸前に千歳の前に飛び込んだ。

俺は魔法は使えないけど、それに匹敵するほどの力を秘めた『術』を会得している。

それは、人間や万物に秘められた魂の力を使い、発動する術。

「守りし力は蓮華の盾!」

俺の実家である『蓮宮神社』に代々伝わる、生命に宿る魂の力……霊力を対価に発動させる術……『霊操術』で狐火を防ぐ盾を作り出す。

「霊煌陸式・結界!!」

手をかざすと、俺の前に大きな蓮の花を象った水色の盾が現れて狐火を防いだ。

「封ずる力は蓮華の檻!封印結界!」

尽かさず俺は結界のもう一つの力である封印を九尾の妖狐に施す。

九尾の妖狐の周りに数多の蓮の花の盾が重なるように現れて強固な檻を作り出して動けなくする。

『シャー!?』

「天音、その力は……?」

「お前が引っ越してから色々あってな。守護者として修行を積んでいた」

「守護者……?」

「後で詳しく話してやるよ。それよりも先生!早く九尾を聖霊界に!俺が奴の動きを封じます!」

「は、はい!」

このままだと千歳だけじゃなく他の人にも犠牲が及ぶ可能性が十分に考えられる。

その前に九尾の妖狐を聖霊界に返さなければ危ない。

「来たれ、千の魔を切り裂く無限の刃!!」

まずは九尾の妖狐を抑えるための武器を用意する。

霊力を解放し、思い描くのは数多の刀と剣……!

「霊煌伍式・刀剣!」

霊力で日本刀を思い描き、構築して構える。

霊煌伍式は霊力で刀や剣などの武器を作り出す能力だ。

『その力……退魔の力か!?おのれ……!!』

すると、九尾の妖狐は刀剣の力を見るなり怒りを露わにして尻尾の先に狐火を灯し、暴れて封印結界を壊そうとしている。

「……久々の大物との戦いになりそうだな!」

『おっと、待ちな。ここは妖怪退治の専門家である俺様に任せな!』

蓮煌を構えると、隣に恭弥の相棒となった孫悟空が現れる。

確かに孫悟空は嘗て天界と戦争をし、その後は地上で人に仇をなす妖怪を次々と退治してきた。

闘戦勝仏は戦いを司る戦神でもある、これほど頼れる専門家は他に中々いないだろう。

『恭弥!見ていろよ、俺様の勇ましい姿をな!』

「退治じゃなくて、押さえるだけだよ」

「待って!!!」

みんなで九尾の妖狐を聖霊界に送り返そうとしたその時、千歳が大声を出して止めた。

「千歳……?」

「私……あの子と話してみる。だから、ちょっとだけ時間を欲しいの」

「危険だ。九尾は今興奮状態に陥っていて迂闊に近づくと……」

「分かってる。だけど……」

千歳は九尾の妖狐を見つめて胸に手を置いた。

「私の中で何かが訴えているの。あの九尾の妖狐を助けてって……私はこの気持ちに応えたいの」

「千歳……」

「天音、少しの間だけ持ってて……」

俺は初めて見る千歳の真剣な表情を見て少し胸がキュンとなった。

昔は儚い笑顔しか見せていなかったが、今は凜とした表情を見せている。

千歳の中にある『何か』が訴えている……それが何なのか分からない。

だけど、千歳がそうしたいのなら俺はそうさせたい。

もし無理ならば守護者として俺が全力で千歳を助けだし、九尾の妖狐を必ず封じて聖霊界に送り出す。その覚悟を決めた表情に俺は折れ、霊力で作った刀を消した。

「……気をつけろよ。もしお前が倒れそうになったら無理やりあの九尾の妖狐を抑える……いいな?」

「うん、ありがとう!それじゃあ、行ってきまーす」

「て、天堂さん!?」

「先生、何かあれば俺が対処しますのでここは抑えてください」

先生を抑えながらすぐに動けるように霊力を纏いながら千歳を見守る。

『おいおい、嬢ちゃん大丈夫なのか?』

「分からない……だけど、俺は千歳を信じる」

「愛だね〜……」

『なるほど、愛か……』

「黙れ、恭弥」

九尾の妖狐は俺が力を弱めた結界を打ち破り、相変わらず毛を逆立てて警戒心むき出しで睨み付けていた。

しかし、そんな九尾を相手にも関わらず、千歳はいつものようにニコニコと笑っていた。

「こんにちは、九尾の妖狐さん。私の名前は天堂千歳だよ」

『シャアアアアーッ!!』

千歳が自己紹介をしたその瞬間に九尾の妖狐は狐火を放った。

「イッツ……」

千歳はホルスターの納められたフォーチュン&ディスティニーを瞬時に両手に持って構えた。

「ショータイム!!!」

千歳はハイテンションにそう叫んだ瞬間にフォーチュン&ディスティニーから弾丸を発砲した。

二丁拳銃から放たれる弾丸は狐火に当たると爆発して相殺し、綺麗な火の粉が舞い散る。

「ふぅー、なかなかホットな一撃ね。あなたの狐火」

『フシァアアアアアアア!!』

九尾の妖狐は狐火を連弾で放ち、千歳は不敵な笑みを浮かべる。

「だけど、私のショータイムは止まらないわ!!!」

千歳は横にジャンプし、銃弾を連射して連弾の狐火を相殺していく。

いつの間にか千歳と九尾の妖狐の激しい銃撃戦となり、俺は周りに被害が及ばないように結界で防護壁を作っていく。

「なあ、天音……」

「何だ?」

結界の防護壁を張る俺に恭弥が尋ねてくる。

「千歳って、昔は病弱だったんだよな?体が弱かったんだよな?」

「……俺の記憶ではそうなんだけどな」

「なのに……あれは何だ?どう見ても病弱とは思えない激しい動きをしているし、一瞬アメリカのアクション映画を見ていると錯覚しそうなんだが……」

恭弥のその気持ちはよくわかる。

アクション映画のような見るものを虜にするような激しく、そして無駄に見えるが無駄じゃない少し矛盾したスタイリッシュな動き……千歳の師匠さん、あなたは一体あの子に何を教えたのですか?

俺が幼いころに惚れた儚いちーちゃんの姿が完全に崩壊して色々と落ち込みそうです。

そして、数分間に及ぶ銃撃戦は終わりを迎えようとした。

九尾の妖狐は狐火の出し過ぎで疲れが見え始め、息を切らしていた。

「これで……終わりだよ!」

未だと確信して千歳は地を蹴って飛びこむように走り出した。

『フシャアアアアアアアアッ!!!』

しかし、九尾の妖狐はまだ力を隠し持っていて、力を極限まで収縮させた狐火を発射した。

ドォオオオオオオオン!!!

巨大な狐火の球体が千歳に直撃し、今までにない大爆発を起こした。

「ちーちゃん!?」

俺が叫び、走り出そうとしたその時だった。

大爆発の後の煙の中から小さな両手が九尾の顔を包み込んだ。

『シャァア!?』

「つーかまえた♪」

千歳の手が九尾の顔を包み込むと、そのままギュッと抱きしめた。

制服の半分以上が燃え散っていたが、裾や腹の部分だけが燃えたので奇跡的に胸とかは見えていなかった。

九尾が暴れて千歳は振り払おうとするが、千歳は九尾を二度と離さないように抱きしめる力を強くした。

「私はあなたとお話をしたいの。そして……出来ればあなたと聖獣契約したい」

耳元で自分の気持ちを伝えると、九尾はスッと暴れるのを止めた。

『…………何故、だ?』

怒りではなく九尾の妖狐の澄んだ水の様な高い声が響いた。

千歳は強く抱きしめるのを止め、九尾の妖狐の綺麗な青い瞳をしている目をじっと見る。

九尾の妖狐は口を小さく開いてその澄んだ声を発した。

『何故、私を選ぶ?私は拒絶し、お前を傷つけたのに、何故だ?』

傷つきながら正面から狐火を受け止め、酷く拒絶してもなお自らを選んだ千歳の考えに九尾は理解不能だった。

「何故って、答えは簡単だよ。私があなたをとっても気に入ったし……何より私の魂があなたを相棒にしたいと思ったから」

『魂……だと?』

その不可解な答えに流石の九尾の妖狐は首を傾げる。そんな九尾の顔を見ながら千歳は笑みを浮かべてフサフサの体を優しく撫でた。

「うん。あなたの凛々しい顔や、この綺麗でサラサラしている銀色の毛皮。それに、このモフモフした九本の尻尾がとっても素敵だから」

『……何故だろう、お前にそう褒められると私の大切な人を思い出す。それに……懐かしい匂いがする』

「匂い?九尾さんの大切な人って……」

『……銀羅』

「え?」

『銀に羅生門の羅で銀羅だ。お前に私の名前を預ける』

九尾の妖狐の名前、銀羅を聞いて千歳の顔が明るくなっていく。

拒絶していた銀羅が千歳に名前を明かしたということはつまり……。

「それじゃあ……」

『お前と契約してやろう。今の時代の人間がどんな生き物なのかをこの目で見極めてやる。そして、悪に染まった人間がいるなら、私自らが制裁を下してやる』

銀羅は明らかに人間を憎んでいるような眼を浮かべていたが、そんな眼をしていても千歳は笑ってみせた。

「悪い人間か……わかったよ。もし私にできることがあるなら何でも言ってね。私の銃でどんな敵もぶっ飛ばしてあげるから♪」

あろうことか銀羅の制裁に手を貸そうとしている千歳だった。

はぁ……二人が暴走しないように俺が見張っとかないとな。

『……お前は変わった人間だな。ひょっとして、狐が化けているのではないか?』

九尾の妖狐である銀羅は半目で疑っている。

確かに今の千歳は本当に狐が化けていてもおかしくないからな、と思う俺がいた。

「あはは。褒め言葉として受け取るよ。これからよろしくね、銀羅」

『あ、ああ……』

銀羅は若干困惑しながら千歳と絆を結び相棒となった。




.

千歳がAGよりもはっちゃけた感じになりましたwww

バトルスタイルはデビルメイクライのダンテさんを思い浮かべてくれれば分かりやすいと思います。

次回は天音が召喚します。

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