第17話 守護者として
今回の話はもっと早くに投稿できる予定でしたがアイフォンのアップグレードで小説のデータがすべて消えてしまって書き直しになってしまいました(泣)
今まで書いてきた200近くの小説が消えてかなりの喪失感でした……。
皆さんもバックアップは取るようにしましょう。
天音は私との抱擁と数々の質問でようやく落ち着きを取り戻し、再び屋上の床に座る。
大きく深呼吸をし、天音はまず私達に謝った。
「みんな、悪かったな。心配かけて……」
「いいよ、気にしてないから」
『そうそう』
『人は悩む生き物だからな』
「それより……話してくれるかな?天音に何があったのか……」
「分かった……あれは今から三年前……俺が中学に入学して少し経った頃だった」
天音は過去に何があったのか少しずつ語ってくれた。
私達は少し緊張しながらその話に耳を傾ける。
「蓮宮の剣術と霊操術の修行にも慣れて、上達していった。ある夜、師匠は仕事で出かけていて俺は外で自主練をしていた。そんな時に……あいつが現れた」
「それが瑪瑙……いったい何者なの?」
「瑪瑙は強力な糸のアーティファクトを使う裏世界で名をはせる聖霊狩りだったんだ」
聖霊狩り。
私達人間のパートナーである聖獣を狩る者達の総称。
貴重や能力の高い他人と契約している聖獣を奪い、無理やり自分と契約させて強力なアーティファクトを生み出したり、聖獣をコレクションにする人間に高く売ったりするなど、残虐非道な事をする存在である。
聖霊狩りの組織は数多くあり、世界中で聖獣の誘拐事件などが起きている。
聖霊狩りの存在はこの世界に欲望がある限り、消えることはないと言われているほどで、ある意味この世界の悪の代表格ともいえる存在なのだ。
「その瑪瑙って聖霊狩りが天音を……?」
「ああ。瑪瑙は蓮宮の霊操術を研究しようとしていた人間の依頼で俺を狙ったんだ。その当時、霊操術を使う人間で一番弱かったのは俺だったからな……」
この世界には古より伝わる科学と相反する無限の可能性と奇跡を起こす術……魔法が存在する。
世界各地にはそれぞれ独自の魔法が存在し、それが呪術や降霊術と呼ばれ……日本にも陰陽術と呼ばれる平安時代に普及した魔法がある。
蓮宮の霊操術は天音たちの先祖が作り出した独自の魔法でそれを研究し、自らの力にしようとする人間がいてもおかしくはない。
「俺は必死に抵抗して戦ったけど、瑪瑙の圧倒的な力の前に敗れて……瑪瑙は笑いながら俺の両足を数十本の糸で貫かれて動けなくさせたんだ」
両足を糸で……!?
それを聞いた瞬間、私の脳裏にはアメリカにいた時に友人と見た猟奇的な殺人をテーマにしたホラーやミステリー映画を思い出してしまい、身震いをした。
十三の少年にそこまで酷いことができるなんて、瑪瑙はよっぽど精神が壊れていると推測出来た。
「このままだと殺される……俺は死を覚悟したその時、師匠が仕事を片付けてすぐに駆けつけてくれたんだ。でも、師匠は仕事で霊力と体力を使い果たしていた。そして……瑪瑙は一瞬の隙をついて俺を狙い、師匠は俺を守るために……」
「天音を守るために、どうしたの?」
「師匠は……俺を守るために糸を左腕で受け止めて、左腕が粉々に吹き飛ばされてしまったんだ……」
「そんな……」
詩音さんが左腕を無くしたのは天音を守るためだった。
天音は今にも泣きそうな顔で拳を握りしめていた。
「治癒では治せないほどに腕が吹き飛んで……それでも師匠は俺の身を案じて自分の持てる全ての霊力を俺に託したんだ」
天音はスッと立ち上がり、フェンスのところへ歩き、両手でフェンスを握りしめる。
「霊力を受け取った俺は色々な感情が爆発すると同時に本来なら会得できていなかった霊煌弐式の強化が発動して瑪瑙の間合いに踏み込んだんだ」
フェンスから手を離し、右手に霊力で構成された刀を作り出す。
「そして……霊煌伍式の刀剣で刀を作り出し、そのまま瑪瑙の両腕を切り落とした……」
瑪瑙の両腕を切り落とした……!?
私は言葉を失いながら天音の言葉に耳を傾けた。
「ははは……幻滅しただろ?守護者と言いながら復讐者に成り下がって、瑪瑙の両腕を切り落とした。あいつの悲鳴が今も頭に蘇ってくるんだ……そして、女だったあいつの顔に大きな刀傷を作ったんだ……」
天音は刀を手放して消すと額に手を乗せて少しヤケ気味になってそう言った。
私は不安になっている天音に声をかけようと思ったその時、白蓮ちゃんと銀羅が立ち上がり、聖獣としての気持ちを話した。
『天音、お前は気にすることはない。その瑪瑙は人と聖獣に害をなす極悪人だ……』
『白蓮の言う通りだ。少なくともそいつは天音と対峙する前にも数え切れないほどの罪を犯したはず……』
平和な時を契約者と共に生きる聖獣にとって聖霊狩りは忌むべき存在。
白蓮ちゃんと銀羅が怒るのも無理はない。
私は立ち上がり、再び天音と向き合って問う。
「天音。あなたは過去に罪を犯したかもしれない……だけどそれは詩音さんを守るため。辛いかもしれないけど、あなたがこれから何をするのか考えるべきじゃないの?」
天音がこれから何をすべきなのかを考えさせて一歩を踏み出させる。
「何をするのか……」
「天音、あなたは極東の守護者、蓮宮十三代目当主……守護者として、あなたはどう行動する?」
これは天音が再起するかどうかの最後の質問。
すると天音は手を見てから強く握りしめ、自分の胸を軽く叩いて今の気持ちを言葉にする。
「俺は……俺は戦う。瑪瑙にこれ以上誰かが傷つけられないよう、命を奪われないように……先代から受け継いだ守護者と当主の名にかけて!!!」
「うふふ。それでこそ、私の愛する天音よ。私も一緒に戦うよ、あなたの妻としてね」
「おい、まだ結婚してないだろ……」
天音はようやくいつもの感じに戻りつつあり、ため息をついて苦笑いを浮かべた。
「いいじゃない。こんなにも天音に献身的な女の子はいないわよ?」
「それもそうだが……まあ良い。千歳には本当に感謝している。瑪瑙との戦いが終わって、夏休みになったらどこでも一緒にいてやるよ」
まさかの天音の提案に私はテンションが一気に上がった。
「本当に!?じゃあ、アメリカにいる私の二人の師匠に会いに行こう!」
「ああ……あれ?師匠って女優さん一人じゃなかったのか?」
「あー、言ってなかったね。一人はアクション女優で、もう一人はその女優さんのお父さんでアメリカ軍の重鎮だよ」
「アメリカ軍の重鎮!!?一体どういうコネを使ったら弟子になれるんだよ……」
天音は呆れたように言うが他の人が聞いても同じような反応をするだろう。
「さあ?まあ、人生何が起きるかわからないからね」
「それには同感だが……」
「とにかく、喫茶店に戻ろう。みんな心配しているよ?」
「そうだな。行こう、みんな!」
「うん!銀羅!」
『任せろ』
私は銀羅の背に再びまたがり、天音は背中に霊力で作った翼を羽ばたかせる。
「霊煌漆式天翔!!白蓮!!」
『うん!』
白蓮ちゃんも翼を羽ばたかせて天音と一緒に空を飛ぶ。
その後を銀羅は宙を駆けて追いかける。
☆
side天音
喫茶店に戻ると外には璃音兄ちゃん達が立って待っていた。
俺たちはゆっくり地面に降り立つと、璃音兄ちゃんは真っ直ぐ俺を見つめてきた。
「心配かけてごめん……」
「いいさ、こうなることはわかっていた。それで……お前はあの時の記憶を取り戻した。どうするつもりだ?」
璃音兄ちゃんは俺を試している。
俺が復讐者になるのか、それとも……。
俺は答えを示すために左手を軽く前に突き出して霊力を纏う。
「来たれ、我と共に闘う輩よ……霊操五十三番『招来』!」
すると、喫茶店の中に置いてあった俺の愛刀の蓮煌が宙に浮き、開いている扉から出てきて俺の元へ飛んできた。
飛んできた蓮煌を左手でキャッチし、そのまま右手で柄を握って抜刀する。
そして……赤い刃に自分の顔を映しながら宣誓をする。
「俺はここに誓う……悪を討ち滅ぼす復讐者ではなく、人と聖獣を守る守護者として、蓮宮十三代目当主として最後まで戦う!!!」
俺の宣誓に璃音兄ちゃんは真剣な表情から笑みを浮かべて大笑いをした。
「ふっ……はははははっ!そうかそうか、やっぱりそうこなくっちゃな!」
「り、璃音兄ちゃん……?」
「実はな、天音。俺はお前を試していたんだ。お前が守護者として立ち上がるか、復讐者として堕ちるかどうかな」
「ごめんね、天音。でも、あなたが無事に立ち上がるのを私と璃音は信じていたわ」
「全ては千歳と白蓮と銀羅のお陰です」
みんながいなかったら俺は復讐者に堕ちていたかもしれない。
俺はまだ弱い……心も体も。
だから、少しでも強くならなければと気持ちを新たにする。
「それで、璃音兄ちゃん、花音姉ちゃん。瑪瑙は何を狙っているの?」
瑪瑙は再び動き出した事を知っている二人。
だがただ復活しただけならわざわざここまで来て伝えることは無い。
きっとこの星桜学園にある何かを狙ってくる。
だからこそ二人はここに来たのだろう。
「瑪瑙は星桜学園に眠ってあるものを奪いに来る」
「それって、誰かの聖獣?それとも学園に保管されている物?」
「うーん、なんと言うか……文字通り眠っているのよね、半世紀も前から」
「半世紀?」
「この星桜学園の何処かに半世紀も前から眠りについている女がいるんだ」
半世紀って、五十年前!?
そんな前から眠っている人がこの星桜学園の何処かにいるの!?
「お、女って……一体何者なの……?」
五十年も前に眠っていて、しかも聖霊狩りが狙うんだ。
少なくともただの人間じゃないはず……。
そして、遂にその謎の人物の正体が璃音兄ちゃんの口から語られる。
「千年以上の長い年月を生きたとされる、先の大戦の英雄の一人にして、伝説の魔法使い……黄昏の魔法使い、『アリスティーナ・E・トワイライト』だ」
それは俺たちが生まれる前に人間界と聖霊界で起きた『異世界大戦』から人間と聖獣を守る為に戦ったとされる伝説の魔法使いの名前だった。
そして、その魔法使いが俺たちの新たな運命の欠片ということをこの時はまだ知らなかった。
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次回は瑪瑙との戦いの前の準備という感じです。
この小説のアリス先生は眠りについていますがもうすぐ復活すると思います。




