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はじめてのおつかい

例の現場から2時間ほど歩いて森を抜け、そこからさらに3時間ほど街道を歩き続けると、漸く前方に街が見えてきた。


幸か不幸かここまでの道中、誰にも遭遇することはなかった。


森の中は兎も角、街道を何時間も歩いていて商人の荷馬車一台すら通らないというのは中々珍しい。


お陰で5時間も歩くことになってしまった。


流石にこれだけ長時間裸足で歩いているとダメージが馬鹿にならなくなってきたので足に向かってヒールを掛けてみると、見る見るうちに傷が直り、さらには疲労や筋肉痛まで回復した。


まぁ、誰にも会わなかったとは言っても、それはあくまでも人間に限った話だ。


街道を1人寂しくとぼとぼと歩いていると、ホーンラビットと我が同胞たるスライムに遭遇した。


兎に関しては今更1匹や2匹吸収したところで大した経験値にもならないので、ギルドで売却する為に殺した後、簡単に血抜きをして皮袋に放り込んでおいた。


確かこうしておけば腐り難くなると何かで見たことがある・・・気がする。


もしかしたら微妙に間違っているかもしれないが、それでもやらないよりは良いだろう。


ギルドで貰える討伐報酬が銅貨5枚、肉の買い取り価格は状態や大きさによって増減するが、基本的には銅貨5枚だ。


スライムに関しては腕を直接やつの体内に突っ込んで結晶を抜き取ってみたところ、肉体?を維持出来なくなったようでバシャーン!とその場で酸の水溜りになってしまった。


やはりスライムの弱点はこの結晶で正解だったらしい。


ちなみに、突っ込んだ腕は無傷だった。


俺の種族がスライムであることに関係していると思われる。


何故こんな暴挙に打って出たのかと言うと、無傷のスライムの結晶はギルドで高値で取引されているからだ。


結晶の大きさや色形にも因るが、無傷であれば最低でも銀貨5枚以上で買い取って貰える。


噂では世界の何処かに金貨数枚もの価値のある巨大な結晶も存在するとかいないとか・・・


兎も角、最低でも兎と比べて50倍以上の価値があるということだ。


その理由はひとえに取得の難しさにある。


知っての通り、スライムは多少体を削られたくらいでは死ぬことはない。


しかもその体は酸で出来ている為、剣を突き刺そうものならあっと言う間に錆びてしまう。


安全に結晶を採取する為に、スライムが身動き出来ないほど細切れになるまで攻撃して行くとしたら、確実にボロボロになってポッキリ逝ってしまうことだろう。


どんなに安物の剣でも銀貨3枚以上はするので、そこらの冒険者にとってはリスクと手間を考えたらあまり美味しい相手ではない。


しかし、スライムたる俺なら話は別だ。


この体はあくまでも擬態に拠るものなので、万が一腕が捥げたとしても大した問題ではない。


そんな訳で、俺は徐に彼(彼女?)の体に腕を突っ込んで、強引に結晶を抜き取ったのだった。


じゃーもしスライムが大量発生したらヤバくね?と思うかもしれないが、スライムは火属性の魔法を使えば簡単に殺すことが出来る。


尤も、その代わりに結晶が黒く濁ってしまうので、宝石としての価値はゼロになってしまうが・・・




「お仕事、ご苦労様でーす!」


街に着く前に思いがけず大金をゲット出来た俺は、愛想良く門番に話し掛けた。


「・・・街に入りたいなら身分証を提示しろ。それと、フードを取って顔をちゃんと見せろ」


若い女が愛想良く挨拶してやったというのに、30代後半と思われる門番のおっさんはぶっきら棒にそう返して来た。


「ちょ、先輩!相手は女の子ですよ?そんな言い方したら、怖がられちゃうじゃないですかぁ!」


こちらは20歳前後の若造だ。


サラの記憶には一切ないので、この数日の間に新人研修か何かで配属されたのだろう。


「いえいえ、お気になさらないで下さい・・・これで良いですか?」


俺はフードを外してサラに擬態した顔を晒し、ニッコリ微笑みながらギルドカードを差し出した。


「おぉー・・・・・・・・・はっ!え、えーっと・・・冒険者ギルドのサラさんですね。ど、どうぞお通り下さい」


若造は(サラ)に暫らく見蕩れていたが、おっさんの殺気の篭もった怒気によって我に返り、手早くギルドカードを確認して俺に通行許可を与えた。


「それでは失礼します。お仕事頑張って下さい」


俺が通りすがりに若造に向かってウィンクをすると、やつは目に見えて鼻の下を伸ばし、次の瞬間おっさんに鉄拳制裁を喰らっていた。




首尾良く街に入ることが出来た俺は、先ほどの門番たちの事を考えていた。


おっさん門番の方はかなり優秀なようだ。


俺が色仕掛け染みた態度を取っても眉一つ動かさず、いつでも腰の剣を抜けるように警戒していた。


一方、あの若造は駄目だ。


あの程度の色仕掛けでデレデレしているようじゃ、もしも門番があいつ1人だった場合、犯罪者が入り放題だろう。


俺個人の意見だが、門番ってのは新人や役立たずがやるような仕事ではない。


手持ちの中で最強の駒を使えとまでは言わないが、賊が襲撃して来た場合、撃退出来ないまでも最低限最初の攻撃を凌ぎ切り、周囲へ賊の襲来を知らせることが出来なければ、そんな奴は案山子と大差ない。


その点で言えば、あのおっさんは文句無く合格だ!


まぁ、ああもぶっきら棒なのはどうかとも思うが、無能よりは百倍マシだ。


俺が武器一つ手に持っていない女であろうとも、油断せず俺の一挙手一投足に目を配っていた。


ああいう男が門番をしているなら、街中でもある程度安心して過ごすことが出来るだろう。


勿論人が大勢集まっている以上、闇という物は常に存在するが、そこまで1人の人間に求めるのは酷というものだ。




俺は再びサラからグラビアアイドルの姿に擬態する為に、周囲に誰もいないことを確認した後に物陰に身を隠した。


このままサラの姿で街を闊歩していて万が一シェリーに遭遇しようものなら、確実に面倒な事態になるからだ。


俺は擬態する瞬間を誰にも見られないよう、細心の注意を払って素早く擬態した。


そして、食事をしたり宿屋を確保したりする前に、服や下着、靴などの必需品を買う為に服屋に向かうことにした。


特に靴は最重要物資だ!


門番たちは俺が冒険者だってことで殊更怪しんだりはしなかった(時折ボロボロの格好で帰還するやつもいるから)が、街中でいつまでも裸足でいるのは少々目立つ。


俺は、サラが贔屓にしていた服屋までの最短距離を早足で歩いて行った。




「いらっしゃいませー!」


俺が服屋兼雑貨屋である店に入ると、店員の20代前半の女性が元気良く挨拶してきた。


「すいません。靴を1足と、服と下着をいくつか欲しいんですが」


サラの記憶にはこの女性に関する物が結構あるものの『俺』はあくまでも初対面なので余計なことを口にしないように注意が必要だ。


「あら、そーいえば貴女裸足じゃないの。いったいどーしたの?」


彼女は心配そうに俺の顔を覗き込んで来た。


「スライムの酸が当たっちゃって溶けてしまったのよ」


「あぁなるほど、貴女も冒険者さんだったのね。ウチの常連さんにも1人かわいい女の子の冒険者さんがいるんだけど、最近女の子の冒険者って増えてるのかしら?モンスター退治は危険と隣り合わせだって言うし、貴女も気を付けなさい?」


・・・サラのことだろうな。


店員と客の関係とはいえ結構仲が良かったようだし、このまま別れの言葉もなく二度と会えないというのも少々可哀想だ。


シェリーの件が片付いたら、サラに擬態して一言別れを告げてあげても罰は当たらないだろう。


「えぇ、心配してくれてありがとう。それで、ここにはどんな靴が置いてあるのかしら?」


「ウチには大抵の物が揃ってるわよ?そーねぇ、冒険者さんならやっぱりブーツがお勧めかな?」


「お値段はどのくらい?」


「ブーツなら銀貨1枚から10枚までピンキリになるわ」


「うーん、武器や防具も買わないといけないから、ブーツだけに予算は掛けられないのよねぇ・・・」


「なら、一先ずは間に合わせで安いやつにしておいたらどーかしら?ステータス補正が何も無いってだけで、ブーツその物としての品質は保証するわよ?」


「そう、ならそれにしようかしら」


「毎度どーも。後は下着と服だったわね?ブラのサイズはいくつ?」


「DかEだと思うんだけど、最近測ってないから正確な数値は分からないわ」


「なら今計っちゃいましょうか?奥に試着室があるから付いて来て」


彼女はそう言ってメジャーを手に取り、奥の試着室へと俺を誘導した。




「・・・あんっ!」


メジャーが乳首を擦った瞬間、反射的に声が出てしまった。


「ちょっとー、変な声出さないでよ」


俺の正面でメモリを見ていた女性が、半眼で抗議をしてくる。


「んっ・・・御免なさい。擽ったかったものだから・・・」


「えーっと、88のEね・・・形も綺麗だし、羨ましいわぁ」


彼女は俺の胸を指でプニプニと突いて来た。


「ちょ、止め・・・」


「全く以ってけしからんおっぱいだわ!何を食べたらこんなに大きくなるのかしら?」


すると今度は両手を駆使してむにゅむにゅと胸を揉みしだき始めた。


「イヤー!犯されるぅー!」


「人聞きの悪い!ちょっと揉んだだけでしょ?良いじゃないの、減るもんじゃなし!」


「減ります!主に私の貴女に対する好感度が!」


「むむ、それは一大事。しょーがない、そろそろ開放してあげましょう」


彼女はそう言いながら残念そうに手を離した。


「はぁ、はぁ・・・」


自分で揉んだ時と違って、他人に揉まれるのがこんなに恥ずかしいものだったとは知らなかった・・・!


「兎も角、これでブラのサイズは分かったし、次は色ね。何色が良い?」


「うーん・・・黒と赤と紫を1着ずつで」


ロリに擬態して縞パンとか履いてみたいけど、流石にこの姿で縞パンを買うのはちょっと無理www


「おっけぇ。最後は服ね。どんなのを何着必要なの?」


「とりあえず、戦闘用の物を予備を含めて2着と、部屋着兼寝巻きを1着だけで良いわ」


「戦闘用のは丈夫な生地の物にするとして、部屋着はパジャマとネグリジェどっちにする?」


「ネグリジェで!」


折角グラビアアイドルに擬態しているのだ。


ここはネグリジェ一択に決まっている。


異論は認めない!


「色は?」


「ピンクで!」


「りょーかい。持って来るから、ちょっと待ってて」




「・・・どうかしら?サイズは合ってる?」


「えぇ、ぴったりよ」


俺は試着室の中でくるくる回りながら彼女の質問に答えた。


「良かった。それじゃー、着替え終わったらカウンターに来て」


「あっ、そうだ!戦闘用の服はこのまま着て帰りたいんだけど、良いかしら?」


カウンターへと戻ろうとした彼女を俺は慌てて呼び止めた。


「えぇ、構わないわよ。また何か聞きたいことがあったら、遠慮せず呼んでね?」


彼女はカーテン越しに服を1着俺に手渡し、今度こそカウンターへと戻って行った。


俺は試着室から顔だけを出し、彼女の姿が見えなくなったのを確認して、ネグリジェ姿のまま鏡の前で次々と扇情的なポージングをとってみた。


・・・くっ、今ほどデジカメが手元に無いことを悔やまれる日はない。


既に全裸をゴブリンの巣で見ているとはいえ、それと着エロは別腹である!


大事なところがギリギリ見えそうで見えないからこそ、男たちはそこに夢を抱くのだ!


・・・はっ!しまった。ちょっと熱中し過ぎた。


あんまり遅いと彼女に怪しまれてしまう。


俺は素早くネグリジェを脱ぎ、ブラを身に付け、購入予定の服を着込んで、脱いだばかりのネグリジェを片手にカウンターへと戻って行った。




「・・・遅かったわね?何かあったの?」


「い、いえ、大したことは・・・」


「・・・?まぁ良いわ。それじゃーお会計だけど、ブーツが100G、服が2着で200G、ネグリジェが90G、下着は上下3セットで120Gだから、合計510Gね。ついおっぱい揉んだりしちゃったし、端数の10Gはオマケしてあげるわ」


彼女はペロッと舌を出して微笑んだ。


あんだけ胸を揉まれまくってたった10Gかよ!とも思ったが、その仕草に中々グッとキタので許してあげることにした。


「ありがと、じゃー銀貨5枚ね」


「はい、毎度どーも。そーいえば、自己紹介してなかったわよね?私の名前はクリスティーナ。長いからクリスで良いわ」


「私の名前はナギサよ。よろしくねクリス」


「えぇ、お金が貯まったらまた来て。それまでに、もっとかわいい下着とネグリジェをいっぱい仕入れておくわ」


俺はクリスと握手をし、荷物を受け取って店を出て行った。

やべぇw渚の女口調に全く違和感が無いwww

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