第8話 極東の守護者
今回は少し短めです。
数日中にはもう一話更新しますので。
side千歳
「うっひゃあ……凄い雷……」
鳴神さんが呼び出し、そして自らの体とアーティファクトに取り込んだ雷に呆然として驚く私達。
『ふむ……あれほどの雷を自由自在に操るとは……あの娘、ただの人間ではないな』
「そりゃあ、北欧神話の雷神様と契約出来るんだからね。潜在能力はかなり高いと思うけど、あんなに大量の電気を浴びたら普通感電死するはずだけど……」
ただ単に電気をその身に宿しただけじゃない、果たしてどんな効果があるのか気になる。
『いやー、開始早々から白熱したバトルが繰り広げられてきましたね』
『まずは小手調べといったところだな……本番はこれからだ』
『蓮宮さんはまだ守護者としての力を発揮してませんが、鳴神さんは最初から惜しみなく自分の力を発揮していますね』
生徒会長が天音の守護者の事を知っている……そんなに有名なのかな?
『ところで、生徒会長。鳴神さんのあの雷の操る力は一体なんなのでしょうか?』
『あれは鳴神さんの一族だけがもつ雷を自由自在に操る能力……轟雷装神。鳴神さんの先祖が強力な力を持つ雷神で雷を操る力を代々受け継いでるみたいです』
なるほど、鳴神さんは雷神の末裔だったのか……だから雷を自由自在に操れて、尚且つトールを召喚できたのね。
『ふふふ……あのおっさん、北欧の軍神だったのか。中国の戦神として一戦やってみたいな!』
悟空は如意棒を握りしめ、今すぐ戦いたい気持ちを抑えていた。
ちょっとちょっと、片や古代中国最強の戦神の孫悟空、片や北欧神話最強の軍神のトール……そんなお二方が戦ったら被害は半端ないわよ!?
もう、恭弥ったら何をしているの?
早くしないと神仏の壮大な戦いが……。
「……か、可愛い」
「え?」
思わず耳を疑ったが、目を細めて恭弥を見るとその視線は天音ではなくその相手の鳴神さんに向けられていた。
「やべー……前々から気になっていたけど、あのゴスロリ姿は最高だ……あの小さな体に似合いすぎてるぜ……」
「……恭弥、あなたロリコンだったの……?」
「ロリコン?何を言ってるんだ、好きになった子が小さかっただけだ!それに同い年だから合法だ!問題ない!!」
「ダメだこりゃ……」
そこまで力説していたらもう堕ちるところまで堕ちそうね。
まあ同い年だから犯罪じゃないのが唯一の救いね。
とりあえずロリコンに堕ちている恭弥はほっといて、天音の応援に専念する。
「天音ー!!頑張ってー!!!」
☆
side天音
鳳凰剣零式から炎の羽根を生やして舞い散らせるように振るう。
そして、もう一度振るって風を起こし、炎の羽根を吹き飛ばす。
「蓮宮流神霊術!鳳凰炎刃羽!!」
鳴神さんに向けて吹き飛ばした炎の羽根が迫ると、トールハンマーを大きく振り上げた。
「雷光激震……サンダー・インパクト!!」
トールハンマーで思いっきり地面を叩き、トールハンマーの内部に蓄えられている雷電が一気に放出され、四方八方に飛ぶ。
周りに飛んだ雷撃が炎の羽根を全て撃ち抜いた。
遠距離は効果無いみたいだな。
それなら、大剣と鎚……ここは接近戦で勝負だ!
『おおっと!ここで蓮宮選手は前に出た!』
『なるほど、接近戦に持ち込むわけですね』
『これは見ものだな』
実況の声は耳に届いているが、ひとまずスルーし、鳳凰剣零式を肩に担いで走る。
鳳凰剣零式は重い大剣なのでただ持って移動するのは大変なので、肩に担いで少しでも疲れを抑えていく。
対する鳴神さんトールハンマーを俺に向けて雷を纏う。
「雷光竜閃……サンダー・ドラゴン!」
そして、トールハンマーから雷で出来た竜が現れ、体をうねりながら俺に襲いかかってきた。
再び霊力を鳳凰剣零式に込めて大きな炎を生み出し、左から右へ横に鋭く振る。
横に振ると鳳凰剣零式から欠けた月の形をした炎の刃が飛ぶ。
「蓮宮流神霊術!鳳凰孤月斬!」
炎の刃は口を大きく開けた雷の竜を口から体を真っ二つに斬り裂いた。
そして、左手を鳳凰剣零式の柄に添え、大きく振り上げて担ぎ、腰を少し捻る。
鳴神さんも迎え撃ち、トールハンマーを持つ右腕を円を描くように振り回し、遠心力で加速させていく。
そして、二人同時に技を放つ。
「蓮宮流剣術!紅蓮裂刃!!」
上段から鳳凰剣零式を捻った腰を元に戻しながら力任せに振り下ろす。
大剣である鳳凰剣零式の重量が合わさり、強力な豪剣の斬撃となる。
「雷光爆砕……サンダー・クラッシュ!!」
遠心力で加速させ、最後に体を一回転させたトールハンマーに雷の力を合わせた打撃を打ち込む。
俺の斬撃と鳴神さんの打撃が激突し、ビリビリと空気が震えるような衝撃波が発生する。
そして、最後に発生した強い衝撃波により二人同時に反発するように吹き飛んだ。
「くっ……」
「ううっ……」
吹き飛ばされて倒れ、そのまま起き上がるとシールドリングの文字が点滅して光る。
『蓮宮天音。シールドポイント、17パーセント低下。エネルギー残量、83パーセント』
『鳴神雷花。シールドポイント、20パーセント低下。エネルギー残量、80パーセント』
シールドリングのシールドポイントが減った……?
そうか、こうしてダメージを喰らうとこんな感じで音声で残りのシールドポイントを教えてくれるんだな。
俺と鳴神さんのシールドポイントはほぼ八割で同じ……まだまだこれからだな。
「……使わないんですか?」
「何?」
「力……蓮宮の当主の証である霊煌紋の力を……」
「っ!?」
当主の証である霊煌紋の事を知っている……?
他人にはあまり話さないのにどうしてその事を鳴神さんが?
「昔……お父さんがあなたの先代当主と共闘した事があります」
「先代が……?」
師匠が……鳴神さんのお父さんと共闘しただって?
その事に驚いていると、鳴神さんはトールハンマーから雷撃を放った。
俺は雷撃の道筋を見極めて避けていると、鳴神さんは話を続ける。
「お父さんが感動した霊煌紋に宿る十二の守護者の力……その力を使えばいいのに、どうして使おうとしないんですか?」
「霊煌霊操術は元々人と聖獣を守る力だ……それにこれはアーティファクト・バトルだから、関係ない力は使いたくない!」
「自分の持つ力を、使う事を惜しむなら……ここで倒れてください」
トールハンマーを振り上げると、再び空に雷雲が幾つも浮かび上がる。
落雷がフィールドに降り注がれ、その膨大な雷がトールハンマーに全て集まっていく。
そして、充電した雷を解き放つと、膨大な雷が巨大な人の形を作った。
それは契約聖獣の雷神トールの姿を模しており、鳴神さんの動作と同じ動きをしていた。
これは確実に俺を今ここで倒そうとしている。
回避しようにもこの限られたフィールドの中ではあれだけの雷じゃ避けられないし、生半可な防御じゃ絶対に防ぎきれない……。
「天音ー!!!負けるなー!!!」
その時、耳に届いたのは千歳の声援だった。
千歳はこの試合が始まってからずっと俺に声援を送り続けて応援をしてくれた。
声が枯れそうになりながらも必死に応援している。
「ったく……これじゃあ益々負けられないじゃないか」
そう言えばこの学園に来る前に師匠が言っていたな……。
(霊煌霊操術は今は天音の力だ。だから、その力をどう使おうと天音の好きにするといい。だけど、歴代当主たちが背負ってきた極東の守護者としての誇りだけは忘れないでくれ)
師匠……己のために、一緒に戦ってくれている白蓮のために、そして全力で応援してくれ千歳のためにも俺はこの力を……。
「轟雷神撃……ライトニング・ブレイカー!!!」
雷の巨人が握りしめた拳で制裁の鉄拳を下すように振り下ろした。
「悪いな、鳴神さん……」
鳳凰剣零式を肩に担ぎ、霊力を解放して霊煌紋を輝かせる。
「十年ぶりに再会した大切な幼馴染みの前だ……全力で勝たせてもらう!」
左手で邪魔するものを振り払うように空を切る。
「咲き乱れよ、蓮華の盾!霊煌陸式結界!百花繚乱の陣!!」
雷の鉄拳が直撃する直前に俺の周囲に無数の蓮の花の盾が現れ、幾重にも重なり合って球体の結界となる。
そして、球体の結界は雷の鉄拳を防ぎ切り、一撃を放った雷の巨人は姿を消した。
「蓮の花の結界……!?」
蓮華の結界は役目を終えると、一瞬で砕け散って構成していた俺の霊力が蒸気のように大気へ消えていく。
『おいおいどういう事だ!?この俺の一撃を完全に防いだだとぉ!?』
「トール、これが蓮宮さんの本領発揮だよ……」
トールハンマーの中にいるトールは驚愕し、鳴神さんは小さく笑みを浮かべてトールハンマーを握り直した。
気合を入れ直した俺は霊煌紋を輝かせながら鳳凰剣零式を強く握りしめる。
「極東の守護者。蓮宮十三代目当主、蓮宮天音……参る!」
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極東の守護者は天音の異名・称号みたいなものです。
その由来は今後判明していきます。




