第22話 超越の境地
瑪瑙とのバトルスタートです。
AGとは異なる戦いになります。
仇敵である瑪瑙と対峙し、俺達は一致団結をして瑪瑙に戦いを挑んだ。
ノーマルフォーメーション通りに動いて瑪瑙に攻撃する。
前衛の俺と恭弥で無数の糸を放つ瑪瑙に向かって攻撃を繰り出し、後衛の千歳と雷花さんは後方支援攻撃と遠距離攻撃で瑪瑙を狙う。
「蓮宮流神霊術、鳳凰孤月斬!」
「無幻九尾銃、Fire!」
「如意棒!刃龍砕破!!」
「雷光竜閃……サンダー・ドラゴン!」
四人の息の合ったコンビネーションから繰り出されるアーティファクト達の連続攻撃の数々。
しかし、その攻撃全てが瑪瑙の糸で防がれてしまった。
接近しても地面に敷かれた石畳を軽々と切り裂くほどの鋭い糸で近づかず、遠距離攻撃をしても繭のように包まれた糸の守りで防いでいる。
女郎蜘蛛の無数の糸……三年前に戦ってそのアーティファクトの強力な能力は体験しているが何かがおかしい。
いくら何でもシンクロ率が高まったとはいえ、アーティファクトの能力が強力過ぎている。
ここは一つ、試してみるか……。
「空音……力を借りるぞ」
俺の中にある陰の霊力を鳳凰剣零式に込めて大剣から刀の姿へと形態変化させる。
「霊煌肆式斬撃」
腰に差した蓮煌の鞘を抜き、刀型の鳳凰剣零式を鞘に収めて抜刀術の構えを取る。
「蓮宮流抜刀術……静凛白蓮!!!」
鞘から鳳凰剣零式を解き放ち、高速の白い斬撃が飛ぶ。
更に霊煌肆式の斬撃により、白い斬撃の鋭さとスピードが倍増される。
これなら瑪瑙の糸を断ち切れる、そう思っていた次の瞬間、瑪瑙の口角が上がり、両手の指を動かすと糸の動きに変化が現れた。
「喰らい付くせ!餓弦瀑布!」
無数の糸がまるで流れる大河のように動き、そして降り注がれる滝のように静凛白蓮の白い斬撃を呑み込んで打ち消してしまった。
「斬撃を呑み込んだ!?」
得意の抜刀術をいとも簡単に攻略され、俺だけでなくみんなも目を疑った。
だが、大河の如き糸の大群は斬撃を呑み込みながらそのまま俺に迫っていた。
「くっ!強化!!」
霊煌弐式で足を強化し、その場から退避して冷静に状況を分析する。
俺たちのアーティファクトの攻撃、霊煌霊操術付加の抜刀術も届かない……どうやって瑪瑙を倒すことができるのか?
『ねえ、おかしいよ……』
すると鳳凰剣零式から白蓮の声が響いた。
アーティファクトから見て何か分かったのだろうか?
「白蓮、何がだ?」
『あの二人……何だか魂が混ざり合っているみたいだ』
「魂が混ざり合っている……?」
人間と聖獣はアーティファクトの契約をすることで不可視の強い魂の絆で結ばれる。
魂の絆で結ばれているからこそ人間は神器とも呼ばれる力を持つアーティファクトを自由自在に操ることができる。
しかし、魂が混ざり合っているのは聞き捨てならない言葉だった。
魂とは生命に宿る心であり、源ともいえるもの。
本来は決して混ざり合うことはないものだ。
その時、俺の頭の中に一つの仮説が浮かび上がった。
「まさか、アーティファクトの奥義……『超越の境地』……!?」
超越の境地。
それはアーティファクトを使う全ての人間が到達可能と言われているが、実際には限られた人間にしか辿り着けない新たな境地。
人間と聖獣のシンクロ率が100パーセントを越える事によってアーティファクトに新たな力が発現する。
発現したその力はもはや俺たちアーティファクト使いとは別の次元ともいえる存在なのだ。
聖獣の中で最高位のランクを持つ神や仏が宿るアーティファクトである恭弥と雷花さんでも極神の境地に達しているアーティファクト使いの前では格が違う。
もし、瑪瑙がその境地に達しているとしたら……俺たちに勝ち目は無い。
どうする……アーティファクトだけでは瑪瑙の相手にならないかもしれない、こうなったら十二の霊煌霊操術の力を全て解放するしか……。
「天音!!」
千歳の声にハッとすると無数の糸が幾つものの槍のように纏まり、四方八方から襲いかかってきた。
「ちっ、蓮宮流ーー」
螺旋状の斬撃を放つ水蓮天昇で振り払おうとしたその時。
「助太刀が必要みたいだな、天音」
一陣の冷たい風が吹いた瞬間。
ピシッ!!
糸の槍が時が止まったかのように固まり、そして割れたガラスのように砕け散った。
そして、俺の前に一つの影が現れた。
蓮宮の神子装束に身を包み、長髪を三つ編みに縛り、透明な刀身を持つ鳳凰剣零式とそう変わりない大きさを持つ両刃の大剣を手にした青年だった。
「璃音、兄ちゃん!?」
それは俺が尊敬する一人、従兄弟であり兄弟子である璃音兄ちゃんだった。
その手にある透明な大剣は初めて見るが、おそらくは璃音兄ちゃんのアーティファクトだろう。
それにしても、何とも美しいアーティファクトなのだろうか。
まるで水晶や氷の塊を削って造られたかのような刀身に俺は一瞬心を奪われた。
「天音に見せるのは初めてだったな。こいつが俺のアーティファクト、万物を凍らす氷の剣。『霊閃氷帝剣』だ」
霊閃氷帝剣……璃音兄ちゃんにぴったりの綺麗なアーティファクトだ。
璃音兄ちゃんは霊閃氷帝剣を肩に担いで瑪瑙と対峙する。
「さぁて、ようやく会えたな……死弦の瑪瑙」
「氷の剣のアーティファクト……てめえ、七星剣の氷帝だな?」
「ま、そう呼ばれているな。ところで……てめえが三年前に左腕を奪った男を覚えているな?」
「三年前……ああ、そうだな。その小僧を守って、私の糸に左腕を貫かれて死にかけたなぁ?」
瑪瑙は不気味な笑みを浮かべて俺の時と同じように璃音兄ちゃんを挑発するように言った。
父である師匠の仇敵である瑪瑙を目の前にし、璃音兄ちゃんは怒りを露わにしようとしていたが、ため息を吐いていた。
「ふっ……天音が冷静に戦っているんだ。兄ちゃんが怒りにとらわれる訳にはいかねぇよな?」
「璃音兄ちゃん……」
「天音、他の聖霊狩りは全て片付けた。後は瑪瑙だけだ。気合いを入れろ」
後ろから璃音兄ちゃんの顔を覗くと小さく笑みを浮かべていて、瑪瑙を対峙して怒りで我を失ってない様子だった。
「みんな、俺に続け。この戦況を打ち崩す!」
肩に担いだ霊閃氷帝剣を大きく振り回すとそのまま霊力を込めて刃を地面に突き刺した。
「蓮宮流神霊術、氷天零世界!!!」
地面に突き刺した霊閃氷帝剣を中心に半径数十メートルが一瞬にて全てを凍らし、生き物の体温を奪う氷河期のような氷の世界へと変貌した。
俺たちはあまりの寒さに体が凍えそうだったが、アーティファクトから聖獣たちの力が流れて体に薄い膜のようなものを張って寒さを遮断してくれた。
「な、何だと!?私の糸が……」
そして、瑪瑙の操るアーティファクトの全ての糸が凍りついて粉々に砕かれ、塵となって消えていく。
これが璃音兄ちゃんのアーティファクト、霊閃氷帝剣の力……凄い、流石は俺の越えたいと目指す一人だ。
璃音兄ちゃんのお陰で戦況の空気が文字通り変わり、俺たちはアーティファクトを強く握りしめた。
「今だ!!!」
璃音兄ちゃんは霊閃氷帝剣を左手で持ち、そのままいつも俺が鳳凰剣零式を扱うときと同じように肩に担いで先導して走り、俺たちもここが攻め時だと直感した。
今こそ全ての力を解き放ち、瑪瑙を倒す!
「行くよ、銀羅!!」
千歳は二丁拳銃の無幻九尾銃に千歳の精神力と銀羅の妖力によって生成される妖炎弾のエネルギーを圧縮し、両腕を交差させて引き金を引く。
「妖炎弾、双龍連弾!!!」
二丁拳銃の銃口から炎の龍が現れ、二匹の炎龍が絡み合いながら瑪瑙に襲いかかる。
「ちっ!?うぜぇえええええっ!!」
瑪瑙は凍ってしまった糸に代わり、新たに糸を作り出して炎龍を切り裂こうとした。
しかし、作り出した糸の数が最初と比べて圧倒的に少なく、炎龍の妖炎によって燃え尽きて灰となってしまった。
「うぉおおおおおーっ!!!」
恭弥は全身の力を込めて太く、そして天に向かって伸びていく如意棒を必死に持ち上げる。
「如意棒、天地一閃!!!」
巨大な柱の如き巨大化した如意棒を勢い良く振り下ろし、如意棒の渾身の一撃が瑪瑙の右腕を掠める。
「ぐあっ!?」
バキッ!!
骨が折れる音が派手になり、瑪瑙は左手で右腕を抑える。
瑪瑙の両手は義手に繋がれているため、義手と神経を直接繋いで動かしている。
義手に一番近い腕を攻撃する事で次々と作られていく糸の動きが鈍っていた。
「雷花!続け!!」
「……うんっ!!!」
恭弥の攻撃に続き、トールハンマーを掲げた雷花さんの周囲に大量の雷の槍が出現した。
「轟雷天槍、ライトニング・スピア!!!」
トールハンマーを前に突き出すと無数の雷の槍が一斉に放たれ、瑪瑙の周りの地面に突き刺さると秘められた雷が瑪瑙に降り注がれる。
「がぁああああああああっ!!?」
「天音!!」
「了解!!」
璃音兄ちゃんの発した俺の名前を呼ぶ声だけでこれから何をするのか瞬時に理解できた。
鳳凰剣零式を大剣に戻し、霊煌弐式で全身の筋肉を強化させる。
そして、既に両腕と両脚に霊操二十五番の剛力と霊操二十六番の俊足を発動している璃音兄ちゃんと並行して走る。
物心ついた時から師匠の元、一緒に修行をしてきた兄弟弟子だからこそ心が通じ合っている。
「決めて!!天音!!!璃音さん!!!」
「行けぇっ!!!」
「行ってぇっ!!!」
千歳、恭弥、雷花さんの声援が耳にしっかり届く。
みんなが繋げてくれた瑪瑙への道標を無駄にしないために、この一撃に全てを賭ける!
瑪瑙が再び糸を作って俺と璃音兄ちゃんを縛ろうとした。
「霊煌伍式刀剣!風の如く翔けよ、剣の鳥達よ!無限の剣撃 (アンリミテッド・ソードブレイク)!!!」
それよりも早く霊煌伍式の刀剣で数多の剣を作り出し、それを空高く飛び、獲物を狙う鳥の如く一斉に発射して糸を断ち切る。
「何っ!?」
「「蓮宮流剣術!!!」」
瑪瑙が驚いたその隙を突き、遂に瑪瑙の間合いに入った。
俺と璃音兄ちゃんは肩に担いだ鳳凰剣零式と霊閃氷帝剣の柄を両手で強く握り締めた。
「「紅蓮裂刃!!!」」
二つの炎と氷の大剣から織り成す蓮宮の剛剣を同時に振り下ろして手の内を絞め、更に右足で地面を強く踏み込んだ。
剣術の基本で剣でより強い一撃を与えるために剣で対象に衝撃を与える際に手の内を絞め、右足を強く踏み込むことで威力のある剣撃を出すことが出来る。
紅蓮裂刃はそんな剣術の基本を最大限に生かした最高の剛剣を放つ技なのだ。
しかも、剣の中で重量級に値する大剣で紅蓮裂刃を放てばその分威力も倍増する。
二つの紅蓮裂刃は瑪瑙の体を捉え、肩と腕を狙って叩き込んだ。
これで瑪瑙を戦闘不能にまで追い込める……そう思った矢先、瑪瑙は痛みで顔を歪めるどころか不敵な笑みを浮かべていた。
「やるじゃねえか、小僧共。だがな……」
瑪瑙の体から黒い力が溢れていた。
俺と璃音兄ちゃんはとっさに瑪瑙から離れた。
瑪瑙の体から出ている黒力には見覚えがあった。
あれは銀羅と同じ妖魔の力の源、妖力!?
でもなんで人間の瑪瑙が妖力を!?
「てめえらじゃ、私には勝てねえよ」
瑪瑙は自分の両手を顔の前に持って行き、十字に交差させて大声で叫んだ。
「やろうぜ、鬼那!!骸繰死糸、『神器超越』!!!」
瑪瑙の叫び声で発した単語に俺たちは驚愕して耳を疑った。
「なっ!!??」
「オーバードライブ!!?」
その直後、瑪瑙の体が光に包まれて膨大な妖力が爆発して衝撃波と突風が吹き荒れた。
そのあまりの強さの衝撃波と突風に俺たちは吹き飛ばされそうになったが、なんとか踏ん張って瑪瑙を見る。
そして、俺たちの目に映ったのは……人間とは程遠い、異形の姿をした瑪瑙だった。
「アーティファクト、骸王死弦!!」
紫色の着物を纏い、背中から大きな蜘蛛の足が生えて、義手だった両手が不気味な虫の手となっていた。
義手ではなく八本の足から無数の糸が出てきており、クネクネと動いていた。
それは人間と聖獣……瑪瑙と女郎蜘蛛の力が一体化して、更なる高みの力を得た姿だった。
その力はアーティファクトの奥義、超越の境地に到達した者、『超越者』の証である力……『神器超越』だ。
聖獣と契約したアーティファクトに更なる力が発現し、元々ある能力も格段にパワーアップする。
オーバードライブしたアーティファクトの力は凄まじく、その力を誤って使うと人間界と精霊界の二つの世界の均衡を崩しかねないと言われている。
そして、今そのオーバードライブの使い手が目の前にいる。
俺は三年前に瑪瑙と出会って戦った時と同じ絶望感を再びこの身で受けていた……。
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『神器超越』は卍解みたいなものだと思っていただければ幸いです。
まだ天音たちはその地点まで到達していません。
これからシンクロ率を上げて強くなっていきます。




