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AO 《アーティファクト・オーバードライブ》  作者: 天道
第1章 運命の召喚と契約編
25/47

第21話 因縁の再会

ようやくバトルが始まります。

ここからまた話が長くなります。

雷花さんの感じるたくさんの電磁波を辿って走ってみると、そこには武装をした十数人の聖霊狩りの小隊がいた。

その手には聖獣やアーティファクトの力を封じる特殊な魔法が込められた弾丸を秘めたマシンガンが握られていた。

聖霊狩りは聖獣を狩る為に裏世界で違法に取引をしている特殊な武器を使っている。

人間である俺たちの体に当たるのはもちろん、もし一発でもアーティファクトに当たれば中にいる契約聖獣にも大きな痛手を負わせてしまう。

ここは俺の霊操術で先手を打ち、その間に一気にみんなで攻めるか。

そう考え、鳳凰剣零式を担ぎながら左手で印を結んだ。

「天音!ここは私と銀羅に任せて!」

「えっ?」

先陣を切って聖霊狩りに向かおうとしたが出鼻をくじかれ、千歳に肩を叩かれて止められた。

「下手に体力と霊力を使うぐらいなら私が戦うわ。銀羅、妖銃変化よ!」

『おう!遂にお披露目だな!』

妖銃変化……?

え、ちょっと待て……確かそれって先日言っていた無幻九尾銃の新たな力のことか?

千歳は無幻九尾銃の銃身を交差させると、銃全体に青い狐火が発火して強い光を帯びた。

「無幻九尾銃、妖銃変化!!」

二丁拳銃だった無幻九尾銃が一つに合体すると、六つの銃身が束ねられた機関砲・ガトリングガンとなった。

「弐之型、ストームガトリング!!!」

無幻九尾銃は姿形や能力を変える形態変化を持つアーティファクトで銀羅曰く、千歳との絆の力が高まればまだまだ沢山の銃器に変化出来ると言っていたが、実際に間近で見るのは初めてだった。

でもまさかガトリングガンだとは……あれってもはや銃器と言うか兵器だよな?

「ガ、ガトリングガンだと!?」

「ば、馬鹿な!生徒如きがそんな危ないアーティファクトを……」

「に、逃げ……」

聖霊狩り達は千歳は満面の笑みを浮かべながらストームガトリングを両手でしっかりと持ち上げて構え、引き金に指をかけた。

「Ready……Start!」

束ねた六つの銃口から次々と妖炎弾が発射される。

ガトリングガンは大量の弾丸を使い、給弾・装填・発射・排莢をサイクルを繰り返すことによって連続射撃を行うことが出来る。

つまり……対多数の戦闘にうってつけの強力な銃器で俺が鳳凰剣零式や霊操術を使わずとも敵を排除出来ている。

ちなみにガトリングガンの弾薬である狐火の弾……『妖炎弾』は千歳の精神力と銀羅の妖力で常時精製されている。

大妖怪である九尾の妖狐は千年をかけて作られた妖力を貯めている器は大きく、そう簡単に妖力は切れない。

心配なのは元虚弱体質の千歳だったが本人曰く、もし精神力が切れそうだったら俺の愛の言葉で全快になるらしい……本当にこの子は人間なのか?

好きな幼馴染だが、実は聖獣の血でも継いでいるんじゃないのかと疑ってしまう。

ようするに色々条件はあるが千歳と銀羅の無幻九尾銃の弾薬の数は……限りなく無限に近い。

まるで横殴りの大雨のように発射される妖炎弾に聖霊狩り達はなすすべなくその身に激痛と熱さが襲いかかる。

それでも反撃しようとした聖霊狩りに対しては……。

「雷光激震……サンダー・インパクト!!」

雷をその身に宿し、身体能力を向上させて戦陣のど真ん中に舞い降りた雷神の申し子である雷花さんが相手をする。

雷花さんはトールハンマーで思いっきり地面を叩き、既にトールハンマーの内部に蓄えた雷電が一気に放出される。

雷花さんを中心に雷撃が四方八方に飛び、その全てが聖霊狩りに襲いかかり、感電させて気絶させる。

あっという間に先発隊と思われる十数人の聖霊狩りを戦闘不能にさせ、二人は満足したようにハイタッチを交わす。

「雷花、グッジョブ!最高の雷だったわ!」

「千歳も。そのガトリング……とってもクールだよ」

互いに褒め称えてこれからの戦闘へのモチベーションを上げると、二人は俺があげた回復の飴玉を一つずつ取り出して口の中に入れ、体力を回復させる。

そんな二人を見て俺と恭弥は黄昏ていた。

「……俺たち、出番なかったな」

「そうだな……」

聖霊狩りを倒そうと思った矢先に千歳と雷花のタッグで一掃してしまった。

中距離と遠距離の攻撃を得意とする無幻九尾銃の千歳とオールラウンダーのトールハンマーの雷花さん……この二人、ではなく銀羅とトールを含めた四人ははもしかしなくても良いコンビなのかもしれない。

「もうあの二人だけで聖霊狩りを殲滅出来るんじゃね?」

「いや、あいつらはせいぜい下っ端だ。もっと上はいる……例えば……」

鳳凰剣零式に込めて大きな炎を生み出し、振り向くと同時に横に鋭く振ると欠けた月の形をした炎の刃が飛ぶ。

「貴様のような外道に堕ちた者だ!」

蓮宮流神霊術の鳳凰孤月斬を近くの物陰に向けて放つと無数の糸が現れて炎の刃を貫き、炎が空中に霧散する。

霧散する炎の中、こちらに向かって一つの影が近づいてくる。

その影は女で横一文字の大きな傷跡があり、茶色の鋭い瞳が俺を睨みつける。

「へっ……三年ぶりだなぁ、小僧!!!」

その女の傷は俺が三年前に刀剣の鋭い刃で付けた傷……間違いがなかった。

俺の……否、俺たち蓮宮の憎き仇敵である聖霊狩りの女!

「瑪瑙……!!!」

指先から蛇のように動く無数の糸が生えていて、瑪瑙の周りを守るように巻きついていた。

あれは瑪瑙が持つ高い攻撃力を秘めている恐ろしいアーティファクトだ。

更に鳳凰剣零式を握る力が強くなり、みんなを後ろに下がらせながら瑪瑙から眼を離さずに睨みつける。

「やっと会えたなぁ……小僧……少しは強くなったか?ん?」

「霊煌捌式・神眼……生きとし生けるものの全てを見通せ、霊操八十二番『肉眼』」

静かに呟きながら神眼を発動し、瞳の色を赤く染めながら瑪瑙の体を見る。

霊操八十二番の肉眼はレントゲンのように生物の臓器や血管などを見る事が出来る。

瑪瑙の両腕は俺が三年前に切り落としたが、その直後に瑪瑙の仲間と思われる奴らが瑪瑙と一緒に腕も回収して逃げた。

しかし、今瑪瑙の腕は人間の体ではなく、中には様々な機械の部品や無数のコードが詰まっている義手で体と繋がっていた。

「三年も経てば強くなれるさ……それより、貴様の腕……指先がアーティファクトになっているが、機械で作られた義手だな?俺が切り落とした腕はどうした?」

俺は敢えて瑪瑙の挑発を挑発で返して尋ねた。

「てめえに切り落とされた腕はな……鬼那に喰わせてやったよ!」

「何……!?」

璃音兄ちゃんの情報だと瑪瑙の契約聖獣は女郎蜘蛛……まさかその女郎蜘蛛に喰わせたと言うのか!?

「切り落とされた腕を繋ぎ直しても前みたいに動けるわけはないし、違和感も出てくる……だからよぉ、てめえをぶち殺すために機械の義手を手に入れたんだよ!!」

俺を殺すために機械の義手を……やはり瑪瑙は悪しき心を持ち、修羅の中でしか生きられない人間と言うことか。

「女郎蜘蛛の鬼那は人食い妖怪でもあるからなぁ、私の腕を美味しそうに食ってたぜ。そしたら私に永遠の忠誠を誓ってくれたんだよ!ヒャハハハ!!感謝するぜぇ、そのお陰で私と鬼那のシンクロ率も格段に上がったんだよ!!」

両腕を切り落とした張本人である俺が言うのもなんだけど、狂ってる……自分の腕を契約聖獣に喰わせて笑っているなんて……。

人間と契約聖獣の絆の強さ……通称『シンクロ率』は様々な形で高まっていく。

それは人間同士の付き合いと同じで交わす言葉、共に過ごした時間、互いへの想いで少しずつ高まっていくものだ。

もちろんシンクロ率の向上には性格や好みの異なり、人や聖獣によって様々だ。

でも、自分の肉体の一部を契約聖獣に喰わせてシンクロ率を高めるなんて狂気の沙汰じゃない……。

いや……もしかしたらそれは俺の行動によって引き起こしてしまったもの……三年前のあの戦いは俺や師匠だけでなく、瑪瑙自身の人生を狂わせてしまったのかもしれない。

「そうか……そこまで堕ちたのなら、俺は貴様を女……否、人間とは思わない。平和に暮らす人と聖獣に仇なす悪しき存在として、貴様を倒す」

だからこそ、この手で決着をつける。

「ハッ!私を殺すか……良いねぇ、そうでなくちゃ私の復讐の意味がねえからな!」

「……何を勘違いしている?いつ俺が貴様を殺すといった?」

「何だどぉ……?」

瑪瑙は俺の言葉に耳を疑って眼を見開いた。

「俺は貴様のような殺人者でも復讐者でもない……人と聖獣を守る、守護者だ。だから、俺は貴様を殺すつもりはない。貴様を倒して、法の裁きを受けさせて罪を償わせる」

「てめえは馬鹿か?人を殺す覚悟もねえ奴が私に勝てると思っているのかぁ?」

「確かに俺は人を殺す覚悟もない臆病者だ……でも、俺はみんなと約束したんだ。守護者として、蓮宮十三代目当主として最後まで戦うと!!!」

封印された記憶が戻った直後は師匠の左腕を奪った瑪瑙を殺そうと思っていた……しかし、千歳とみんなのお陰で俺は復讐者ではなく、守護者として戦う決意を固めた。

現にこうして仇敵の瑪瑙が近くにいても自分を失わないで冷静なままで済んでいる事は大きな事だと思う。

「ケッ、つまらねぇ奴だな……まあ良い、てめえはこの手で苦しませながらぶっ殺してやるよ。そこにいるお仲間と一緒にな!!」

「そうはさせない……もう二度と、貴様に俺の大切な人達を傷つけさせない!!」

肩に担いだ鳳凰剣零式の切っ先を瑪瑙に向ける。

掛け替えのない俺の愛する人と大切な仲間を必ず守る、その為にも……。

「白蓮、改めてお前にお願いする。俺に力を貸してくれ!」

俺の大切な相棒である白蓮に共に戦ってくれる事を願うと、鳳凰剣零式から白蓮の声が弾む。

『何当たり前な事を言ってるの?僕は天音の相棒だよ。天音の為ならこの鳳凰の力をいつでも力を貸すよ!』

「ありがとう……白蓮!」

鳳凰剣零式の刀身を軽く撫で、次に後ろにいる千歳達に話しかける。

「千歳、恭弥、雷花さん。初めに言っておく。瑪瑙は強い……たとえ女子供でも容赦のない悪人だ。だから、油断をしないでくれ。もし危ないと思ったらすぐに離脱しろ、良いな?嫌だとは言わせない」

「嫌に決まってるじゃない」

無幻九尾銃のストームガトリングをいつもの二丁拳銃に変化させた千歳は即答し、俺の横に立つ。

「悪いけど、私は天音を見捨てて離脱するつもりはないから。最後まで天音に付き合うよ」

千歳は相変わらず俺の為に動くので最初から共に戦うつもりだった。

「千歳に同感だ」

今度は反対側に恭弥が立つ。

「天音、俺はお前のダチであると同時にお前には返しきれない大きな借りがある。お前を守る為に一緒に戦わせてくれ」

恭弥の言う『大きな借り』とは、去年の秋、ちょうど霊煌紋を受け継いで少し経った頃に恭弥と恭弥の母親代わりのお祖母さんがある事件に巻き込まれた。

俺は恭弥と共にその事件を解決してお祖母さんを無事に助けた。

俺はあまり気にしてないのだがその時の恩を恭弥はずっと返したいと思っているのだ。

そして、最後に雷花さんが恭弥の隣に立つ。

「私は……ただみんなと一緒にいて、楽しい時を過ごしたい。だけど、みんなとの楽しい時が崩れるなら……私はみんなを守る為に戦う」

みんなとの楽しい時か……なるほど、雷花さんにとって俺達と過ごす時間、喫茶部での部活動が大切なのか。

俺達にとってもその時は心の底から楽しんでいるし、大切な時間だ。

千歳達はそれぞれの思いを胸に俺と共に戦う事を望んだ。

アーティファクトからも共に戦う意思を感じ、軽く溜息をついて俺自身も覚悟を決めた。

「分かった……みんなの気持ちは受け取った。やるからには全力であいつを倒すぞ」

「ええ!」

「ああ!」

「うん!」

「よし……行くぞ!!」

横一列に並んでいた俺たちは以前から考えていたフォーメーションを取る為に並び替えた。

まずは基本的なノーマルフォーメーションで、前衛に俺と恭弥、後衛には千歳と雷花さんを配置する。

対する瑪瑙はその場で動かずにまるで糸で人形を動かすようにクネクネと指を動かして不気味な笑みを浮かべた。

「かかってこい……小僧共。『死弦』と畏れられた私の力を味合わせてやるよぉっ!!」

そして、指の動きと連動するように無数の糸が獲物を狙う狩人のように一斉に動き出した。



side???


同じ頃……図書館城の地下にあるアリスティーナが眠る部屋の前に一人の侵入者が現れた。

その者は星桜学園の生徒でも教師でもなかった。

その男の手には魔法陣が描かれた古い本……魔導書が握られており、強い魔力を秘めていた。

「ここがあの伝説の魔法使いが眠る場所ですか。確かに強い魔法がかかった扉だ。これは解くのに苦労しそうだ……」

これから学者が難しい問題を解くのを楽しみにしているかのように男は笑みを浮かべて扉に近づこうとしたその時、扉の前に赤い魔法陣が現れた。

『貴様、魔術師か……』

赤い魔法陣から炎が竜巻のように吹くと、中からアリスティーナに仕える十三の精霊の一柱、屈強な男の姿をしたサラマンダーが現れる。

「これはこれは……お初にお目にかかります、火の精霊・サラマンダー」

男はサラマンダーを見ると敬意を表するかのように頭を下げた。

『何をしに来た……命が惜しくば今すぐ立ち去れ。さすれば何もせずに返してやろう』

「そうはいきません。私は仕事でアリスティーナの身柄を手に入れますので」

『何が目的だ……?』

「かつて……大戦でその無類なき魔法を操り、多くの人民を救った英雄と呼ばれし歴史に名を残した大魔法使い……眠りについているが、その体を調べれば新たな魔法を発見することが出来る!更に、千年も生きながらその見た目が変わらない不老不死の秘密も解き明かすことが出来る!!」

つまり、この男は眠っているアリスティーナの肉体を奪い、実験材料にしようとしている。

男の狙いを知ったサラマンダーはビキビキと顔の筋肉を強張らせ、体から怒りの炎が漏れ出す。

『貴様のような腐った人種はアリスが特に忌み嫌う存在……アリスに変わり、貴様を地獄の業火で焼き尽くしてくれる』

「良いでしょう。まずはあなたを弱らせて有益な実験材料にしてあげましょう!」

男は魔導書を開くと、開いたページから大量の水が現れ、それが複数の螺旋状に渦巻いてサラマンダーの周りを囲む。

「あはははは!火は水に弱い……さあ、このままあなたの力を弱らせて差し上げますよ!」

そして、水の螺旋が一斉にサラマンダーを呑み込み、そのまま大きな水の球体の中に閉じ込めた。

火は水によって消える……これは化学的に当たり前の事だが、水の球体に閉じ込められたサラマンダーは……。

『人間にしてはなかなかやるな』

消える事なくのんびりとしながら男を少し褒めていた。

『だが……』

サラマンダーの体から眩い赤い閃光が放たれると、水の球体の水温が急激に沸騰し、ボコボコと大きな音を立てながら一瞬にて爆発してしまった。

『我には効かん』

水は爆発と共に大量の水蒸気となって空気中へと散っていき、サラマンダーは静かに床に降りた。

「ば、馬鹿な……あれだけの水を受けて何ともないだと……!?」

水は確かに火を消す事が出来るが、高温の熱に触れればたちまち蒸発してしまい、水蒸気となる。

今回の場合は大量の水が高温の炎によって一気に蒸発されて、火山などで発生する水蒸気爆発が起こった。

火の精霊であるサラマンダーは常に高温の炎を宿している為、その力の一端を解放すれば水はあっという間に蒸発してしまう。

『我に痛手を与えたければ、最低でもウンディーネかエヴァ並みの水か氷の力を使ってこい』

サラマンダーが口にした『ウンディーネ』と『エヴァ』と言う名前は同じアリスティーナに仕える他の十三の精霊の事だが、今はアリスティーナと共に眠りについている。

『さて、貴様は我の一番大切な人を狙った……その報いを受けるが良い』

「ひぃっ!?く、来るな!来るなぁあああああっ!!」

男は魔導書に書かれている水の属性を中心とした魔法を次々と放つが、サラマンダーには無力で、炎を纏った右手の親指と中指の腹を合わせる。







『咎人に地獄の炎を……業火の爆炎 (ヘルフレイム・ブラスト)』







合わせた二つの指を弾かせてパチン!と良い音を鳴らした次の瞬間、男は灼熱の炎に包まれて

「がっ、あっ……?」

業火に包まれたその身体が熱さを通り越した凄まじい激痛に襲われ、訳が分からぬままに気絶してしまった。

一瞬による爆炎の攻撃に男の体に大きな火傷を負ってしまったが、サラマンダーは助けるつもりはなかった。

この男は魔術の為に大きな罪を犯している……少なくとも、人や聖獣を犠牲にした魔術なども行ってきただろう。

『まだ息はあるな……しかし、魔術師とも言えど人間がこれほど火傷を負ったら生きるのは無理だろう』

生物は体に皮膚の組織が壊れるほどの大きな火傷を追うと死に至る事がある。

かろうじて男は生きているが、処置をしない限り見込みはなかった。

『せめてものの情けだ。一思いにあの世へ送ってやる』

サラマンダーは最後の慈悲として男を殺す為に炎で作った剣を構える。

火傷で気絶をしている男の側に近づき、首に向かって炎の剣を振り下ろそうとしたその時。

「悪いけど……殺させないわ」

パァン!

凛とした声と共に何かが放たれる音が鳴り、その直後にサラマンダーの持つ炎の剣が弾かれて地面に突き刺さった。

炎の剣の隣には一本の矢が落ちており、炎の剣を弾いたものの正体だった。

そして、その矢を放ったのは蓮宮の巫女装束に身を包み、左手に綺麗な真紅の長弓を構えた蓮宮花音だった。

地上で双子の弟の璃音と聖霊狩りの鎮圧をしていたが、アリスティーナを狙う魔術師の存在に気づいて急いでやって来たのだ。

『貴様は……蓮宮の巫女か』

「蓮宮花音。十三代目当主の天音のお姉ちゃんよ」

『何故邪魔をした……?』

「その男は聖霊狩り、今回襲ってきた死弦団の魔術師なの。裏の世界でもそこそこ名の知れた奴で相当な悪さをしていたのよ」

『それなら尚更ここで殺すべきでは?』

「……気持ちは分かるわよ。でも、そいつから聞かなければならない事がたくさんあるの。その男からの情報で他の聖霊狩りや悪の魔術師を捕らえることができるかもしれない」

花音は七星剣に属する人間として、世界に蔓延る悪を倒す為に日夜璃音と共に戦っている。

その為、少しでも有益な情報を手に入れて次の作戦に繋げるようにするのだ。

『……分かった。今回は蓮宮の巫女に免じて引こう』

サラマンダーは床に突き刺さった炎の剣を消して男から数歩下がった。

花音はすぐに男に駆け寄り、長弓を床に置いて両手に霊力を込める。

「うわぁ……これは酷いわね。とりあえず天音の飴玉を食べさせて、後は私の霊操術の応急処置で……」

火傷だらけの男をどうやって治療するか考える花音。

霊煌参式の治癒を使えれば何も問題はないのだが、霊煌霊操術は当主以外の人間が会得するのは極めて難しい為に使うことができない。

ひとまず自分に出来ることを精一杯やろうとした花音だが……。

『……我がやる』

「え?」

下がったサラマンダーが綺麗な薄い緑色の炎を手から出しながら男に近づく。

呆然とした花音はサラマンダーの行動に口出しできず、そのまま薄い緑色の炎を男に浴びさせる。

『癒しの螢火 (ヒーリング・フレア)』

緑色の炎を男に浴びさせるとまた火傷させるどころか、たちまちその火傷が治っていき、元の皮膚となった。

「治癒の炎……!?」

それは霊煌参式の治癒と同等の力を持つ癒しの魔法だった。

治癒の炎に包まれた男はサラマンダーに焼かれる前の状態に戻り、呼吸も安定して眠っていた。

『これでいい……後はお前の好きにするがいい』

そう言うとサラマンダーは花音に背を向けて扉に向かって歩いて行った。

「どうして、こいつを治したの?」

花音は一度は焼いた男に治癒の炎を施したサラマンダーに尋ねた。

『気まぐれだ……』

サラマンダーはそう言い残し、自ら展開した魔法陣の中へ消えていった。

「気まぐれね……とりあえず、ありがとう」

消えていったサラマンダーに礼を言うと花音は右手で印を結び、男に向ける。

「さて、こいつを縛って地上に行きますか。敵を戒め、捕らえよ。霊操十八番『縛鎖』!」

花音の掌から霊力で作った鎖を放ち、男の体を縛る。

これで鎖を構成する霊力が消えるまで男は縛られたままとなる。

花音は男の首根っこを掴んで両腕と両脚に霊力を込めて霊操術を発動する。

「力を高めよ、己が力と速さ!霊操二十五番『剛力』!霊操二十六番『俊足』!」

両腕と両脚の力が大幅に上がり、男を軽々と持ち上げて床に置いた長弓を持った。

「よし、早く地上に戻って愛しの璃音の元に行かないと!!!」

何やら危ない発言をしながら霊操術で力が上がった脚で走り出し、地上に向かって部屋を後にした。





千歳と雷花の戦いどうでしたか?

次回から瑪瑙とのバトルが始まります。

サラマンダーについてですが、AGとは違いアリスの精霊としてのキャラを着目してみました。

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