虚偽と真実
「ところで修君は聖書とか宗教とかなにかわかる?」
難しい質問だ。
はっきり言って僕は無宗教だし、あまりそのような事には興味はない。
「なるほど、このブロックの地区の方はやっぱりそんな人が多いのね」
ふぅ、とため息をついている。
「じゃあ今の世界の状況は?」
それなら少しはわかる。とはいってもニュースなどで流れる情報だけだが。
たしか、4年前 EU大統領となった人物が中東和平に成功した。
世界は称賛して、彼の言う世界統一国家の樹立に走った。
実際、世界経済はボロボロの状態だったので、まさに溺れる者は藁をもつかむ状態だった。
現在世界はすべてブロックに分けられ、かつての日本はアジアブロックに過ぎないという訳だ。
「よくできました♪表の方はとっても詳しいね」
ニッコリ笑ってオラクルは言っている。
・・・表の方?・・・どういう意味だろう?
「さて、表向きは世界は平和のようだけど・・・実際は?」
実際? そうだな・・・確かに最近は世界中で内戦や天変地異、正体不明の病気などが蔓延している。
「それらはすべて、あなたの様に悪魔の宿った人間が実行してるんだよ」
悪魔が宿った人間?それは戦争も病気もそうなのか?
「世界に散らばった悪魔の宿った人間は、皆それぞれ役目があるの」
オラクルはベッドの下から何やら本を取り出した。
・・・微妙に埃っぽい・・・。そして僕には何が書かれているかわからない。
「そしてアナタたちの役目はこの言葉よ」
~for then shall be great tribulation, such as hath not been from the beginning of the world until now, no, nor ever shall be.~
~And except those days had been shortened, no flesh would have been saved: but for the elect’s sake those days shall be shortened.~
~その時には、世の初めから現在に至るまで、かつてなく今後もないような大きな患難が起るからである。
もしその期間が縮められないなら、救われる者はひとりもないであろう。しかし、選民のためには、その期間が縮められるであろう。~
さっぱり意味がわからない・・・
「この国、3年前日本と呼ばれていた国が最後の審判の国なのよ」
最後の・・・審判・・・それは
「アナタたち悪魔を宿した者の一人が最後の期間を縮めるかどうかを決めるの」
オラクルは立ち上がり、僕の頬を軽く撫でた。
「世界をどうするかはアナタたち次第・・・これは高き方々が決めた人間の審判」
ひんやりと冷たいオラクルの手が僕から離れる
世界を・・・人間の行く末を僕たちが決める?
そんな馬鹿な!!僕はただの人間だ。
そんな大それた事出来るはずが無い。
「でもアナタは選ばれた。ただの人間の代表として、その身に悪魔を宿した」
宿した?宿されたの間違いじゃないのか!!
僕はただ平凡に生きていたかった。はっきり言って僕には人間の審判を決めるなど重すぎる
「・・・じゃあ、この子も見捨てるの?」
彼女の目線の先には妹が寝ている。
たったひとり僕に残された家族
その身に悪魔を宿し、いつ目覚めるかもわからない・・・
そして、僕の不注意でそうなってしまった妹・・・
「そうね、決めるのはアナタ・・・私はあなたの決定を尊重するだけだから」
彼女の赤い目が告げる「逃げられない」と・・・
そうだ・・・もうこれ以上逃げる事は出来ない・・・
家族を救えなかった自分、この絶望を他の人に与えてはならない。
何ができるのか、今の僕にはわからない・・・
でも
「覚悟は・・・できた?」
あぁ、できたよ
僕はこの審判を終わらせる。
世界を救うためじゃない。僕にはそんな大それた事は出来ない。
なら、この手でつかめるものだけでも守ろう




