第25話 覚醒の鳳凰剣
前回修羅に落ちた天音を千歳ちゃんが呼び戻しました。
さて今回は再び千歳ちゃんが天音をカウンセリングですwww
side天音
瑪瑙を倒す……否、『殺す』為に俺は五代目当主が戦国時代での戦の死闘の末に編み出した蓮宮流戦術奥義、剣王戦嵐で瑪瑙に数多の攻撃を繰り出していた。
しかし、オーバードライブによって得た能力の一つである再生能力によりいくら攻撃しても瑪瑙にはダメージを与えられなかった。
もはや首を切り落とすしかない……そう思っていた矢先、俺と瑪瑙の距離が離れたその時に瑪瑙の目の前の地面に大きな弾丸が直撃すると、大きな爆発が起きて瑪瑙を吹き飛ばした。
追い討ちをかけるように瑪瑙に直接弾丸を撃ち込んで更に爆発させて遠くへ吹き飛ばした。
そして、その弾丸を撃ち込んだ張本人が近付き、俺は目を疑った。
「ち、ちーちゃん……?」
「あ、いつもの天音に戻ったね」
それは大きな銃を肩に担いで優しい笑みを浮かべた幼馴染のちーちゃんこと、千歳だった。
「その銃はまさか……」
「私と銀羅の新しい力、グレネードランチャーのバーストランチャーだよ」
無幻九尾銃の第三の妖銃変化、炸薬を詰めた弾丸を放つバーストランチャー……まさかこの戦いで新しい力に目覚めたのか!?
「さてと……天音、ちょっといい?」
無幻九尾銃を二丁拳銃にしてホルスターに戻し、両手を俺の頬に添えると……。
「え?むぎゅ!!?」
両手の指で俺の両頬を強く握り左右に強く引っ張った。
「痛たたたたたっ!?ひ、ひーひゃん!?」
「たてたて〜、よこよこ〜、まるかいて、ちょん♪」
「ふぎゃあ!?」
千歳は楽しそうに俺の頬を縦横に引っ張り、強烈な痛みを与えて勢いよく手を離した。
初めて受けた両頬の痛みに涙目を浮かべ、痛みに耐えながら千歳を軽く睨みつける。
「な、何するんだよ、ちーちゃん!?」
「修羅に堕ちている天音を引き戻したんだよ」
「何……?」
一体どういう意味なのか分からず俺は目を何度も瞬きをして千歳を見つめると、千歳は笑顔から凛とした真剣な表情を浮かべて俺を見つめる。
「天音、気づいてないだろうけど……今のあなたは守護者じゃない。修羅に堕ちている復讐者よ」
「っ……!?」
修羅に堕ちている復讐者……そう指摘され、俺は言葉を失った。
俺が、復讐者……?
冷静になると確かにその通りで両手にある刀剣には瑪瑙の血がべっとりと付いており、急に自分が怖くなって刀剣を手放すと、霊力となって空中へ消えた。
「天音……璃音さんなら生きているわ」
「えっ!?」
璃音兄ちゃんが生きている……!?
「今、生徒会長さんの力で花音さんの血を璃音さんに輸血しているわ。天音が傷を治したからね」
「そうか……良かった……璃音兄ちゃん……」
璃音兄ちゃんが生きていると知り、俺は息を吐いてホッとした。
大切な家族の無事を知り、力が抜けるほど安心するが、千歳は俺を睨みつけていた。
「天音……あなたは守護者だけど同時に復讐者になのね」
「どういう意味だ……?」
「気づいているでしょう?あなたはお師匠さん、詩音さんの左腕を失わせてしまった事があなたの『心の闇』となっている」
「心の、闇……?」
「それがあなたを簡単に守護者から復讐者へと堕としてしまう……そして、白蓮ちゃんとの絆の力を大きく弱めてしまう」
「白、蓮……?はっ!?」
俺は鳳凰剣零式を手放した方を向くと地面に刺さった蓮煌の柄の上に白蓮が立っていた。
白蓮は俺の肩に乗ると悲しそうな表情を浮かべて俺に話しかけた。
『天音……璃音が倒れた時、君から負の感情が僕に流れていて、その直後に僕を手離して一人で瑪瑙に向かった。僕達は相棒じゃないか……何があろうとも最後まで一緒に戦うよ』
瑪瑙にこれ以上誰かを傷ついてほしくない、戦いに巻き込みたくない気持ちから白蓮を……鳳凰剣零式を手放していた。
だけど、俺と白蓮は魂の絆で結ばれた相棒だ。
たとえ何があろうとも、最後まで一緒にいるべきだった。
俺は契約者として恥ずかしいことをした……そのことを強く恥じて白蓮の頭を優しく撫でた。
「白蓮……ごめん……」
『うん。じゃあ、蓮煌を取りに行こう』
「ああ……」
俺はゆっくりと地面に突き刺さった蓮煌の元へ行き、右手で柄を握りしめて引き抜き、頭身に自分の顔を映した。
「悪かったな、蓮煌。白蓮と置き去りにしてしまって……」
「天音、これを……」
千歳が持っていたのは氷のような透明な刀身を持つ剣……蓮宮神社に代々伝わる門外不出の特別な製法で作られた神器の一つ、氷蓮だった。
「これは……璃音兄ちゃんの氷蓮!?」
氷蓮がどうして千歳が持っているのかと疑問を持つと俺の空いている左手に差し出してきた。
「受け取って一緒に戦って。それが璃音さんの願いだから」
「璃音兄ちゃんの願い……」
蓮宮神器は本来なら与えられた者にしか使う事は許されないが、俺は一度だけ氷蓮を手に戦った事がある。
氷蓮は俺と璃音兄ちゃんを繋ぐものなのだ。
「璃音兄ちゃん……一緒に戦おう」
俺は氷蓮を受け取り、今は休んでいる璃音兄ちゃんの心を受け継ぐ。
「天音、私も一緒に戦う。あなたを復讐者にはさせない。あなたとあなたの守りたいものを私も守る。だから……私を守ってね?」
千歳はウインクをしてもう一度、俺の覚悟を問う。
「俺の背中を任せるよ、千歳」
「うん、任せて!」
俺は復讐者ではなく守護者として……戦う。
俺と千歳、白蓮と銀羅と共に。
気持ちを新たに蓮煌と氷蓮を両手で強く握りしめて瑪瑙と再び戦いに挑もうとしたその時だった。
「それなら、私も一緒に二人の背中を守るよ」
何度も聞いた事のある優しい声音が俺の中から響いた。
すると、両腕に不思議な文様が一瞬輝いて浮かび上がると、俺の体から無数の光の粒子が溢れてそれが一つに集まると人の形となり、俺と千歳が目を疑うものが現れた。
「よっと、やっと天音から分離が出来たよ」
それは俺の夜の姿で、夢の中に現れて蓮宮流抜刀術を操る謎の美少女……空音だった。
空音は夢の中と同じように蓮宮の巫女装束を身に纏っていた。
空音の突然の登場に千歳は特に困惑していた。
「あなたは天音の夜の姿の……な、何で!?誰なの!?」
空音は困惑している千歳に対して笑みを浮かべて自己紹介をする。
「私は空音、蓮宮空音。天音と共に生きる影よ」
「空音……!?」
どうやら俺が名付け名前を気に入ってくれているが、蓮宮の姓を名乗っていることが気掛かりだった。
やっぱり空音は蓮宮に関係のあるのだろうか。
そもそも何で俺の中にいるのか、そしてこうして現実に現れたのか不思議で仕方なかった。
「あ、一応誤解を解くためにいうけど、私は天音を狙うつもりはないから」
「本当に……?」
「本当だよ。むしろ、千歳ちゃん。あなたが欲しーー」
「空音、お前……どうして俺の中から出てきたんだ?」
空音の危ない発言に割り込んで、なんで現れたのか尋ねる。
「うーん、さぁねぇ。ただ、天音と一緒に戦いたいと願ったら出てきちゃった♪」
しかし、答えは分からず空音は笑顔で首を傾げた。
「どういう事だよ……」
どんな原理か全く分からず、余計に頭を悩ませると、目を細めて別の方向を見ていた。
「そんな事より、あのおばさん。こっちに来ているわよ」
おばさんと聞き、一瞬誰のことかわからなかったがすぐに理解できた。
先程、無幻九尾銃のバーストランチャーでぶっ飛ばした瑪瑙が髪や服をかなり乱しながら一歩ずつゆっくり近づいてきた。
顔はあまり見えなかったがあれはかなり切れているように感じられた。
白蓮と蓮煌を契約執行しようとしたその時、空音が驚くべき発言をした。
「天音、白蓮を蓮煌だけじゃなくて氷蓮も一緒に契約執行して」
「はっ!?氷蓮を!?」
蓮煌と氷蓮を一緒に契約執行をしてアーティファクトに!?
「氷蓮は天音と璃音兄さんを繋ぐ大切な武器でしょ?契約媒体として充分使えるよ」
本来ならアーティファクトは一つの契約媒体で契約執行をするが、千歳の持つ二丁拳銃のフォーチュン&ディステニィーが無幻九尾銃になったので、セットになっている契約媒体なら契約を執行出来る。
蓮煌と氷蓮は同じ神器職人である俺の祖父が作った言わば兄弟剣だ。
鳳凰剣零式ともう一つ、新たなアーティファクトを誕生させることは可能だ。
「やるしかない……白蓮、行こう!!!」
『うん!やろう!』
両手にある蓮煌と氷蓮を逆手に構え、白蓮は雛から鳳凰の姿となって俺の前に降り立つ。
「契約執行!!鳳凰白蓮!!!」
白蓮の体が無数の光の粒子となり、蓮煌だけではなく氷蓮にも入り込み、赤と青の二つの眩い光が放たれる。
右手の蓮煌は鳳凰剣零式へと姿を変えた。
「アーティファクト、鳳凰剣零式!!!そして……」
左手の氷蓮は霊閃氷帝剣によく似た透明な氷の刃を持つ、鳳凰の姿が描かれた両刃の大剣へと姿を変えた。
炎の鳳凰剣零式と対を成すこの氷の大剣の名前を俺はとっさ的に思いつき、その名を叫んだ。
「『鳳凰剣百式』!!!」
零と百。
零が無限の可能性を示すなら、百は目に見える束ねた沢山の力。
そして、俺はその思い浮かんだ名前にふと気付かされた。
俺は……独りじゃない、信頼できる友人がいる、頼れる先輩がいる、大切な家族がいる。
そして……愛する人と大切な相棒がいる。
そう気付かされるとスッと瑪瑙への怒りや憎しみが和らいで心が静かになっていった。
「鳳凰剣……零式と百式か。うん、良い名前だね。それじゃあ私にも!」
「「えっ?」」
鳳凰剣百式に感心している空音が両手を前に突き出して黒色の霊力を纏うと、二つの鳳凰剣からそれぞれ赤と青の光の玉が現れて飛んだ。
「暗き闇を司る陰の力……天を翔け、光を導く双つの翼となりて、我が新たな力となれ!!」
そして、空音がその二つの光の玉を両手で握り潰すと、光は刀の形となって姿を変えた。
驚くことに右手に持ったその刀は刀型の鳳凰剣零式で、左手のは透明な氷のような刃を持つ刀だった。
それはまるで鳳凰剣百式を刀型に形態変化をしたような形だった。
「陰之型、鳳凰剣零式!鳳凰剣百式!!」
刀型の二つの鳳凰剣が空音の両手に握られ、俺と千歳は目を疑った。
どうして刀型の鳳凰剣が現れたのか理解が出来なかった。
鳳凰剣に直接陰の霊力を込めることで形態変化をするはずなのに、まるで『分離』するかのように空音の手に現れた。
「天音、今は瑪瑙を倒すことに専念しよう」
「……そうだな、俺はお前を信じている。一緒に戦おう」
「うん!千歳ちゃんもよろしくね!」
「あ、うん!」
謎の多い空音だが、何故か分からないが空音を疑う事は出来ない。
俺の心が空音は信頼に値する存在だと訴えている。
空音に対する疑いを消し、二つの鳳凰剣……双翼鳳凰剣を逆手から構え直すと空音がある提案をした。
「天音、霊煌壱式と霊煌拾弐式を使おう」
「壱式と拾弐式を?」
壱式は初代当主が作り出した最強の霊煌霊操術で、拾弐式は十二代目当主……師匠が作り出した霊煌霊操術だ。
その力は俺や未来の当主達のために作り出した俺たちを守るための霊操術。
二つとも扱いがとても難しく、これまでなかなか使う機会がなかったが瑪瑙を倒すためにはそれしかない。
「今こそ……蓮宮の切り札を使う時だよ」
「……そうだな。二人共、俺の前に」
「う、うん」
「お願いね」
双翼鳳凰剣を地面に突き刺し、二人が並んで俺の前に立つ。
そして、精神を集中して全身に霊力を纏い、霊煌紋を輝かせる。
師匠……俺たちに力を貸してください。
「己が限界を超え、その手に新たな力を掴め!!霊煌拾弐式『覚醒』!!!」
次の瞬間、俺の纏う霊力が爆発するように膨れ上がった、溢れるばかりの力が全身に伝わってくる。
そして、二人の背中に触れて霊操術の力を送ると、二人の体からそれぞれ妖力と霊力が膨れ上がった。
「えっ?えっ?えっ?な、何これ!?力が湧いてくる……」
「霊煌拾弐式覚醒は一時的に潜在能力を開花させて、全ての力を倍増させるのよ」
空音の言う通り、覚醒は使用者である俺だけじゃなくて他人の力も覚醒することができる。
上手く使えて安心したが、覚醒を使ったことで驚くべきことが起きた。
「千歳……お前、髪が金色になってるぞ」
「えっ……?」
俺と同じ長い黒髪を持つ千歳の髪がまるで染めたかのように綺麗な金髪となっていた。
それは千歳の体から発せられている『妖力』が原因だろう。
妖力は本来なら妖怪にしか宿らない力だが、大昔から妖力が宿った人間が妖怪に変化したという伝承が多く残っている。
時代の流れと共にそれは衰退していったが、前世が妖怪だった人間に妖力が宿ることが稀にある。
つまり……妖力を持つという事は千歳の前世が妖怪だったという事になる。
おそらくその事には銀羅も既に気付いているだろうが何も語らない。
多分、千歳の事を思って語らないようにしたのだろう。
一方、その千歳は金髪に触れて喜んでいた。
「わぁ〜!綺麗な金髪!師匠と同じくらいに輝いている〜!」
未だに謎に包まれているアメリカ人である千歳の師匠はどうやら金髪らしい。
まあ俺としても黒髪の千歳も好きだが、金髪の千歳も似合っているから良いな。
「天音、千歳ちゃんにベタ惚れなのは分かってるけど、そろそろちゃんとしてね」
「……ああ」
どうやら空音には俺の考えていることは全部お見通しのようだ。
あまり変なことを考えるのはやめよう。
「さて……行くか」
右手の鳳凰剣零式をいつものように肩に担ぎ、左手の鳳凰剣百式を前に構えて切っ先を瑪瑙に向ける。
流石に大剣の鳳凰剣を二つ持つとかなり重いが、覚醒状態で同時に霊煌弐式強化で腕に力を込めているので問題なく振える。
「天音と……空音。背中は任せて!妖銃変化!!」
千歳は無幻九尾銃を妖銃変化をするが……右手にストームガトリング、左手にバーストランチャーを持っている……あれ……?
お、おかしいな……同時展開もそうだけど、その銃器は両手で使う物で、片手で使える代物じゃないよな?
千歳のありえない事に軽く現実逃避しそうになったが、覚醒の力で無幻九尾銃を二つ同時に展開して扱えるようになったらしい。
「頼りにしているよ、二人共」
そして、空音は刀型の双翼鳳凰剣を軽く交差させる二刀流の構えを取る。
俺と千歳、そして空音の三人で瑪瑙に最後の戦いを挑む。
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天音と千歳、そして空音で瑪瑙に挑みます。
空音は前々から現実に出したかったのでようやく出せてほっとしています。
何故天音の中から出てきたのかそれはまだまだ謎のままです。
次回、いよいよ決着がつきます。




