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転生

前作から時間が空いてしまったので、リハビリがてら違う作品を書いてみました。



俺は今、天国(?)で長蛇の列に並んでいる。


何の列かと言うと、どんな世界で何に転生するかを決める為の列だ。


列は2種類あり、左が科学の発達した世界で、右が魔法の発達した世界の列だ。


左はさっきまで俺が生きていた地球だと思われる。


そして右は所謂ファンタジー世界ってやつだろう。


みんな考えることは同じようで、大半のやつが今まで生きて来た世界とは別の世界に転生する為の列に並んでいる。


ちなみに俺は右の列に並んでいる最中で、俺の周りのやつらの顔や服装も似たり寄ったりだが、左の列に並んでる連中は実に多種多様である。


エルフや獣人だけでなく、ゴブリンやオークといった所謂モンスターに分類されるであろう存在まで列に並んでいるのだ。


勿論、俺らとほぼ変わらない外見をした人間(ヒューマン)も多数いる。


しかし彼らの格好を見れば、生前はファンタジー世界の住人だったことは一目瞭然だ。


だって、金属製や皮製の鎧を着て、剣やら弓やらの武器まで手に持ってるんだもんよ。


若しくは、ハンドメイド臭が半端ない服を着た人のどっちかだ。


魔法の発達した世界というだけあって、恐らく科学技術は精々中世レベル止まりなのだろう。


「次の方、どーぞー」


若い女性の声に反応して、最前列に並んでいた30歳くらいのおっさんが係員の女性の下に進んで行った。


俺がこの列に並んでから既に1時間は経っている。


最初こそ周りのやつら同様、隣の列に並んでいる彼らを眺めて興奮していたのだが、いい加減飽きて来たので列が進むにつれて最前列の連中が何をやっているのか徐々に見えて来たのを幸いに、その様子を観察することにした。


・・・どーやら、スロットで転生する種族とボーナススキルを決定しているらしい。


残念ながら、自分で好きな種族を選ぶことは出来ないようだ。


「えーっと・・・種族はエルフで、性別は女性、スキルは魔力微増ですね」


「っしゃー!女エルフキター!」


おっさんがガッツポーズをしながら吼えた。


・・・あの冴えないおっさんが女エルフに転生するのか。


才能は魔力微増とショボイけど、隣の列を見る限りエルフは美形ばっかみたいだし、正直羨ましい。


周りのやつらも口々に羨ましがっている。


まぁ、それも当然の反応だろう。


どーせ転生するなら、不細工よりも美形の方が良いに決まっている。


間違っても、ゴブリンとかオークは勘弁して貰いたい。


おっさんの次にスロットを回した女の子なんて、オーク♂に当たちゃって号泣してたし。


そんな人々の一喜一憂を観察すること数十分、漸く俺の番が回って来た。




「えーっと、貴方の死因は事故死ですか。これはお気の毒に。ですが、きっと来世では良い事もありますから、くよくよしちゃ駄目ですよ?では早速ですが、まず左のスロットの停止ボタンを押して、転生する種族を決定して下さいね?」


俺は係員の女性の励ましを聞き流しつつ、促されるままにボタンを押そうとしたのだが、ふとある事に思い至り、その手を止めた。


「・・・あら?どーしたんですか?」


係員さんが手を止めた俺に怪訝な顔を向ける。


「ボタンを押す前に、ちょっと質問しても良いっすか?」


これだけは、どーしても確認しておきたい。


「えぇ、私に答えられる事でしたら構いませんけど、後が支えているので手短にお願いしますね?」


「んじゃ単刀直入に聞きますけど、転生したら俺の記憶や自我ってどーなるんすかね?」


「あぁ、その事ですか。それは当然『転生』ですから、綺麗さっぱり消滅しますよ?」


くっ、どーやら嫌な予感が的中してしまったようだ。


「出来れば記憶と自我を残したままが良いんですけど、何とかなりませんか?」


「うーん・・・出来なくは無いですけど、過酷な来世になる可能性が高いですよ?」


「俺が俺のままでいられるなら、そのくらい構いません!」


「・・・そーですか。そこまで仰るなら、これ以上お止めはしませんが、やり直しは出来ませんよ?」


「大丈夫です。お願いします」


「わかりました。それではこっちの特別製スロットを使用して下さい。これは種族と才能がセットになっておりますので、ボタンを1回押すだけで結構です」


女性が手を翳すと、新たなスロットが俺の目の前に出現した。


「エルフ来いっ!」


俺は気合を入れてストップボタンを押した。


目押し防止の為かボタンを押した瞬間にドラムが止まる仕様ではないらしく、高速で回転していたドラムのスピードが徐々に遅くなって行った。


「・・・頼むぞ!せめてヒューマンか獣人で止まってくれ!」


しかし、そんな俺の祈りは届かず、止まった種族はスライムだった。


「バ、バカな・・・スライムだと?」


性別すらないとかゴブリン以下じゃね?


「プッwスライムとかカワイソスwww」


俺はその声のした方へ咄嗟に振り向くと、俺の後ろに並んでたやつら数十人が口元を押さえながら肩を震わせていた。


ち、ちくしょう・・・そ、そうだ!能力は?能力次第では、まだ挽回可能かもしれない!


俺は才能に一縷の望みを託して再びスロットに目をやった。


「・・・擬態?あのー、これってどんな能力なんすか?」


「擬態は『ある条件』を満たすことで、他種族に化ける事が出来る能力ですね」


なるほど、記憶持ったままスライム生活とかどんな拷問だよ?と思ったが、その『条件』ってのを満たしさえすれば、人間にもエルフにも化けられるようになるってことか。


「・・・ちなみに『条件』を教えて貰えたりは?」


「しませんね。それはご自身で見付けて下さい」


ですよねー。


「そろそろ良いですか?それでは、来世を頑張って下さい」


女性がそう言うなり視界が真っ白に包まれ、俺は思わず目を閉じてしまった。

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