表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

ここから始まる物語3

 まだまだ、諦めないよ


 次元を移動する際にはっきりと聞こえた少女の声。

 その言葉が頭から離れず、少し憂鬱な気分で道を歩く。

 時刻は午前八時。曜日は(つき)

 週の始まりだから、休みはまだまだ来ない。そんなことを考えるとまた気が重くなる。

 ここは都会とも言えないし、田舎とも言えない、中途半端な場所だ。

 楽しみはない、失ったのかも知れない。

 学校に行くのが嫌という気持ちも起こらない。今や、当たり前のことになってしまったので、行かないと逆に気持ち悪い。

 天気は晴れ、コンクリートは少し濡れ、雨の臭いがする。

 通学する生徒は、皆楽しそうに談話しているが、一人の生徒はポツリと、孤独に歩いている。

 村里志摩(むらさとしま)

 この場では彼だけ、孤独だった。



***



 朝礼、授業、終礼を聞き流して、すぐに放課後になる。

 生徒は次々に席を立っていくが、志摩は動かない。

……なんだか、めんどくさいな。

 学校でこんな気分になったのは始めてだった。

 今この場で席に座っているのは、志摩を含め、二人だけ。

 もう一人は、ピンク髪の幼い顔立ちの少女。

 なぜあんな派手な髪色の少女が目立たないのか、志摩には分からない。

 少女に少し目をやると、あちらも顔を上げ、こちらを見つめてきた。

 少し苦笑いをして、目を反らす。

 まあいいか、とすぐに興味を失ってしまった。


 ぼうっと三十分くらい席に座っていた。

 さすがにそろそろ帰ろうと思い、席を立つ。

 鞄がないことに気付く。


「はぁ……」


 今日始めての言葉がそれだった。

 言葉というよりは、息を吐き出したという表現のほうが正しい。

 今日の朝と同じように、何も持たずに帰った。


 ふとオレンジで染まった空を見上げて、あの子はどうしたんだろう、と思う。

 暇潰しの機会を自分で潰してしまったわけだが、なんだか気になった。

 まあ、だからどうというわけでもないが。


「うぅ……」


 どこからか聞こえてきた呻き声に、足を止める。

 ここは大通りの道。車が行き交うこの道路でそんな小さな声が聞こえる筈がない。

 気のせいかな……そう思って再び歩みを進める。


 家には「おかえり」と言ってくれる家族も、「ただいま」と言える家族もいない。それはいつものこと。

 でも、それでも悲しさはある。

 そんな気持ちを押し殺し、生きてきたが、そろそろ限界だった。

……こんな現実の何がいいのか、僕には分からない。

 分かる筈がないんだ。

 なら、現実じゃない場所に逃げよう。

 異次元でも、どこにでも。

 人のいない場所に逃げよう。


短期連載なんで、ここで終了です。つまらない終わり方ですみません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ