第6話 千歳の日常
今回はバトル前のお話です。
本格的な戦闘回であるアーティファクト・バトルは次回なのでお楽しみ!
side千歳
契約聖獣とのアーティファクトの契約が無事に終わって数日が経過した。
少しずつ新しい学園生活に慣れていく中、私達にとって初めての土日の休日が来ました。
特にまだ部活とかには入ってないので、天音とみんなで充実した休日を過ごそうと思ったけど……。
「あれ……?天音は……?」
朝の6時前ぐらいに目が覚め、隣のベッドにいる天音の寝顔を見ようとしたらその姿はなく、ベッドのシーツや掛け布団、そして寝巻きの着物が畳まれていた。
「何処行ったんだろう……?」
シャワー室にもいないので流石に心配になり、パジャマから私服に着替えて探しに出かけることにした。
銀羅と白蓮ちゃんはまだ寝ているのでそのままにして部屋を後にした。
まずは学生寮の中を歩いてみたけど、まだ寝ている生徒がほとんどでとても静かだった。
となると、学生寮の外にいると思われるが何処に行ったか見当もつかない。
試しに携帯電話で連絡を取ってみるが、案の定繋がらなかった……。
「天音ったら何処に行ってるのよ……」
何処にいるか分からない、連絡がつかない……大きすぎる不安が脳裏によぎり、心臓が締め付けられるほどに苦しくなった。
私はとにかく走って天音を探した。
学園の施設関係はまだ朝なので扉が閉まっているから、それ以外の中庭や聖霊樹などを中心に座って落ち着ける場所などを探す。
そして、走ること約十分……。
「み、見つけた……!」
ようやく天音を見つけることができた。
天音は道着姿で訓練場にいて、手には大きな剣を握りしめていた。
十中八九、あの剣は天音の霊力で作り出したものだけど、どういう原理なのか全くもって理解不能だった。
そもそも魂の力である霊力であそこまでしっかりした頑丈な武器を作れることに驚きを通り越すほどだった。
「ふぅ……はっ!ふっ!せいっ!」
そして、天音はその大剣で剣術の型をやって綺麗に振っていた。
私は天音の邪魔にならないように木の陰に隠れて、携帯電話のカメラモードを起動させた。
そして予めシャッター音を消す設定にしてあるカメラモードの携帯電話を構え、天音のかっこいい姿を激写する。
天音の寝顔も良いけど、真剣な表情をした修行の姿も素敵だった。
100枚ぐらい激写し、その画像データを学生寮の部屋に置いてある私のノートパソコンに転送してバックアップを取った。
ちょうどそれと同じくらいに天音の修行が終わり、大剣を消して近くに置いておいたタオルで顔を拭く。
そして……次に上半身を脱いでびっしょりとかいた大量の汗をタオルで拭き始めた。
いゃっほぉおおおおおーっ!?天音の上半身キター!!
私は再び携帯電話を構え、天音の上半身を撮影しようとしたその時。
「今すぐ大人しく出てきて携帯を仕舞えば何もしないよ」
「はうっ!?」
天音はこちらに顔を向け、笑顔で周囲に短剣を作り出して浮かべる。
も、もし今出て行かなかったらあの短剣を飛ばされて、私の携帯電話が串刺しにされてお陀仏となってしまう……。
「ど、どうも〜……」
「千歳、隠し撮りはダメだぞ」
天音は短剣を消して道着の上着を着なおした。
「ば、バレていたのね……」
「別に修行している時は別に良いけど、流石に上半身裸とかの撮影は御免被る」
「あ、あはは……」
「もうやらないと約束しろよ?」
「は、はい……」
天音の有無を言わせない笑みに私は頷く事しかできなかった。
写真ぐらい我慢しないとね……一緒の部屋だから天音の体はこの目で見る事ぐらいはできるし。
「ところで、なんでここにいるんだ?」
「あ、天音が部屋にいないから心配になって……」
「そっか……悪いな、心配かけて。今度から書き置きぐらいは残しておくから」
「うん。でも良いものが見れてよかった。天音の修行している姿、カッコよかったよ」
「そんな大したものじゃ無いよ。来週のクラス代表戦に向けて1日でも早く大剣の扱いになれなくちゃいけないし」
天音は元々刀の使い手だったからそれよりも何倍も重い重量のある大剣を使いこなすには流石に一朝一夕では難しいので、放課後など時間が空いている時にこうして修行をしている。
「天音、頑張ってね!私達で全力で応援するから!」
「ありがとう。代表戦が終わったら打ち上げに簡単な宴でもするか?」
「うん!するするー!天音の料理、美味しいって恭弥が入っていたからお願い!」
「ははっ……大したは作れないけどな」
天音は料理好きで恭弥曰く、料理だけでなく炊事洗濯も出来る理想的な婿である……と。
しかもその料理はとっても美味しく、特にお菓子は絶品と言っていた。
それを聞いたら絶対に何が何でも天音を婿にしたいと、決意を新たにした。
だって料理が出来る旦那様は素敵だからね♪
「何ニヤニヤしているんだ?」
「んー?別にー?」
「そうか。さて……そろそろ帰ろうかな」
「シャワー浴びるんでしょ?お背中お流ししましょうか?」
「お断りいたします。一人で入らせてもらいます」
「むむむ……強情だね。だったら無理矢理でもシャワールームに突撃を……」
「霊操術で全力でロックをかけるから止めておけ」
ちょっと!?
私がシャワールームに入らせないために霊操術使うの!?
「万能すぎるよ天音の霊操術!?いったいどれだけ術があるの!?」
「蓮宮歴代当主とその血を継ぐ者が作った分だからね。俺もまだ全部は修得していないけど」
「全部修得するつもり!?」
「当然。守護者として覚えられる力は幾らあっても困らないからな」
「守護者……」
天音が時々口にする『守護者』の単語。
守護者は守り人、守護する者って意味があるけど、どういう事なんだろう?
「天音、前から聞きたかったんだけど……守護者ってどういう事?蓮宮の一族と何か関係があるの?」
天音にそう聞くと、少し驚いたのか一瞬だけ目を見開いて私を見つめる。
「……知りたいのか?蓮宮を……守護者の事を?」
「うん、知りたい。いずれ天音の奥さんになるんだからね」
私は迷いなくそう答えた。
伊達に10年近く天音を思い続けていない。
「はぁ……まあ奥さんとかの話は置いておいて……いずれどこかでバレるだろうから教えてあげるよ」
「出来ればその話は置いておかないで欲しいけど……」
「取り敢えず、部屋に帰ってシャワー浴びてからでもいいか?」
「うん。もちろん」
その後、すぐに私と天音は部屋に戻った。
天音は汗を流しにシャワーを浴び、その間に私は着替えやスポーツドリンクを用意した。
シャワーを浴びた天音は普段着に着替え、スポーツドリンクを手にベットに腰掛ける。
「それじゃあ、お待ちかねの俺たち蓮宮の一族について話そうかな」
「よろしくお願いしまーす!」
遂に天音の一族の秘密についてが語られる時が来た。
「俺たち蓮宮一族は初代当主・蓮姫様が起源だ」
「蓮姫、様……?」
「蓮姫様は幼い頃に人と聖獣に仇をなす邪悪なる力を祓う光……『破魔』に目覚めた。その力を元に人々と聖獣を救う活動を始めた」
破魔……魔を打ち破る力……。
それが目覚めるなんて偶然なのかどうか分からないけど、蓮宮はそこから始まったんだ。
「蓮姫様は別け隔てなく、助けを求める者を助けて邪悪な力や存在を破壊していった。そして、命をかけて人と聖獣を救うその姿にいつしか蓮姫様は皆を守る者……『守護者』と呼ばれるようになったんだ」
「皆を守る者……守護者……」
「そして、戦う時以外に蓮姫様が平穏に暮らすために人々が集まって大きな社を作った。それが俺の実家でもある蓮宮神社だ。もっとも、初代の時と違って何回も増改築をしたから色々変わってるけど」
「つまり、蓮宮神社は蓮姫様と人々の思いが詰まって出来た神社って事なんだね」
「ああ。そして、蓮宮神社が出来た頃に蓮姫様は一人の男性と出会ったんだ。それが、蓮姫様の旦那となる旅医者の波音様だ」
「蓮姫様の夫が旅医者……?」
意外や意外だった。
人と聖獣を守る者である蓮姫様の旦那さんがまさかの旅医者とは思わなかったので目を皿のように丸くした。
一体どんなラブストーリーがあるのか少しワクワクしてしまう。
「それで、蓮姫様と波音様の馴れ初めは!?」
「さあ?知らない」
ズドーン!
まさかの知らない発言に私はベッドから転げ落ちてしまった。
「知らないって何よぉ〜!?」
「だって文献がないんだから仕方ないよ。蓮姫様の日記でもあれば分かったかもしれないけど、蓮宮神社の何処を探してもそんなのはないし、蓮宮神社に現存で残されているのは蓮宮の歴史や霊操術の使い方や蓮宮の戦い方が乗った古い書物だけだから」
「そんなぁ〜!あ、でも!波音様には音の感じが使われているから何か意味があるの!?」
天音だけでなく確か天音のお父様や他の家族のみんなにも名前に『音』の漢字が使われている。
「よく気づいたな。蓮姫様は自分と波音様の思いを後世に残すために、自分達の名前を子孫に刻ませることにしたんだ」
夫婦それぞれ名前の一部を子孫に継がせるか……とっても素敵な考えね。
「全ての始まりである蓮姫様の『蓮』は蓮宮の苗字に継がれた。そして、波音様の『音』は代々蓮宮の血を継ぐ人間の名前に付ける仕来たりになったんだ。実際に蓮姫様の後に続く二代目から十二代目の歴代当主、全員の名前には音が付いている」
なるほど、それじゃあいずれ私と天音の赤ちゃんにも『音』の名前をつけることになる……えへへ、どんな名前をつけようかな?
「とまあ、蓮宮の大体のことは話したけど、何か質問はある?」
「うーんと、今のところはないよ。また何かあったら質問するから」
「了解。さてと……そろそろ朝食の時間だな。学食に行くか?」
「うん!あ。ねぇ、天音……」
「何だ?」
「あの……朝食の後……買い物に付き合ってくれないかな?」
「買い物?」
「うん。私、十年ぶりに日本に帰ってきたから日本の日用雑貨とか見てみたいし、これから三年間は学生寮で済むから必要な物を買いたいの」
「そうか……千歳は小さい頃はあまり外に出られなかったし、十年も経てば色々外の世界は変わるからな。分かった、良いよ」
「本当に!?やったー!天音と初デートだぁ!!」
「えっ!?は、初デート!?いやいや、ただ買い物に行くだけだろ!?」
初デートと聞き、天音はひどく驚きながら顔を真っ赤にした。
「何言ってるの?年頃の男女が一緒に出かけるのよ?それがデートと言わずなんというのよ!?」
「えっ、あっ……あ、そうだ!白蓮と銀羅はどうする?ほったらかしにするのも……」
『私と白蓮はこれから用事がある』
「「えっ!?」」
何時の間にか銀羅と白蓮ちゃんは目を覚ましていて、扉の前で立っていた。
『これから悟空に呼ばれて宴会に行くんだ〜』
『悟空が昔の仲間を呼んで宴会を開くそうなので我等も招待された。何だかんだで私と白蓮は中国の方では吉兆の印だからな』
白蓮ちゃんは鳳凰だから言わずもがなだけど、そう言えば銀羅……九尾の妖狐は日本では大妖怪として恐れられているけど、逆に中国では吉兆の印として崇められているんだった。
そのおめでたい白蓮ちゃんと銀羅が御仏である悟空とその仲間達との宴会に招待されても何にもおかしくない話だった。
『と言うわけだ。天音よ、千歳と存分に愛でる……えっと、今風に言うなら、いちゃいちゃするが良い』
『お土産貰ってくるから楽しみにしててね〜』
「ちょ、ちょっと待って!千歳と二人っきりは流石にーー」
『『いってきまーす』』
そう言って銀羅と白蓮ちゃんは部屋を出て行った。
「うわぁあああああっ!?俺の最後の希望が中国に去ったぁっ!?」
天音……そこまで露骨に嫌がると流石の私でも傷付くよ……。
まあ私が何時も大胆に攻めまくって天音を困らせているのが原因かもしれないけど……よし、ここはあの手で行こう!
「ごめんね……天音、いつもいつも困らせて……」
私は素直に謝ると天音はキョトンとした表情になる。
「えっ……?千歳……?」
「師匠のアドバイス通りに色々してみたけど、全部ダメだったわ……でも、これだけは分かって欲しいの……」
私は天音にゆっくり近づいてそっと胸に寄りかかり、涙目で天音の顔を見上げる。
「私は天音が好き、大好き、愛してる……この気持ちはまぎれもない本当の気持ちだから……」
「わわわ、分かった!分かったから泣かないでくれよ、ちーちゃん……俺が悪かったって……」
天音はあたふたと慌てて泣きそうになる私を頭を優しく撫でたりして必死にあやす。
そう言えば、天音はたまに私の事を昔のように『ちーちゃん』と呼ぶけど、どうやら天音は動揺した時とかについ昔の癖で私をちーちゃんと呼んでしまうみたいね。
「えっと……これから出来るだけ変な事は言わないようにするから、デートに行こ?」
「……分かったよ。そんな昔のちーちゃんみたいな儚い感じで頼まれたら断れないよ……」
本当に天音は昔の私にベタ惚れね。
うーん、どうしょうこれは……今の元気な私も昔の儚い私も同じだけど、天音にとっては少し別みたいだけど……どうしたら攻略出来るのか考えさせられるわね。
まあとにかく、今は天音との初デートに専念しよう。
「じゃあ、朝食を食べた後に9時に校門南口に集合ね!」
「同じ部屋なのにわざわざ待ち合わせする意味はあるのか?」
「雰囲気よ、雰囲気!せっかくの初デートなんだから!」
「そういうものか?」
「そういうものなの!ちゃーんと可愛いお姫様をエスコートをしてね、天音♪」
「はい……かしこまりました、千歳姫様」
お姫様に付き添う従者のように礼儀正しい動作で対応する天音。
「うむ、よろしい。あははははっ!」
私もそれに悪ノリして答えると可笑しくなって笑ってしまう。
「はははっ。食堂行くか?」
「うんっ!」
私は天音の腕に抱きついてそのまま食堂へ向かった。
そして、今日は楽しい天音との初デートを存分に満喫するのだった。
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少しずつ天音と千歳の距離が近づいています。
次回はクラス代表戦です。




