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AO 《アーティファクト・オーバードライブ》  作者: 天道
第1章 運命の召喚と契約編
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第15話 蓮宮の双子姉弟

今回はタイトル通りあの双子が参上します。

日本から遠く離れた海外にて、ある無人島の砂浜で一人の男が日光浴をしていた。

青い空に白い雲、そしてさんさんと照りつける太陽……絶好の日光浴日和だった。

「んんっ……いい天気だ……」

ビーチチェアに寝転び、サングラスを付けてトロピカルジュースを片手に優雅に過ごしていた。

水着などは着用せずにラフなTシャツにジーパンを履いていたが、服の上から分かるほどその男は鍛えており、引き締まった筋肉をしていた。

「全く……のんびりと昼寝なんていいご身分ね」

そこに無人島とは場違いな巫女装束を着た女が男の背後に現れる。

「いいじゃねえかよ、花音。昨日麻薬の密輸船を攻略したんだぜ?」

「そうだけど……璃音、もう少し規則正しい生活をしなさいよ。私達の弟は星桜学園で学業に励んでいるのよ?」

男の名前は璃音、女の名前は花音。

二人は姉弟で姓は蓮宮……天音が心から慕う従姉弟だ。

「まあそうだけど、確か天音はこの間に幼馴染の女の子と許婚になってイチャイチャしてるんだろ?あー、リア充羨ましい。俺も恋人欲しいぜ」

「あら?だったら私が璃音の恋人になってあげようかしら?」

璃音は物凄く嫌な顔をし、サングラスを外して現れた瑠璃色の瞳で花音を見上げる。

「冗談はよしてくれよ……どうして双子の姉ちゃんと恋人同士にならなきゃならねんだよ」

「うふふ。禁断の愛ほど燃えるものはないじゃない♪それに、前に見たあんたの秘蔵の本……何と無く私と似ていると思うんだけどなぁ。顔やスタイルとか♪」

花音は唇に指を当てて妖艶な笑みを浮かべて璃音に近づく。

「勝手に人のもんを見るな。つーか花音なら幾らでも相手はいるだろうが」

「うーん。璃音と比べるとなかなかいい相手はいないのよね。と言うわけで、行き遅れになりそうだったら私を貰って♪」

「ダメだこの馬鹿姉……早くなんとかしないと」

璃音は花音の危ない発言に頭痛を覚え、額に手を当てて大きなため息をつく。

「馬鹿言うなぁ〜。まあ、その話は後でじっくりするとして」

「するのかよ!?ってか日本にいる親父かお袋に頼んで見合いの席でも設けてもらえ!!」

璃音の鋭いツッコミが花音に響いたのか、妖艶な笑みから真剣な表情を浮かべて璃音に向き合う。

「さてと……璃音。あなたに良い話と悪い話があるんだけど、どっちから聞く?」

「おいおい、いきなりだな……まあ悪い話はどうせ『仕事』の話だろう。良い話から頼む」

「オッケー。まず良い話だけど、昨日マスターから連絡があったのよ」

「マスターが?」

マスターとは星桜学園にある喫茶店の店主のことで、数年前に病気の妻の為に喫茶店を畳んで田舎へ帰って行ったのだ。

「ええ。マスターと一緒にやっていた喫茶店……数年前に閉めちゃったけど、復活するんだって」

「本当か!?でも、マスターは女将さんが病気で介護をしなくちゃならねえし、誰が……」

「驚かないでね、喫茶店を復活させる中心人物は……天音よ」

「……何だと?我らが蓮宮当主が喫茶店のマスターに?」

「ええ。友達と一緒に今、喫茶店を復活させているのよ。ほらあの子、飲食関係の免許や資格を持っているじゃない」

「確かに……天音は親父に当主に指名される前は喫茶店を経営してみたいと言っていたからな」

誰よりも天音の事を知っている璃音は青空を見上げながら懐かしむようにそう呟く。

「この後行ってみない?『流星』ならすぐに行けるし」

「そうだな。天音の菓子を食いたいし」

「楽しみね。それで次は悪い話だけど……」

「仕方ねぇ、バカンス気分はまた後にするか」

璃音はサングラスを左掌に刻まれた魔法陣の中に入れてビーチチェアから降りた。

首や肩の関節を鳴らし、近くに畳んで置いてあった黒のロングコートを着用する。

「花音、悪い話の内容を言ってくれ」

「分かったわ。悪い話……それは私達、蓮宮の因縁の相手よ」

その瞬間に璃音の目が鋭くなり、左掌の魔法陣が輝いて中から剣が出現する。

「ようやくか……あいつの尻尾を掴めたか」

「ええ、そうよ」

花音は巫女装束の胸元を少しはだけると璃音の左掌と同じ魔法陣が刻まれており、中から赤い長弓が現れて左手で持つ。

「聖霊狩り……『死弦団しげんだん』が動き出したわ……」

「ちっ……天音にも伝えなくちゃいけねぇな。行こうぜ、花音」

「分かったわ……既にボスには伝えてあるわ。流星!お願い!!」

花音は右手の指を口に含め、息を吹いて指笛にする。

ピィーッ!と、高い音が山々に響くと天空から一筋の黄金の光が輝いて真っ直ぐ女の元へと走った。

黄金の光に包まれたそれは姿を現して降りたつとそこには黄金と白銀の毛皮に鹿のような二本の角を持つ馬に似た聖獣が姿を現した。

流星と呼ばれたその聖獣は花音の契約聖獣で、その身から神聖な黄金と白銀の輝きを放ち、見る者全てをひれ伏させるような威厳を持っていた。

「流星、日本まで乗せてちょうだい」

『グルゥーッ!』

花音の願いに流星は頭を下げて背中を見せた。

「ありがとう、流星」

「流星、失礼するな」

流星の背にまず花音が乗り、その後ろを璃音が続いて乗る。

二人が乗るのを確認すると、流星は頭を上げてこれから花音の指示を待った。

「さあ、出発よ!」

花音は流星の首に軽く触れると、砂浜を走り出してそのまま宙へ駆ける。

「轟牙!悪いがバカンスは終わりだ、日本に来てくれ!」

璃音がそう叫んだその直後、無人島が大きく揺れ始めて轟音が響き渡る。

『ゴォオオオオオ……!!』

そして、海の中から低い笛の音のような声が響くと同時に無人島が浮かび上がった。

否、正確に言うなら無人島は大きな甲羅が浮かび上がり、海から現れたのは想像を絶するほどの巨大な大きな亀だった。

大きな亀は璃音の契約聖獣で、璃音の言葉通りに流星が走って行った方角……日本に向けてゆっくりと進んでいくのだった。



恭弥との模擬戦をしたその日の放課後、みんなと一緒に喫茶店に行き、一日も早くオープンする為に掃除や飾り付けをする。

後は役所に検査をしてもらい、必要書類の審査が通れば無事に喫茶店をオープンする事が出来る。

掃除と飾り付けを大体終えると喫茶店に初めから設置されていたオーブンで試験的にケーキを焼く。

やはり何度かケーキを焼いて、このオーブンはどんな具合なのかを確かめなければならない。

「よーし、出来た……みんな、チョコレートケーキが出来たよ!」

俺は作るのが得意なチョコレートケーキを完成させてみんなに見せる。

「やっほー!天音の絶品ケーキキター!!」

「よっしゃあ!これのために頑張ってきたんだ!!」

『美味しそう……ジュルリ』

『おお、見事な焼き菓子だな』

『へぇ、菓子作りが上手いと聞いていたが洒落たものを作るな。今度天界の奴らに持って行きたいな』

千歳達は出来たチョコレートケーキに目を輝かせた。

「さて……チョコレートケーキのお供の飲み物、コーヒーと紅茶、どっちにする?」

「天音、私は紅茶をお願い!」

「俺はコーヒーで頼むぜ!」

「じゃあ、私は紅茶とセットで……」

『なら俺はワインを頂こう!』

「ああ、分かった……ん!?」

「「えっ!?」」

『『『何?』』』

コーヒーと紅茶の準備をしようとしたその時、新たに聞こえた二人の声に俺たちは耳を疑ってカウンターの向こうにあるテーブル席を見る。

「あ、どうも……」

『ガハハハ!早く準備をするのだ!』

テーブル席に優雅に座っていたのは雷花さんと相棒の雷神トールだった。

「雷花さん!?トール!?何でここにいるの!!?」

「ららら、雷花しゃん!?」

「恭弥、落ち着きなさい。舌がうまく機能してないから」

雷花さんに絶賛片思いで恋している恭弥は突然の登場に顔を真っ赤にして呂律が上手く回っていなかった。

「雷花さん、どうしてここに……?まだオープンもしてないのに……」

「実はみんなにこれを渡したくて……」

雷花さんは大きな紙袋をカウンターに置いてその中身を俺たちに見せた。

「これ……燕尾服?」

「可愛い〜!メイド服だ!」

「すげぇ……テレビや雑誌でしか見たことないぜ」

燕尾服とメイド服はまるで一流の職人が作ったように綺麗で丈夫に作られていた。

でも、どうして雷花さんがこれを……?

「雷花さん。これ、どうしたんですか?」

すると雷花さんは照れ臭そうに頬を指でかきながら答えた。

「それ、私が作ったの……」

「「「えぇえええええっ!?」」」

まさか同い年の子がこれほど精巧な服を作れるとは信じられず、俺たちは声を揃えて驚いた。

そんな俺たちにトールは笑いながら説明した。

『がはは!お前達、嘘ではないぞ。俺はこの目で見ていたからな。ライカは手先が器用で自分の服やぬいぐるみを作っているからな』

「凄いのはわかったけど……雷花、何か私達に頼みたいことでもあるの?」

「千歳?」

「だって、これを作るのにも時間や手間もかかるし、雷花が何か頼むことがあるのかなって思うじゃん」

確かに千歳の言う通りだった。

雷花さんとは代表戦以来、友人関係となり、特に千歳とは仲が良く名前で呼び合う仲だ。

だけど、頼んでもいないのに見事な燕尾服とメイド服を作ったというこたは何かお願い事があると考えるのが普通だ。

「えっと、その……一つだけお願いがあるの……」

雷花さんは顔を少し赤くして恥ずかしそうにしながら口を開いた。

「わ、私をみんなと一緒の部活に入れてくれませんか?」

「えっ?この……カフェ部に?」

なるほど、雷花さんのお願いはその事だったのか。

普通に言ってくればよかったのに、雷花さんはそういう所は少し不器用なのかな?

「う、うん……ダメかな……?」

「なんだ、その事だったのか……俺は歓迎するよ。こんなにも素敵な服をくれたからね。みんなもそうだろ?」

「もっちろん!雷花が入ってくれるなら大歓迎だよ!」

「お、おう!雷花さんが入るのに大賛成だ!」

千歳はもちろん、恭弥は天にも昇る心地で喜んでいた。

『良かったの、ライカ!』

「では、新入部員の雷花さんを歓迎して、改めてみんなでケーキを食べよう!今、紅茶とコーヒーを淹れるので待っていてね。それと……雷神トール、ワインはないのでご了承を」

『がはははは!俺を前に笑顔で臆さぬとは、なかなか肝が座っている。ではコーヒーを頼むぞ』

「はい。では、少々お待ちください」

人数分のカップ、コーヒーの粉と紅茶の茶葉、コーヒードリッパーとティーポットを用意して淹れていく。

コーヒーの粉と茶葉は香りと味が良いのを選んだけど、売上が出で余裕が出てきたら色々な種類を揃えようと思った。

少し時間をかけてコーヒーと紅茶を淹れ、その間に千歳がケーキを切り分けてみんなに配る。

「お待たせしました。それでは、いただきましょう」

「「いただきます!」」

「い、いただきます……」

『いただきまーす!』

『ほぉ、これはこれは……いただきます』

『じゃあ俺も。いただきます』

『では……いただきます』

全員手を合わせていただきますの挨拶をし、ケーキをいただく。

「美味しい〜!流石は天音!私の嫁!!」

「相変わらずお前のケーキは最高だぜ」

「美味しい……幾らでも食べられるね」

千歳、恭弥、雷花の三人は満面の笑みを浮かべた。

『チョコケーキうまうま!最高〜!』

『こんなにも美味いとは。天音は嫁力が高いな……』

『うんめぇ……やっぱり時代が違うと菓子はこんなにも美味しくなるのか』

『これは美味なり!是非とも神の国の土産にしたいな!!』

聖獣達の白蓮、銀羅、悟空、トールも気に入ってくれた。

「天音!早速このチョコケーキをメニューに加えよう!」

「ちーちゃんストップ。俺たちがこの喫茶店を経営出来るのは放課後なんだよ?ケーキ屋さんみたいに沢山のケーキをメニューとかに加えられないよ」

「じゃあ……日替わりのケーキセットってのはどうだ?」

恭弥はコーヒーを飲んで口の中に苦味を広がらせながら言う。

「ああ、そのつもりだ。主なメニューは喫茶店の定番のサンドイッチや簡単な洋食で、デザートは日持ちする焼き菓子や日替わりのデザートにするんだ」

まだ詳しいメニューの内容は考えてないけど、まだオープンまで時間はあるからお菓子の料理本を見ながらみんなで話し合ってじっくり考えるつもりだ。

だけど今はただ楽しもう。

せっかく雷花さんが部員として加わるのだ。

そういう話は後にして今は他愛のない話で盛り上がって学生らしく楽しもう。

「みんな、コーヒーと紅茶のお代わりーー」

みんなに飲み物のお代わりを聞こうとしたその時だった。

ギィッ……。

すると突然、ドアが開いて誰かが入店してきた。

誰だろう?まだオープンもしてないのに……。

「あ、すいません。まだ喫茶店はオープンしてなーーえっ?」

入ってきたのは二人の男女で学園の制服を着ていなかった。

だが、教師でも学園が雇った業者の人でもなかった。

二人は優しい笑みを浮かべて口を開いた。

「そう言わずにマスター、俺たちにもケーキとコーヒーを頂けないか?」

「私は紅茶でお願いね、マスター」

その二人は俺の大切な人達だった。

幼い頃から俺を実の弟のように可愛がり、一緒に遊んでくれた。

俺が成長すると、二人で俺に武術と霊操術を親身になって教えてくれて、一緒に大切な時間を過ごしてくれた。

「璃音兄ちゃん……?花音姉ちゃん……?」

「久しぶりだな、天音」

「元気そうで良かったわ」

二人の正体は俺の従姉弟の蓮宮璃音と蓮宮花音だった。

璃音兄ちゃんと花音姉ちゃんは双子の姉弟で、二人とは五歳違いで今はちょうど二十歳だ。

「二人共、どうしたの!?海外で仕事をしているって……あっ、その前にケーキだっけ?オッケー、二人なら喜んで出すよ!」

大好きな兄ちゃんと姉ちゃんを前に俺はいつになくテンションが上がり、二人に駆け寄った。

「あー、お前のケーキを今すぐ食べたいのは山々だが、その前に話がある」

「話……?」

二人はいつになく真剣な眼差しで俺を見つめた。

何だろうと思いながら場に緊張感が漂い、千歳達もただ静かに見守っていた。

そして、次の二人の言葉で俺の頭は真っ白になった。

「天音、落ち着いてよく聞いてね。私達蓮宮の因縁の相手があなた達を狙っているの」

「親父の左腕を奪った奴……瑪瑙が動き出した」

「瑪瑙……?うぐっ!?」

その名前を聞いた瞬間、頭に大きな激痛が走り、俺は頭を強く手で押さえながら膝をついた。

まるで、頭の中で鎖で封された何がが暴れているようだった。




瑪瑙についてですが、天音にとってとても因縁のある相手です。


前作と違うのは先代の詩音がまだ生きているところです。


次回は天音の抱える闇について語られます。

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