表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AO 《アーティファクト・オーバードライブ》  作者: 天道
第1章 運命の召喚と契約編
22/47

第18話 七星剣

今回は天音が戦いの前の準備をします。

璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんから瑪瑙の復活と瑪瑙が狙う存在……伝説の魔法使い、アリスティーナ・E・トワイライトの話を聞いた俺たちは聖霊狩りを迎え討つための準備をしている。

恭弥と雷花さんは眠っているアリスティーナの所在を探しに向かった。

冒険家志望の恭弥は以前から調べていた星桜学園の歴史を元に探している。

雷花さんは恭弥の調べ物の手伝いをしている。

璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんは学園長と生徒会と話し合って対策を練っている。

千歳は何故か英語で何処かに連絡して銀羅と一緒に何かを取りに向かった。

いったい何を取りに行ったのか凄い不安になるが俺は蓮宮流の戦闘前の準備をする。

「さて……書くか」

学生寮の部屋にいる俺は実家から持ってきた書道の道具が一式を揃えて既に硯には削った墨、そして小さな長方形の紙が沢山ある。

ちなみに白蓮はテレビを見て楽しんだ後にスヤスヤと眠っている。

人間界に来てから色々と楽しんでいるみたいだ。

鳳凰がテレビを見るのはものすごく違和感があるけど、ツッコミ入れないでおく。

これから紙に文字を書いていくのだが、その前に墨の中にあるものを加える。

「霊煌伍式……」

小さな霊力から小刀を作り出して右手に持ち、刃を左掌に押し付けようとしたその時。

ガチャ。

「天音、何をやって……あ、天音!?」

「千歳?ああ、お帰り」

「お帰りじゃなくて、早まらないで!!」

「何が?」

用事を終えて帰ってきた千歳は何かを勘違いしているみたいで困惑しながら俺に近付いて小刀を奪い取ろうとする。

「何がって、ナイフで手を切ろうとしているじゃない!?」

ナイフじゃなくて小刀だけど今はどうでもいい。

これから文字を書くのに自決するわけがない。

小刀を軽く握りながら千歳の誤解を解いていく。

「ああ、これ?別に自決するんじゃないよ。墨に血を混ぜるだけだから」

「す、墨に血を!?何で!?」

「蓮宮の術の一つで、霊力の宿った血を墨に混ぜて札を作るんだ」

「札……?」

小刀の刃を左手に押し付けて傷を作り、血を流させる。

痛みはあるが、これは何回もやっているので慣れがあり、血を墨の中に入れる。

硯の中で墨の黒と血の赤が混ざり合い、少し不気味な赤黒い彩色となる。

そして、指先を墨に少し触れて霊力を流しえ霊操術を込める。

「受け継がれし血よ、守りの力を符に宿せ……霊操十七番『護符』」

墨に混ざった血の霊力が活性化し、墨に不思議な輝きが現れる。

小刀でつけた傷はすぐに治癒で治して元通りにし、右手の小刀を消して代わりに筆をとる。

「ふぅ……よし!」

気合いを入れて筆に墨を浸して整え、何も書かれていない札に文字と模様を描いていく。

小さい頃から護符を描くための練習は数え切れないくらいしてきた。

最近になってやっとスラスラと書けるようになり、一枚を三十秒ぐらいで仕上げることができる。

最初の一枚を書き終えて乾かす為に隣の机に置くと、千歳はそれを持って目を丸くした。

「凄い……こんなにも筆で綺麗に書けるなんて……」

「昔から書きまくったからね。小学校の時に書道コンクールで賞を取ったことあるし」

「流石は神社の子、と言うべきかな?」

「そんなもんかな?とにかく、瑪瑙が襲撃する前にこれを書き終えなくちゃ」

筆を動かすスピードを上げて護符を次々と書いていく。

「その護符……だっけ?何に使うの?」

「今回の戦いで何が起こるかわからない。他の生徒たちを巻き込まないようにみんなが避難する場所に守護結界を張るんだ」

「守護結界……?」

「避難場所……多分アリーナになると思うけど、そこにこれを張っていくんだ。そして敵が攻めてきたらアリーナを覆うほどの強力な結界を展開できて外部からの進入と攻撃を寄せ付けないんだ」

「それって凄いけど、下手すれば上級の魔法と同等だよね?動力源の霊力は足りるの?」

「そこは師匠が残してくれた霊操術で霊力を割り増しにして強化するよ」

「え?割り増し?」

「その前に早く書ききらなくちゃな」

きょとんとして頭に疑問符を浮かべている千歳を置いといて俺は筆を走らせた。

『ほう……凄いな、この符。平安時代の陰陽師が作ったものとは比べものにならないな』

銀羅は護符を見て感心しながらそう呟いていた。

そう言えば九尾の妖狐は少なくとも千年は生きているんだよな。

陰陽師は俺たち蓮宮にとっても大先輩にあたる人たちだから今度話でも聞いてみるか。



数時間後……虫やふくろうの声だけが響く暗闇の中、俺は学生寮を抜け出してアリーナに来ていた。

霊力を纏いながら壁や柱に俺の血を混ぜた墨で書いた護符を貼っていき、右手の薬指と小指を折りたたんで印を結び、霊操術を発動する。

「霊操十九番『聖域』……はっ!」

貼り付けた護符が一瞬の光を放つと消え、そのまま壁と柱の中に溶け込んでいった。

「ふぅ……よし、これで設置完了だ」

護符の設置と聖域の発動準備を終えると、その場に座り込んで柱に背を預ける。

短期間にかなりの霊力を使用するには体力と精神力が必要になるので今にも眠りそうなぐらいに疲れてしまった。

でもここで寝るわけにはいかない。

ちゃんとしたベッドで寝ないと体に疲れが残ってしまうので頑張って起き上がったその時。

「気合い入ってるな、天音」

「璃音兄ちゃん?」

そこに璃音兄ちゃんがやってきて俺の頭を撫でる。

男は成長していくとあまり他人に頭を撫でられるのは好ましくなくなるが、俺は璃音兄ちゃんに頭を撫でられると凄く嬉しい。

璃音兄ちゃんは従兄弟だけど、本当の弟のように可愛がってくれている。

元々住んでいる家は別でも同じ蓮宮神社の敷地内だからいつでもすぐに会えるし、ご飯などは両家族でほとんど一緒食べていたから他の家庭の従兄弟よりも仲良しだと思う。

「もう聖域の準備を終えたのか?」

「うん。後は襲撃してきた時に発動すればオッケーだよ」

「ははは、凄いじゃないか。もう準備を終えるなんてな。流石は十三代目だ」

「……俺なんてまだまだだよ。本来なら十三代目は璃音兄ちゃんが継ぐはずだったのに」

十三代目当主は俺が継いでいるが本来なら十二代目の師匠の息子である璃音兄ちゃんが継ぐはずだった。

だけど、いつしか璃音兄ちゃんが俺に託すと言って、師匠もそれを承諾してしまったのだ。

「俺はお前に蓮宮の未来が見えたんだよ」

「でも、俺は璃音兄ちゃんより弱いし……」

そう言うと璃音兄ちゃんは俺の額にデコピンをして苦笑を浮かべた。

「あのな。俺はお前より五年も長く生きてんだぞ?その分修行もしているし、仕事も多くしてきたんだ。実力の差が出ても仕方ないだろう。それにな……お前は俺よりも剣術と霊操術の才能があるんだ。だからお前に当主の座とその霊煌紋を継がせたかったんだよ」

「そうかな……?」

「天音……お前は自分を過小評価し過ぎだ。覚えているか?俺と親父でお前を初めて仕事に連れて行った時のこと」

それは十歳の頃、璃音兄ちゃんと師匠と一緒に蓮宮の仕事に連れて行った時のことだ。

「うん、もちろんだよ。あの子、元気だといいけど」

仕事の内容は悪霊に取り憑かれた両家の令嬢を解放して助ける事だった。

俺自身はまだ未熟だったので見学の形で璃音兄ちゃんと師匠の仕事を見ていた。

師匠が悪霊を令嬢から引き離し、その直後に悪霊を退治して除霊する……はずだったけど、その時大きな問題が起きた。

悪霊は数十人の魂が合わさったもので予想以上に強大な力を持ち、下手をすれば霊力だけでも霊煌紋に宿る霊力を上回るほどだった。

そして悪霊は令嬢の体を奪ってそのまま妖魔として転生しようとした。

「俺と親父は金縛りを受けて動けなくなり、少女が妖魔になりそうになった……その時、お前は悪霊に一人立ち向かって本来なら使うことが困難だった霊操術を駆使して悪霊から少女を守った」

「あの時は無我夢中だったけどね」

霊操術は扱いが難しく、蓮宮の人間でもそれ相応の努力をしないと使いこなせない。

俺は小さい頃から師匠達に隠れて文献を見ながら練習を繰り返していた。

璃音兄ちゃんと師匠が動かないなら俺が守るしかない。

俺は無我夢中で霊操術を駆使し、悪霊の動きを封じて少女を守り、そして同時に二人の金縛りを解いて悪霊を除霊してもらった。

結果的に除霊をしたのは二人だけど、少女を命懸けで守ったことを依頼人であるご両親にとても感謝された。

それと、璃音兄ちゃんと師匠を含む蓮宮のみんなから褒められた。

「俺が十歳の頃なんて霊操術を使うなんて無理だった。もちろん花音もだ。その時の俺は直感した。天音なら霊煌紋と全ての霊操術を使いこなし歴代最高の当主になれるってな」

璃音兄ちゃんはニッと笑みを浮かべて俺の頭をもう一度撫でる。

そこまで俺に期待をしていてくれてたのか……。

俺は璃音兄ちゃんの思いを聞いて思わず嬉しくなったと同時にもっと強くなると意気込んだ。

するとふと、ある事が頭の中で過り、それを口にする。

「ねぇ、璃音兄ちゃん。兄ちゃんと花音姉ちゃんは卒業後に何処に行っていたの?」

二人は約二年前、星桜学園の卒業式の後、大学に行かず何処かに行ってしまった。

何でも人助けや悪人を捕まえる組織だとか、言っていたけど詳しいことを言わずに蓮宮神社から出て行ってしまった。

時々帰ってきたり、電話やメールで連絡をしてきたから二人のお母さんである叔母さんも心配はしていない。

師匠に関しては二人が選んだ道を信じなさいと言っていて何も教えてくれなかったが、俺はどうしても知りたかった。

大好きな兄ちゃんと姉ちゃんが何の組織に所属して、何をしているのかを。

「そうだな……そろそろ教えてやってもいいか」

ようやく話してくれる気になった璃音兄ちゃんの言葉にドキッとなる。

すると、璃音兄ちゃんは腰に差していた俺の蓮煌と同じ蓮宮の神器……氷のように透明な刃を持つ神剣・氷蓮を手に北の空に向けた。

氷蓮を向けた北の空には無数の星々が並んでいて、璃音兄ちゃんは組織の名を口にした。







「悪を滅する星々の剣。『七星剣グランシャリオ』。それが俺と花音が所属する組織の名前だ」







その組織の名を耳にした瞬間、俺は耳を疑い、璃音兄ちゃんに問いただした。

「七星剣……?えっ、ちょっと待って……七星剣って大戦の時に活躍した伝説の組織!?」

「ああ、そうだ」

七星剣。

それは夜空に輝く七つの連なる星、北斗七星に集う勇士たちの総称。

古い時代から存在する秘密結社でもあり、その基本的な行動は正義の名の下に悪を滅する事で、人々に害をなす悪人や兵器を破壊したと言われている。

現代では悪の代名詞と言われる世界中の聖霊狩りを一人でも多く倒して刑務所にぶち込んだり、世界に害をなす麻薬や人身売買をする組織などを壊滅させていると言われている。

そして、異世界大戦では世界を滅ぼそうとした国や多くの人間を殺す殺人兵器の開発を阻止したりした。

「七星剣には俺たちの曾祖母さんにあたる十一代目当主も組織の一員だったらしい」

「十一代目が?」

十一代目当主は俺達の曾祖母様に当たる人で、十一代目の孫である師匠曰く妖艶と豪胆の二つの面を持つ女性だったらしい。

「俺と花音が卒業する前に七星剣のボス直々にスカウトされたんだ。ちょうどお前に次期当主の座を渡したし、曾祖母さんが所属していた組織なら良いと思って入ったんだ。誰かを守る為に戦えるなら蓮宮の剣士として申し分無いし、給料も良いからな」

「俺も入ったほうがいいのかな……?」

「いやいや、天音はそのまま蓮宮神社にいれば良いさ。曾祖母さんはあくまで大戦時の情報共有の為に入っていたらしいからな。気にしなくて良いよ」

そっか……どんな戦いでも情報は重要な武器になる。

特に大戦だと一つの情報で戦況が大きく左右されるから、十一代目の曾祖母ちゃんは大きな組織に入って情報を共有していたのか。

「危険な仕事なの?」

「まぁな。違法薬物や禁断魔法の実験をする組織を片っ端からぶっ潰したり、聖霊狩りは叩き潰して刑務所にぶち込んでいる。決して楽な仕事じゃないが、平和に生きる誰かの明日を守る事ができるのはやり甲斐があるさ」

「そうなんだ……」

やはり世界に蔓延る悪と戦うのは大きな危険が伴う。

大切な家族がそのような仕事をしているとなると止めたい気持ちが真っ先に来るが、璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんは自ら選んだ道だ。

それを止める権利は俺にはない。

「死なないでね……璃音兄ちゃん」

今の俺にはこの言葉しか言えなかった。

「ばーか。俺がそう簡単に死ぬかよ。お前の子供の顔を見るまでは死ねねえよ」

「ありがとう……そう言えば、璃音兄ちゃんは良い人見つかったの?前から恋人欲しいって言ってたけど……」

「それがなぁ……見つからんのよ。職場の女はみんな男勝りだからな。だがそれよりも……」

突然、璃音兄ちゃんは顔を暗くしてがっくりと肩を落としてものすごく落ち込んでいた。

兄ちゃん、女関係で何があったんだ?

「それよりも……?」

「花音が恋人にならないって言い出すんだよ……」

まさかの身内で近親婚未遂!?

しかも俺が尊敬する双子の姉弟で!!?

「……花音姉ちゃん、どうしたの?」

「知らん。禁断の恋ほど燃えるものはないとかふざけた事を言い出しているし……」

「璃音兄ちゃん……もし花音姉ちゃんと近親婚をしても俺は祝福するからね」

俺は大好きな二人が幸せなら何も問題ない……当主だから周りの声も黙らせられるからね。

「うぉおおおおおーい!?何を言ってんだよ御当主様!?」

「俺は璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんが幸せならそれで良いよ……」

まあ、昔は王族や皇族で近親婚はよくあった事だし……大丈夫だよな?

俺はそう考えながら軽く現実逃避をして夜空を眺めていた。

「いやいやいや、天音君。一旦落ち着こうね?俺と花音が結婚する訳……」

「大丈夫。もし師匠達が何か言っても当主としてみんなを説得するから」

「大丈夫な要素がどこにもねぇっ!?どうした天音!?星桜学園に入学して何があった!!?」

「あっ、恭弥からメールだ」

「聞いて!お願いだからお兄ちゃんの叫び声に耳を傾けて!!?」

禁断の恋だけど幸せになろうとしている兄ちゃんをよそに俺は携帯を開いて恭弥からのメールを見ると驚くべき内容が書かれていた。







『黄昏の魔法使いさんが眠っている部屋をやっと見つけ出した。今夜は扉の前で野宿をするから明日の朝にまた連絡する』







恭弥からのメールは聖霊狩りに備えている俺たちにとって大きな進展を意味する吉報だった。

流石は世界一の冒険家を目指す恭弥だ、こんなにも早く見つかるとは思ってもいなかったので余計に嬉しかった。

黄昏の魔法使い……アリスティーナ・E・トワイライトか。

大戦の英雄の一人でもある魔法使いがどんな人なのかとても気になった。







しかし、まさかそのアリスティーナが俺たち蓮宮の起源に大きく関わる存在だとはこの時は思いもよらなかった。




璃音達の組織である天星導志の名前を七星剣に変更しました。


こっちの方が言いやすいし、かっこいいかなと思いまして。


次回は作中最強のチートキャラ、アリス先生が登場します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ