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AO 《アーティファクト・オーバードライブ》  作者: 天道
第1章 運命の召喚と契約編
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第19話 火の精霊

今回アリス先生は登場しません。

まだお休み中なので。

恭弥から連絡を受けた翌朝、学園長の許可を貰ってアリスティーナのいる場所に行く事になり、俺は千歳と璃音兄ちゃんと花音姉ちゃん、白蓮と銀羅と一緒に星桜学園の図書館に向かった。

と言っても星桜学園の図書館はただの図書館では無い。

そこは頑丈な石造りで出来た中世ヨーロッパを連想させる巨大な城だった。

その城は星桜学園の名物施設で文字通り『図書の城』である図書館城だ。

昔、どこかの国の王様が日本のこの地に城を建てた。

その王様は大の本好きで、その城を住まいではなく自分が世界中から集めた貴重な本の倉庫にし、次々と本を入手しては城に保管していった。

それは王様の死後も城には世界中から本がどんどん集められ、やがて城を含めた広大な土地にこの星桜学園に建てられ、既に数え切れない数の本が蔵書されたその城は図書館となり、現在にいたる。

白蓮と銀羅は膨大な本の世界に眼を輝かせて早速探検に出かけてしまった。

「相変わらず大きいね、このお城は……」

「世界中から色々な本を集めているからね。後で古書を探してみるか」

「それ、読めるの……?」

「漢字なら読めるよ。俺が出来ないのは英語だから」

英語は絶対に読めないけど漢字なら古文だろうが漢文だろうが問題なく読める。

伊達にずっと蓮宮神社で文献を読み漁ってないからね。

「天音ったら……書道ができて古文も読めるなんて、根っからの日本人ね」

「あはは。そうだな。天音は絶対に他の外国には住めないな」

「英語や他の言語……さっぱりだからね」

みんなが俺が日本語しかできない事に苦笑を浮かべていると俺は頬を膨らましてそっぽを向いた。

「むぅ……みんな俺を馬鹿にして……」

「じょ、冗談だよ天音!」

「そうだぜ。それにしても天音はたまに生まれる時代を間違えたんじゃ無いかと思うぐらいに古書を楽々と読めるよな」

「大学の古典の教授になれるかもね」

「もう良いよ……気にしてないから。それより、恭弥が指定した場所はここだよな?」

恭弥がくれたメールには図書館城の内部地図が添付されていて、小さな星のマークが付けられた所に隠し扉があると言うのだが……。

「壁だね」

「壁だな」

「壁ね」

そこは変哲も無いただの壁で本当に隠し通路があるのかどうか疑いたくなるほどにただの壁だった。

でも恭弥が送ってくれたメールは間違うはずが無い。

それならば別の視点から見るだけだ。

「ただの壁ねぇ……霊煌捌式神眼」

瞳と目の周りの皮膚に蓮の模様が浮かび上がり、眼の力が上がる。

それに加えて目に見えない力の流れを読み取る霊操術を発動させる。

「時空の流れを見定めよ。霊操八十四番『天眼』!」

瞳の色が黄色に変わると今まで目に見えなかった不思議な流れが見えてくる。

天眼は時間と空間……この世にある全ての『流れ』を明確に見ることが出来る霊操術。

目の前にある壁は他の壁とは異なり、不思議な術で塞がれており、更に壁の向こうには風が流れている。

そして、壁には普通には見えない文字が書かれており、それを別の霊操術で見る。

「ここ、隠し扉だな。となると次は……隠されし万象を解きあかせ、霊操八十一番『法眼』!」

瞳の色が黄色から白色に変わると無地の壁に日本語で見えない文字が浮かび上がる。

その内容を目にし、この隠し扉を開けるヒントを得る。

「そうか、そういう事か……白蓮!来てくれ!」

『ん?なーに?』

本を読んでいた白蓮は本を閉じて銀羅と一緒に来る。

「鳳凰剣零式だ。アーティファクトがこの扉を開ける鍵だ」

『どういう事?』

「見えないけど、この隠し扉に書いてあるんだ。『人と聖獣の絆の証を掲げよ』ってね」

『そうなの?』

「ああ。だから行くぞ。契約執行!」

蓮煌を鞘から抜いて隠し扉に向けて契約を執行し、白蓮と蓮煌を一つにする。

大剣の鳳凰剣零式を逆手に構え、壁にゆっくり近づけると壁一面に魔方陣が浮かび上がり、光ると同時に消えてしまった。

「おお、消えた消えた」

「天音ナイス!」

「グッジョブだ!」

「さあ、早く行きましょう!」

消えた壁の奥は地下へと続く階段があり、俺は鳳凰剣零式の契約を解除して蓮煌を鞘に納めて白蓮を頭に乗せる。

階段をゆっくり降りてみるが先は真っ暗でひとまず照らす光を放つ。

「揺らめけ、夜を照らす灯り……霊操十五番『灯火』」

右掌に球状の霊力を込めると、フワフワと浮く火の玉が出来上がる。

火の玉は優しく階段を照らし、俺の周りを浮いていく。

「おおっ!?火の玉お化け!?」

「じゃあ俺たちも。霊操十五番『灯火』!」

「私も、『灯火』」

璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんも同じように霊力を込めて火の玉を作り、階段を明るく照らす。

『それなら私も狐火を照らすか』

負けじと銀羅は九本の尻尾の先に青い狐火を灯して更に明るくする。

階段を降りながら進む中、千歳は璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんと話をする。

「皆さんも霊操術を使えるんですね」

「天音ほどじゃねえよ。霊煌紋がある分天音は百以上の霊操術を使える資格があるからな」

「どういう事ですか?」

「蓮宮の霊操術は全部で百以上もあるんだけど、その半分は天音の持つ十二の霊煌霊操術を経由しないと使えないの。霊煌霊操術は蓮宮歴代当主が作り出した守護者達の誇りなのよ」

「霊煌霊操術は歴代当主が自分の全てをかけて誰かを守る為に戦う時に発現する守護者の魂の輝きそのものなんだ。だから霊煌霊操術は霊煌紋を受け継いだ当主にしか使えないんだ」

千歳達は蓮宮の霊操術について話している。

去年、霊煌紋を受け継いだけどまだ俺は全ての霊操術を会得出来ていない。

霊煌霊操術は大体使えるように修行をしたが、百以上もある霊操術はまだ修行の時間が足らずに会得できていない。

もっとも、霊操術の全てが判明している訳ではないのだ。

中には長い歴史の中でその存在が不明になったものや内容が書かれた書物が消えてしまったなど、欠番してしまった霊操術がある。

「頑張らなくちゃな……」

俺は一日でも早く歴代当主に負けない立派な当主になりたい。

当主としての心はもちろん、人と聖獣を守るために戦う力は必要だ。

だから……一つでも多くの霊操術を会得して必ず強くなる。

「階段はここで終わりか……この先はん?」

階段を降り終えると広い部屋に入るがそこには目を疑う光景が広がっていた。

部屋一面には全長2メートルぐらいはある大きな土人形が壊れ、焼き焦げて全て倒されていた。

「何これ……?」

『これは……土人形か?』

「こいつはゴーレムだな。魔力で動かす土人形だ」

「ざっと数えて100体……これ全部恭弥君と雷花ちゃんたちが片付けたみたいね」

ゴーレムは土や石で作った土人形を魔力で動かして操るものだ。

戦いを司る武神と軍神である悟空とトールがいたから難なくゴーレムたちを倒せたみたいだけど、これだけの数のゴーレムを操れるほどの魔法を使えるのはそうそういないはずだ。

しかもゴーレムは宝などの大切な物を守る門番としての役割を持つ。

つまり……。

「この先にアリスティーナがいる……」

大魔法使いのアリスティーナならこれぐらいの魔法を使えるのは造作ないことだ。

この先にアリスティーナがいる可能性が益々深まってくる。

「急ごう、恭弥たちが待ってる」

「うん!」

ゴーレムたちの残骸をかき分けて部屋の奥にある通路に向かって走り出した。



それから約三十分後……特に障害もなく地下通路や部屋を進んで行った先には呆れる光景が広がっていた。

「お前ら……何してるの?」

「なーに、イチャイチャキャンプをしているのよ」

やっと恭弥と雷花さん達と合流することが出来たがそれは目を疑う光景だったのだ。

まず悟空とトールは酒盛りをしていたのかワインやらビールが散乱していて、二人は肩を抱き合いながら仲よさそうに寝潰れていた。

そして恭弥と雷花さんはキャンプのテントの前で仲良さそうに二人で世界の名所や世界遺産のガイドブックを手に話していた。

「千歳。お邪魔だったかな?」

「お邪魔ね。帰りましょうか」

「しゃあないな。帰って天音の菓子を食うか」

「私は流星の毛並みの手入れをしようかな?」

みんな一緒に元来た道を戻ろうとすると、慌てて恭弥と雷花さんが駆け寄る。

「待て待て待て!誤解だ誤解!俺は雷花と暇つぶしに話をしていただけだ!」

「そ、そうだよ……恭弥がよくお祖父さんと一緒に世界中の色々なところに行っているからその話を聞いただけで……」

二人は俺たちを引き止めて必死に否定をしているが顔はリンゴのように真っ赤になっていた。

「恭弥、俺は応援するぜ」

ニヤニヤ顏で恭弥の肩を叩く。

「天音てめぇっ!いつかの仕返しかこの野郎!?」

え?恭弥は何を言ってるの?

そんなの……当たり前じゃないか!

いつも俺と千歳の仲で弄りまくっている恭弥だから偶には仕返しをしないと気が済まないからな♪

「って、そんな話をする暇はなかった……天音、あの扉を頼む」

「扉?」

恭弥が指差した方にはいかにも何かが眠っているような巨大な扉があった。

すぐにもう一度天眼を発動して扉を見ると扉自体に巨大な魔法陣が刻まれて見たことない複雑な術式が組み込まれていた。

「どうやら反射の魔法がかかっていてどんなに強い攻撃を加えてもはね返ってくるんだ」

「反射の魔法?」

「ああ。如意棒の重たい打撃も同じ威力の衝撃波ではね返るし、トールハンマーの雷撃もそのままあたり一面に降り注ぐし……もはやお手上げだ」

如意棒とトールハンマーの攻撃でもビクともしないとは驚きだ。

これじゃあ俺と白蓮の鳳凰剣零式も千歳と銀羅の無幻九尾銃も、璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんのアーティファクトも効かないだろう。

アーティファクトの攻撃をはね返すほどの強力な魔法……本当に凄い魔法使いなんだと改めて思い知らされる。

「恭弥、頼むって言うが俺にどうしろと?」

「どうやらこの扉、蓮宮の人間じゃないと開かないみたいだからな」

「何?」

「見ろよこの石碑。ここに刻まれてる紋章……お前んちのだろ?」

恭弥が指差した方には小さな石碑があり、そこには俺の神子装束にもある蓮宮の紋章が刻まれていた。

「あらま本当だ。これ、蓮宮の紋章だ」

「だよな?それに紋章の下にあるこの文字……『壱』に心当たりはないか?」

石碑には蓮宮の紋章の他に『壱』の文字が刻まれていた。

石碑には普通文章などが刻まれているはずだがこれ以外には何も刻まれていない。

「蓮宮の紋章に壱……?あっ!」

ぽんと手を叩くと全てが繋がった。

そう言う事か……この扉を開くには……。

「霊煌壱式か……」

蓮宮を生み出した創始者である、蓮宮初代当主が作り出した霊煌霊操術だ。

現在存在する百以上もある霊操術の始原で唯一無二の力を発揮する。

「なるほど、壱式でこの扉を破れって事か……ん?」

蓮煌に手をかけようと思ったが、ある事が頭を過ぎり踏みとどまった。

待てよ、この扉が霊煌壱式でしか開ける事が出来ないんなら……。

キィン!

鞘から抜こうとした蓮煌を再び鞘に収めて体を伸ばしてとびらにせをむける。

「よし、帰るか」

「えええええっ!?天音、どうして!?」

帰ろうとする俺に驚いた千歳が腕を掴んで止める。

見るとみんなの顔も驚いた表情をしていて、一応理由を話す。

「思ったんだけど……別に扉を開けなくてもいいんじゃないかな?」

「どうして?」

「だって、この扉は俺にしか開けられないんだから無理して開けなくても、このまま反射魔法で聖霊狩りからアリスティーナを守ってもらったほうが良いんじゃないか?」

この理由に一同「あっ……」と言葉を漏らしてポンと納得したように手を叩いた。

「確かにそうだよね……狙うものを強固な守りで守ってもらったほうがこちらとしては戦いやすいからね」

「如意棒とトールハンマーでも破れなかったからな。確かに一理あるわ」

「下手に開けるよりは安全だね……」

「一度でも伝説の魔法使いの姿を見てみたかったが、仕方ないな」

「そうね。それに眠っているなら無理に起こす必要は無いわよね」

この強力な魔法で守られた扉の向こうにアリスティーナがいるなら無理に破って開く必要は無い。

『黄昏の魔法使いか……』

『どれほどの力を持っているのか知りたかったがな……』

白蓮と銀羅はアリスティーナがどんな魔法使いなのか気になっていたが、開けるわけにはいかない。

「それじゃあ、帰るか。アリスティーナさん、さよなら」

何故か蓮宮と縁があるこの扉の向こうにいるアリスティーナさんに軽く手を振り、恭弥達のキャンプ器具を片付けて退散しようとしたその時。







『ほう……流石は蓮宮の継承者。当主に相応しい中々の洞察力だな……』







突然、扉の前から不思議な低い声が響いた。

「……今、誰か何か言った?」

『ううん』

「私、そんな声しないよ』

『私もだ』

「ってかどっから響いた?」

「分からない……」

「人の声じゃないな……」

「誰なの?出てきなさい」

俺たちは瞬時に警戒してそれぞれが武器を構えると扉から赤く光る魔法陣が現れた。

魔法陣から炎が吹き荒れ、中から一つの影が姿を現した。

それは屈強な肉体を持ち、燃えるような赤い髪を持つ勇ましい男性のような姿をした聖獣だった。

『我はアリスティーナに仕えし、十三の精霊の一柱、火の精霊・サラマンダーだ』

「火の精霊、サラマンダー……!?」

サラマンダーからは敵意が感じられず、一先ず警戒しながら蓮煌から手を離す。

サラマンダーは世界を構成すると言われる四大元素の火を司る精霊で、小さなトカゲやドラゴンの姿をしていると言われているが、このサラマンダーは人の形をしていた。

『蓮宮の当主よ、名は?』

「蓮宮十三代目当主、蓮宮天音……」

『十三代目……織音から二代変わったのか』

蓮宮織音。

それは俺の曾祖母ちゃんで蓮宮十一代目当主だ。

「曾祖母ちゃんを知っているのか?」

『曾祖母ちゃんと言うことは……お前は曽孫と言う訳か。あいつはもう死んだのか?』

「……俺たちが生まれる前に亡くなりました」

曾祖母ちゃんは俺や璃音兄ちゃんが生まれる前にこの世を去った。

だからどんな人だったのか親父達の言葉の中でしか知らない。

『そうか……五十年の間に蓮宮は色々あったらしいな』

「ええ。ところで、あなたはアリスティーナさんに仕えると言ってたけど、この扉の向こうに本当に……?」

『ああ。今はまだ我が同胞の精霊と共に眠っているが……時期に目を覚ます』

「それは本当なのか?」

『ああ。五十年前に受けた傷と呪いがようやく癒されたのだ。その時になったらお前の霊煌壱式でこの扉の封印を斬り裂け』

「……分かった。それから、一つ忠告だ。聖霊狩りが……」

『知っている。アリスに手を出す奴は容赦しない……もしこの部屋に聖霊狩りが来たら焼き殺してくれる』

サラマンダーは既に事情を知っているようで、瞳の炎を燃え上がらせ、拳を握りしめて強い炎を宿した。

何があってもアリスティーナを必ず守る……そう言う強い意思が感じられた。

「ふぅん……なるほど、そう言う事ね……」

すると千歳は何故か笑みを浮かべてサラマンダーを見つめた。

そう言う事ってどういう事だ?と思いながら一先ず、奴らの狙いのアリスティーナはこの扉とサラマンダーがいれば安心だ。

「ここは任せたよ、サラマンダー」

『任せろ……お前達は自分達の為すべきことをやれ』

俺達はサラマンダーの言葉を胸に頷き、聖霊狩りとの戦いを臨む為にキャンプ器具を片付けて扉を後にした。







扉を後にして俺達が居なくなるとサラマンダーは呟いた。







『あれが蓮宮の後継者か……やはり血だな、蓮姫にそっくりだ』




アリス先生はこの章の最後ら辺に出る予定です。

天音が瑪瑙を超える為に敢えて眠ったままにさせておきました。

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