疑いと信頼
その日は大変だった。
当然と言えば当然である。
両親が殺され、妹は行方不明|(居場所は知っているんだが)
マスコミがこぞって僕に質問してくる。
吐き気がする。
はっきり言って彼らは少しも僕を哀れとは思っていない。
ただ、その日の目玉であるため面白い証言がとれないかと目をキラキラさせている。
お願いだから僕に構わないでくれ。
僕は警察に勧められ、近くのホテルにしばらく身を落ち着けることにした。
ホテルの一室で一息つく。
そうだ、あのとき僕を助けてくれたこの悪魔にお礼を言っていない。
あのときレッドキャップの斬撃をこの悪魔が防いでくれていなければ、僕はここに居なかった。
「・・・悪魔にお礼を言うなんて、本当に変わってますね修さん」
あきれ果てた声で左手に宿った悪魔は僕に話を続ける。
ふと、僕の周りを小さな蠅が飛んでいる。
「自分の手に話しかけていては変な感じがするでしょう?これも私の姿ですからしばらくはこの姿でいますよ。」
そうか、この悪魔はベルゼブブ、確か蠅の王と呼ばれる大悪魔だ。
ふと疑問が浮かぶ。
レッドキャップが言っていたように、これほどの悪魔が何故僕の体に宿ったのだろう?
「う~ん、確かに私を呼ぶことができる人間がいるとは思いもしませんでしたが・・・」
・・・なんとなく小さな蠅と話していると独り言を言っているようで変な感じだ。
「とりあえずこの世界の選定に選ばれたのですから、あの方々に感謝しないといけませんね」
あの方々?これほどの大悪魔が感謝するというのは一体誰なんだろう?
「あぁ、こっちの話です。それにあの方々の名前を口に出すことは許されませんからね」
それだけ言うと、ベルゼブブは隅にある花瓶の方へ飛んで行った。
どうやら花瓶に挿してある花を寝床にするようだ。
「修さん、明日は教会に行くようですがくれぐれも気を抜かずに!」
重い声でベルゼブブは告げる。
それは、いかに親切な人間であっても決して油断をするなという、この悪魔からのアドバイスなのだろう。
たしかに妹を匿ってもらってはいるが、僕がこの世界に入ってしまったのも彼女のせいである。
駄目だ、今は頭が働かない。
今夜はもう寝ることにしよう。
そして、この戦いの意味をオラクルに聞いてみる事にしよう・・・
そして次の日、僕は教会の前に立っていた・・・




