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第29話 主従の再会

早く次のバトルが書きたいと思うこの頃、話の流れからバトルはまだまだ先になります。

もうしばらくは新キャラ登場回になります。

side天音


久しぶりに夢を見た。

それは今から五年前、俺が十歳の時の記憶。

小学校が休みで一人で修行をする為に神子装束に身を包み、木刀を持っていた。

いつも一緒に修行をする師匠は蓮宮神社の用事で忙しく、璃音兄ちゃんは星桜学園に入学して寮生活をしていたのでその日は自主練という形で修行をしていた。

素振りや剣の型、霊操術の修行……自分にできる修行をやっていた。

遊び盛りの小学生なら友達と遊ぶなどの選択もあったが、その頃の俺は母さん譲りの女顔や長い髪の所為で弄られて友達はいなかった(まあ、学校でいじめてきた奴は武力で傷付けずに黙らせたが)。

それでも師匠と修行をしている時と、母さんや叔母さんと一緒にお菓子を作っている時が楽しかったから特に問題は無かった。

そんな時、蓮宮神社の森に不思議な黒装束の少年が迷い込んだ。

少年は木を背にして倒れていて、お腹が減って動けなくなっていた。

お昼用に持ってきたおにぎりをあげると少年は瞬く間に元気になり、俺の前で跪いて感謝の言葉を述べる。

「ありがとうでござる!このご恩は一生忘れないでござる!」

語尾に『ござる』をつける不思議な少年だったが、とても素直な性格だった。

「いいって。俺の名前は蓮宮天音。君は?」

「拙者は『ーーーー』と申すでござる」

五年も前の出来事で少年の名前を忘れてしまったが、その時俺がつけたあだ名はちゃんと覚えていた。

「えっと……ちょっと呼びづらいから『せっちゃん』って呼ばせてもらうね」

今の俺では考えられないそんなあだ名を何故か付けていた。

「せ、せっちゃんでござるか!?」

「嫌かな?」

「い、いいえ!では拙者もあだ名でよろしいでござるか?」

「うん、いいよ!天音だからあーちゃんとか?」

どんなあだ名で呼ばれるのか楽しみにしていたが、せっちゃんから驚くべきあだ名を口にした。

「いえ、敬意を込めて『お館様』と呼ばせてもらうでござる!」

「なんで!!?」

もはやあだ名ではなく敬称に驚きながらもそのまませっちゃんにお館様と呼ばれ、暗くなるまで一緒に遊んだ。

しかし、時間と言うのはあっという間に過ぎ、せっちゃんは自分の家に帰る事になった。

もしかしたらもう会えないかもしれないと呟くと、俺にある願いをした。

「いつの日か、再会した時には拙者をお館様の本当の家来にして下さらぬか?」

それは遊びではなく本当の主従の関係にして欲しいとの願いだった。

最初は冗談かと思ったけど、せっちゃんの顔が本気だった。

数秒間考え、俺はすぐに答えを出した。

「いいよ。せっちゃんを俺の家来にしてあげる、約束だ」

正直なところ、俺はまだ会って間もないけどせっちゃんの事をとても気に入っている。

会えないかもしれないからこそ、その繋がりを強くしたいと思って家来を了承した。

俺は約束の証としてその日の髪を縛っていた白いリボンを解いてせっちゃんに渡した。

「このリボンを約束の日まで持っていてくれ」

「はい!その時まで大切にするでござる!」

せっちゃんは最高の笑顔を見せ、リボンと一緒に家から持ってきた俺が作ったお菓子を手土産として渡し、そのまま俺とせっちゃんは二度と会うことなく別れてしまった。



俺は夢から目を覚ますと額に手を当てながらふらふらしている頭を少しずつ目覚めさせる。

「ずいぶんと懐かしいのを思い出したな……」

あれ以来約五年……せっちゃんとは会えていない。

中学生になれば周辺の地域の色々な小学校の生徒が集まるので会えるかもしれないと期待したが、それは叶わず何処の誰かは分からずに今日まで過ごしている。

「せっちゃん……何者なんだろう?」

せっちゃんと楽しく遊んだが、今になって冷静に考えるとせっちゃんの身体能力が十歳とは思えないほどあまりにも高かった。

俺が言うのもなんだけど、まるで物心つく頃から訓練をしているようにしっかりと筋肉が発達していた。

多分だけど、俺と同じく普通の一般家庭とは違う家に生まれた特殊な人間だと思う。

「元気だといいな……せっちゃん」

小学校時代の俺の唯一無二の友達であるせっちゃんの事を思い、ベッドから降りようとした。

ギュッ!

「ん?」

寝巻きがベッドの中で引っ張られ、毛布を捲ると中にはまた潜り込んでいた千歳が俺の寝巻きを掴んでいた。

「はぁ。またかよ、千歳……?」

ため息をついて千歳の手を掴もうとすると、千歳は既に起きており何故か鋭い眼差しで俺を睨みつけていた。

「えっと……ち、ちーちゃん?」

何で朝からそんな目で睨みつけているのか分からず、千歳は静かに口を開いた。

「誰よ……」

「え?」

「せっちゃんって誰なのよぉおおおおおーーっ!!!???」

「えっ、ちょっ、まっ!うわぁあああああーーっ!??」

俺が口にしたせっちゃんの事を女の子と勘違いした千歳が大暴走をし、危うく貞操を奪われかけた。

その後せっちゃんの事を何とか説明して千歳を落ち着かせるのにかなりの体力を使う羽目になったのだった。



放課後、授業が終わり喫茶店に向かおうとすると千歳が学園長に呼ばれており、何故か俺も一緒に呼ばれて行くことになった。

「天音、朝はゴメンね。勘違いをして……」

「それは別に良いんだが、俺に襲いかかろうとするな。自分の体を大切にしろ」

「私の体は天音のものよ!いつでも純潔を捧げるよ!」

「十五の女がそんなことを言うな!はしたないだろ!?」

神社の子故に結構純潔を大切にするので千歳のはしたない発言にツッコミを入れていくと、齢千年を越える銀羅が時代錯誤な事を言い出した。

『何を言っているんだ?天音よ、昔は女子は十二歳ぐらいで結婚して子をもうけていたぞ?もう十五を過ぎたのなら何の問題も無かろう』

『え?そうなの?じゃあもう結婚しちゃえば良いじゃん』

それを鵜呑みにした白蓮の便乗に頭が痛くなりながら二人に法律の事を話す。

「それは平安時代の話だろ!?今は法律で女性は最低十六歳にならないとダメなんだよ!」

「え!?それじゃあ来月の私と天音の誕生日になったら結婚届にサインをしてくれるの!?」

俺の言葉に変に解釈した千歳の目が夜空に輝く星の如くキラキラと輝いている。

「この阿呆が!どうして学生の身分で婚姻届にサインをしなくちゃいけないんだよ!?それに男性は法律で十八歳にならないと結婚出来ないから婚姻届を出しても市役所で受理されずに追い返されるわ!!」

「それでも良いの!天音と私を繋ぐ鎖を一つでも増やしておきたいの!」

「怖っ!?俺を既に縛っている許婚の証明書のみならず婚姻届も欲しいのか!?」

現在俺と千歳を許婚と証明する証明書は千歳の左手の顕現陣の中に入っている。

それが存在する限り俺は千歳の許婚として証明されてしまうのだ。

「それと誕生日プレゼントに婚約指輪!エンゲージリングをGive me!!」

「学生にお願いする誕生日プレゼントの範囲を超えているぞ!?」

『婚約指輪って何?』

『結婚の約束をする時に男性が女性に贈るものだ。西洋から世界中に広がった結婚の文化らしいぞ』

まさか誕生日プレゼントに婚約指輪をお願いされるとは予想外で頭を悩ませる。

でも誕生日プレゼントに婚約指輪を渡さないと千歳は何か嫌なことをしてくる……それだけは確信があった。

しかし婚約指輪か……金は何の問題も無いけどどうやって買えば良いんだよ。

「あ、そう言えば気になってたんだけど空音はどうしたの?」

「急に話が変わったな……空音は眠っているよ、ここに」

突然話を切り替えた千歳に少し呆れながら自分の胸に手を当ててそう言った。

空音は瑪瑙との戦いで大きな傷を負い、それ以来ずっと俺の中で眠り続けている。

以前みたいに俺に話しかけることがほとんど無くなり、その代わりにそう俺に言い残した。

「大丈夫だから心配しないで……天音、あなたの力を借りて、眠りにつくよ……」

俺の霊力を元に空音は少しずつ力を取り戻しているようだ。

本当に俺と空音は何の関係なのか益々分からなくなっているが、空音のお陰で瑪瑙を倒す事が出来た。

空音は信頼に値する人間だ……だから俺は何があっても最後まで空音を信じ続ける。

「あいつが目覚めたらもう一度話してみるよ」

「そう、じゃあその時になったら私も一緒にお話しさせてね。お礼とか言いたいし」

「ああ、分かった」

そうこうしている話している内にいよいよ学園長室に到着した。

千歳はすぐに扉にノックをして中に呼びかける。

「おじいちゃん、入るよ〜」

『邪魔するぞ』

「失礼します」

『お邪魔しまーす』

返事も聞かずに千歳と銀羅はズカズカと学園長室に入った途端に違和感を感じた。

「ん……?」

入室した学園長室にはこの学園のトップであり、千歳の祖父である大きくて長い白ひげが特徴の老人……星桜学園学園長の『天堂厳武』しかいないが、それ以外に二つの気配を感じた。

「おお!みんな、よく来たの〜」

「おじいちゃん、部活もあるから手短にね」

「分かっとる」

千歳と学園長は孫と祖父としての家族の話をするが、俺は警戒しながら左手を握りしめて顕現陣を輝かせる。

「では早速だが……千歳よ、お前に天影の護衛がつく事になった」

天影……?

何処かで聞いたような名前に俺は眉を寄せて疑問符を浮かべる。

「天影って……天堂家に代々仕えている忍者の一族の?」

に、忍者!?

忍者ってまだ存在していたのかと耳を疑い、それと同時に俺は二つの気配が何なのか理解した。

「それってさっきから気配を隠している二人のことですか?」

「えっ?近くにいるの?」

「ほう、二人の気配に気付くとは流石じゃな。二人とも出てきなさい」

学園長がそういうと二つの影が学園長の背後に降り立って跪いていた。

二人は黒装束に身を包み、腰には忍刀と呼ばれる普通の刀よりも少し短い直刀が刺さっていた。

一人は長身の少女で驚く事に俺よりも背が少し高かった。

まるでモデルのようにスタイルが良く、落ち着いた雰囲気を出していた。

そして、もう一人は少女に対して千歳よりも少し低い身長の少年だった。

小さい体をしているが幼い頃からずっと剣の修行をしてきた俺には分かる。

あの体の中には鍛え抜かれ、引き締めた肉体があると。

二人は頭と顔を隠している黒装束の頭巾とマスクを外してその素顔を明かした。

「お初にお目にかかれます、千歳様。私は天影忍軍くノ一、神影麗奈と申します」

少女の素顔は凛としていて、その長身と合わさると可愛いと言うよりも本当にモデルみたいで綺麗といった感じだった。

そして、少年の方の素顔を見た瞬間、俺は眼を疑った。

大人っぽい麗奈さんに比べるとまるで歳の離れた弟のように幼い子供のような童顔だったが、その顔には見覚えがあった。

「同じく、天影忍者、月影刹那と申すでござる」

刹那……その名前と顔が一気に幼き日の俺の記憶に蘇ってきた。







「拙者は『月影刹那』と申すでござる」







俺は無意識に五年前に出会った少年のあだ名を口にした。

「せっちゃん……?」

その瞬間、刹那さんは眼を見開いて声を震わせた。

「ま、まさか……!?」

刹那さんは黒装束の左手の裾を捲ると、左手首に細い白い布が何重にも巻かれていた。

その布を解くとそれは見覚えがある白いリボンだった。

「それは……俺が五年前にあげたリボンだな……せっちゃん!」

刹那さんがせっちゃんだと判明し、俺は微笑みながら目尻に涙を浮かべた。

「はい……!やっと、これをお返しする時が来ました……お館様!」

思わぬところで五年ぶりに再会した俺の友達、せっちゃんこと刹那。

俺と再会したことで歓喜の涙を浮かべるせっちゃんからリボンを受け取り、それをポニーテールに纏めて縛る。

「このリボン、ずっと大切に持っていてくれたんだな」

「はい!拙者の宝物としてずっと大切にしてきたでござる!」

「あの時の約束、今でも変わらない気持ちか?」

「もちろんでござる!この命、この刃をお館様……天音様に捧げるでござる!!」

五年前と変わらない俺に忠義を尽くそうとするその心意気に関心と同時に苦笑を浮かべると、顕現陣から蓮煌を取り出してせっちゃんに向ける。

「命を捧げる必要はない。だけど、これから俺たちに降りかかるかもしれない災厄をその刃で振り払ってくれ。そして、俺の進む道に着いて来てくれ!」

せっちゃんは輝くような笑顔を見せると腰に刺さった忍刀を前に出して深く頭を下げた。

「はい!!!」

俺とせっちゃんの五年越しの主従の誓いをここに立てた。

ちなみに千歳達はきょとんとしながらこの光景を見守るのだった。




こうして見ると天音はけっこう色々な人とフラグ立てているんですよね。

せっちゃんはAGとは違う形で天音の家来となりました。

せっちゃんとれいちゃんのアーティファクトは後々登場させますのでお楽しみに。

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