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第36話 飛竜の襲来

ようやくパソコンを新しいのを購入しました。

高かったですが高性能なので大切に使っていきたいです。


side天音


せっちゃんとハンバーガーショップでハンバーガーを食べ、お腹がいっぱいになったところで星桜学園への帰路に向かう。

「さーて、そろそろ帰るか」

「お館様、ご馳走様でござる!」

「ハンバーガー美味しかったか?」

「はい!」

「それは良かった。また奢ってやるよ」

「は、はい!ありがとうございます!」

たまにはこうして男同士で食事するのも良いもんだな。

最近は千歳と一緒になることが多いし、今度は恭弥も誘ってみるか。

『ゲコ』

「ん?」

街に広がる雑音に混じって聞いたことのある声を耳にし、ふと下を向くとせっちゃんの足元に小さな緑色の蛙がいた。

「蛙……?何でこんなところに?」

ここは街中、水辺もないのにどうして蛙がいるのか不思議だった。

「もしやこれは……お館様、こちらに!」

せっちゃんは何かに気づいたのかその蛙を両手で優しく持つと、俺たちを連れて路地裏に連れて行った。

何事だろうとせっちゃんを見ると、右手で印を結んで何かをぼそぼそと呟いてから蛙の頭に指を乗せた。

「解!!」

ポン!

蛙が煙に包まれると、小さな巻物へと姿を変えた。

「か、蛙が巻物に?」

「これは拙者達天影忍者の緊急時における忍法・伝達の術でござる。自分に何か危機が起きた時、仲間の忍者に情報を伝えるためにこの巻物を動物に変化させて送らせるのでござる」

「その巻物に何が書かれているんだ?」

「天影忍者がこの巻物を握りしめて念ずると思ったことを暗号にして書かれるのでござる。そして、この暗号には……なっ!?」

巻物を開いて中に書かれた暗号をせっちゃんが読み取ると目を見開いて驚いた表情を浮かべた。

「ち、千歳様と銀羅殿が金髪の女達に誘拐されたと!」

「なっ!?金髪の女達って……えっ!?」

金髪の女と聞いて真っ先に思い浮かべたのは千歳の師匠であるフェイトさんの顔だった。

「フェイトさん……?でも何で……?」

どうしてフェイトさんが誘拐したのか分からないけど、あの真面目で忍者の仕事に誇りを持っている麗奈がそんな嘘をつくわけがない。

「もしかしたら麗奈も連れ去られている可能性があるでござる。すぐに追いかけないと!」

『天音!今すぐ追いかけよう!』

「でもどうやって探したら……あっ!」

アリス先生の指導で霊操術の教科書から比較的簡単な霊操術を次々と覚えていった中に、千歳を見つけることができる霊操術が一つだけあった。

「そうだ、あれなら!白蓮!せっちゃん!建物の屋上に行くぞ!」

急いで近くの建物の中に入り、屋上に出て霊力を纏う。

「霊操二十二番『共鳴』!!」

目を閉じて視界を暗くして、霊力を全方位に軽く放出し、神経を研ぎ澄ませて数秒間待つ。

そして……遠くに輝く小さな青白い光を見つけた。

「……見つけた!」

「ほ、本当でござるか!?」

「間違いない。共鳴は俺の霊力が込められた物の場所を判明する術だ。千歳はいつも俺が幼い頃にプレゼントしたおもちゃの指輪があるからな」

簡単に言えば俺の霊力を込めた物を限定に特定するレーダーみたいな術だ。

「おもちゃの指輪?」

「ただのプラスチックやガラスを使った指輪だよ。でもその指輪には俺の霊力がしっかり込められて封印されているんだ……師匠に頼んでそうしてもらったからな」

小さい頃の俺は千歳にベタ惚れで離れていてもずっと一緒と言う気持ちを込めて自分の霊力をおもちゃの指輪に込めて封印する作業を師匠に手伝ってもらい、それをプレゼントしたのだ。

今思うと幼い自分のことながら何て恥ずかしいことを平気でやるんだと顔を熱くさせるが、今はそれどころじゃ無い。

「千歳達は北東の方角に向かっている!このスピードだと車を使っているな……急がないと!せっちゃん、付いてきて!」

「御意!!」

「白蓮は空から不審な車がないかどうか探してて」

『分かった!』

白蓮は雛から鳳凰の姿になり、俺は全身に纏った霊力を両足に込めて二つの霊操術を発動させる。

「霊煌弐式強化!霊操二十四番『跳躍』!」

足の筋力を強化させて走り出し、屋上の端まで辿り着くとそこから大きくジャンプをして隣の建物の屋上に乗り移った。

跳躍は文字通り跳躍力を高めて大きくジャンプする事が出来る。

一回のジャンプで軽く五十メートルは飛ぶことが出来るので余裕でビルとビルの間をを次々と飛び越えていく。

「忍法、韋駄天の術!」

せっちゃんは霊煌弐式に似た肉体強化の忍術を使って俺の後をついて行き、白蓮は空から地上を見下ろして俺の指示通り不審な車がないか見ている。

そんな中俺は連れ去られている千歳達が向かっている方向であることに気付いた。

「この方角は……まさか!」

俺は地上にある地名や場所の方向を教える道路の案内標識を見て一瞬息を飲んだ。

「東都空港……!?」

それは東京の近くに設立された日本最大の空港で、毎日世界各国から日本へ、そして日本から世界各地への飛行機が飛んでいる。

フェイトさん達もこの空港を利用してアメリカから日本に来た。

「千歳達は空港に向かっている……」

「く、空港でござるか!?」

『確か飛行機が集まるところで色々な所に行けるんだよね。まさか千歳達をアメリカに連れて行くの!?』

「くっ、何でフェイトさんが千歳達を!?とにかく、飛行機で飛ばれたら流石に追いかけようがない、空港で車を降りたら千歳達を救出する!!」

『うん!』

「はっ!」

顕現陣から蓮煌を取り出し、万が一の事を考えて何時でも戦闘を出来るようにする。

フェイトさん、あなたは何を考えているんだ……?

千歳の姉貴分であり師匠であるフェイトさんに対し疑念を抱きながら東都空港へ向かった。



しばらく走っていると白蓮が不審な車を発見した。

それは日本ではほとんど見かけない大きなリムジンで窓はマジックミラーになっていて中が見えないが、車内から確かに俺の霊力が感じ取れた。

あそこに千歳達がいる……そう確信した俺たちは気付かれないように車を追跡する。

そして俺の予想通り、千歳を乗せたリムジンは東都空港の敷地内に入っていった。

リムジンは一般人が入れない特別な通路から入っていき、俺たちも東都空港に侵入する。

東都空港にはもちろん監視カメラや警備員がたくさんいたが、そこは隠密行動のエキスパートであるせっちゃんの忍術で影のように動いて何とか見つからずに侵入出来た。

こういう時にこそ役立つ霊煌霊操術の『霊煌玖式』があるのだが、その霊操術は最も修得が困難な破魔の次に難しいと言われている。

しかも俺自身の相性の問題なのか全く使いこなせていない。

だけど、アリス先生に指導を受けているしいつか必ず修得してみせる。

そう意気込んでいるとリムジンは旅客機の飛行機よりもひと回り小さい飛行機……プライベートジェットと思われる物の近くに止まった。

そして、リムジンから降りてきたのは信じたくはなかったが千歳を抱き上げているフェイトさんと、フェイトさんの契約聖獣と思われる鎧を纏った女性が銀羅と麗奈を抱き上げている。

「千歳……!」

『銀羅!』

「麗奈も……お館様!」

「ああ……行くぞ!!」

蓮煌を鞘から抜いて白蓮と契約執行をして鳳凰剣零式を担ぎ、せっちゃんも忍者刀を鞘から抜いて同時に一気に走り出した。

「フェイト・ハワードォオオオオオッ!!」

そして思わずフェイトさんを呼び捨てにして叫んでしまった。

「ん!?わぁお!?ア、アマネ!?それにもう一人のニンジャ!?」

「十八番『縛鎖』!!」

俺は左手から蛇のように動く十の鎖を放ってフェイトさん達の手にある千歳達を無理矢理こちらに取り返そうとしたが、二人は素早い反応で回避した。

そして、フェイトさんは千歳を抱き上げたまま懐から千歳の愛銃であるフォーチュン&デスティニーに良く似たリボルバー拳銃を取り出して縛鎖の鎖を正確に撃ち抜いて破壊した。

「ふぅ、まさか追いかけてくるとは想定外だったわ……って今の鎖は何?」

『薄々気付いていましたが、アマネさんは私達と並ぶほどの不思議な力をお持ちのようです』

鎧の女性は俺の霊操術の事に気づいていたらしい。

「へぇー、それは神に匹敵する力ってこと?」

『おそらく……』

「こんな状況で無ければ正式にアーティファクト・バトルを申し込みたいところだが、今はそれどころじゃないからね」

「フェイトさん……今すぐ千歳と銀羅と麗奈を返してください。返さないのなら、無理矢理でも奪い返します!!!」

フェイトさんを攻撃すれば一緒にいる千歳にも被害が及ぶ。

少々手荒になるが、結界で千歳の体を包んで攻撃を当たらなくさせる。

鳳凰剣零式に霊力を込めて膨大な炎を生み出した。

「蓮宮流神霊術!!」

鳳凰の紅蓮の炎で攻撃を繰り出そうとしたその時。







『グォオオオオオッ!!!』







突き刺さるような咆哮が轟き、上空から火球と雷撃が降り注いだ。

「せっちゃん止まれ!!霊煌陸式結界!!」

俺の指示にせっちゃんは動きを止めると俺たちの真上に蓮の結界を作り出して降り注いだ火球と雷撃を防いだ。

千歳やフェイトさん達のところには攻撃されてないので明らかに俺たちを狙った攻撃だった。

そして、上空から羽ばたく音が聞こえてくると夜の闇に紛れて漆黒の影が降り立った。

「あ、あれは!?」

「飛竜、ワイバーン!?」

蛇よりも恐ろしい頭を持ちその身には黒い鱗に覆われ、そして両腕の代わりに大きな翼を持ち、聖獣の中でも白蓮やユニコーンのソフィーやペガサスのクラウドなど『幻獣』と呼ばれる分類の最上級の存在と言われる『竜種』の一つのワイバーンだった。

ワイバーンは俺たちの前に降り立つと左眼に大きな傷があって失明している事に気がついたが、右眼から放たれる鋭い眼差しで俺達を睨みつけて威嚇をしていた。

「ブ、ブレイズ!?どうしてここに!?パパの所にいるんじゃ……」

『ギュオオオッ!』

「え?いいから早く行け?ここは任せろ?分かったわ!あ、でもその子達をあまり傷付けないでね!チトセの大切な人達だから!!」

『ギュオン!』

ワイバーンの言葉を分かるのかフェイトさんは意思疎通を図りながらそのままジェット機の中に入っていく。

「ま、待て!!」

『グォオオオオオ!!!』

俺たちに立ち塞がるようにワイバーンは口から火炎放射を放ち、円形の炎の壁を作って向こうに行けなくした。

「まさかここで竜種と出くわすなんて……」

「お館様!ここは拙者にお任せください!早く千歳様たちを!」

せっちゃんはワイバーンの動きを封じるために大量の手裏剣や苦無を取り出して一斉に投げつけ、俺はその間に炎の壁に向かった。

「鳳凰紅蓮撃!!」

爆炎を放つ鳳凰剣零式の一撃で炎の壁に一瞬だけ大きな穴が開き、何とか突破することが出来た。

ギィン!

しかし、炎の壁を突破した直後にフェイトさんの契約聖獣の女性が大きな槍を持って襲いかかった。

『すみませんが、あなたにはここで倒れてもらいます』

「何だと!?くっ!?」

女性が振り回す槍の一撃がとても重く、槍自体の重量が重すぎるのかまともに鳳凰剣零式で受け止めるとこちらが押しつぶされそうだった。

「霊操、二十五番『剛力』!!せやっ!!」

両腕に霊力を込めて剛腕な筋力を作り上げて槍ごと女性を跳ね返した。

『やりますね……この槍の重さに耐えられるなんて。しかし、これならどうでしょう?』

女性の足元に見たことない眩い白い閃光を輝かせる魔法陣が展開し、指で不思議な文字を描きだした。

『偉大なる主の力よ、我が身に宿りて大いなる力を!アンスール!!』

女性の背中に大きな翼が生え、聖なる光を纏っていた。

何だ!?今、あの人に膨大な力が宿っている!?

これは霊力でも魔力でもない……まさか、神に宿りし力の神力!?

すると、俺とせっちゃんの足元にフードを被った男性の姿が描かれた魔法陣が展開し、風が吹いてきた。

「せっちゃん、避けろ!」

「天の怒りよ、愚者を捕らえよ……天雷の暴風サンダー・ストーム

そして次の瞬間、俺とせっちゃんは突然現れた風が吹き荒れて雷が轟く竜巻の形をしたの結界に閉じ込められてしまった。

「ぐあっ!?」

「ぎうっ!?」

竜巻の形をした風の結界でまるでミキサーにかき混ぜられるように俺とせっちゃんは呑み込まれていく。

そして不運なことに鳳凰剣零式が手から離れてしまい、竜巻の外へ飛ばされて地面に突き刺さってしまった。

平衡感覚が失われ、上下左右どれが正しいのかわからず頭の中がぐちゃぐちゃになり、意識が薄れていく中、二つの声が聞こえた。

『しばらくすれば止みます。それまでその暴風の中で大人しくしていて下さい。フェイト、今の内に行きなさい』

「ああ、ありがとう!パイロット、今のうちに離陸だ!」

離陸……?

本当にフェイトさんは千歳をこのままアメリカに連れさるつもりか?

また、離れ離れになってしまうのか……?

あの時のように何もできなくて悲しみに暮れてしまうのか……?

「ふざけるな……」

もう二度と、千歳と離れ離れになるなんて絶対に嫌だ!







「ふざけるなぁあああああっ!!!」







俺は今ある全ての霊力を解放し、無数の剣と刀の姿を思い浮かべる。

「霊煌伍式刀剣!!!」

霊力で作られた無数の剣と刀を作製するが竜巻の中で回りながら互いにぶつかってしまうが、竜巻を切り裂くために作ったのではない。

「霊煌陸式結界!霊操五十六番!!」

下手すれば刃で自分も傷ついてしまうが結界で自分の身を守りつつ、本命は霊操五十番だ。

剣と刀の全体が白く輝き、カタカタと少しずつ震えていく。

そして、開いた手の中にあるものを握りつぶすように強く握り締めた。

「『霊爆』!!!」

ドガァアアアン!!

そして、次の瞬間に剣と刀の輝きが最高潮になると一斉に大爆発を起こして竜巻を消し飛ばした。

霊操五十番の霊爆は自分から離れた霊力を爆弾のように爆発させる術である。

これの本来の使用方法は飛ばした刀剣を爆発させて敵にダメージを与えるのだが今回は竜巻を消し飛ばすのに使用した。

『なっ!?主神の力を消しとばした!?』

「せっちゃん!」

もう一度刀剣で大量の剣と刀を作り出し、竜巻に巻き込まれているせっちゃんを蓮の結界で防御を固めた。

そして、刀剣を一斉に発射して竜巻の中に送り込み、再び霊爆で爆発させて竜巻を消し飛ばした。

結界を解除するとせっちゃんは疲れた表情を浮かべながら地面に降りる。

「せっちゃん、無事か!?」

「はい……申し訳、ありません……」

「いいってことだ。それよりまだ動けるか?」

「もちろんで、ござる!!」

「よし!五十三番『招来』!来い、鳳凰剣零式!」

自分の物を手元に引き寄せる五十三番の招来で鳳凰剣零式を手に取る。

再びワイバーンと女性と対峙するが、女性は不敵な笑みを浮かべて槍を下ろしていた。

まるでもう戦う理由がないと言わんばかりの行動だった。

『なかなかやりますね、お見事です。しかし……残念ながら時間切れです』

「何!?」

「お、お館様!飛行機が!?」

「はっ!?まさか!?」

既に千歳達とフェイトさんは飛行機の中に入っていて、しかもエンジンが点火されて少しずつ飛行機が動いていた。

「千歳!!」

『既に離陸の準備が出来ています。間違えてもその不思議な魔術のような力で止めようとしないでください。下手をすればジェット機が壊れて爆発する恐れがあるので』

「くっ!?」

飛行機はかなり繊細な乗り物でちょっとした事でエンジンが大爆発する恐れがある。

下手に動けば中にいる千歳達の命の危機が……!

『心配しなくても二週間か三週間もすればチトセ達を返してあげますから。ではブレイズ、私たちも帰りましょう。あなたの背に乗せてくれますか?』

『ギュオン』

女性はワイバーンの背に乗り、両手の翼を羽ばたかせて西の空を飛んでいった。

そして、ワイバーンの後を追うように飛行機も飛んで行ってしまった。

俺たちはその場から動けなかった……否、動くことを許されなかった。

その場に呆然と立ち尽くし、俺たちは大切な人の名前を呟いた。

「千歳……銀羅……」

「麗奈……」

そして、俺たちは自分の獲物を手放し、大切な人を連れ去られてしまったという完全なる敗北に打ちひしがれていくのだった。




ある意味今回が天音の初めての敗北となりました。

次回は天音が連れ去られた千歳たちに対してどう行動に移すのか楽しみにしてください。

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