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掌の悪魔  作者: 土竜会
21/22

少女が死んだ日

 「・・・さん、・・・ルさん」


んっ・・・?


だれ?


「オラクルさん、こんな所で寝ていると風邪をひきますよ」


あぁ、私眠ってたんだ・・・。


そうだ、掃除が終わって・・・礼拝堂で一息ついてたら・・・


「お疲れのようですね、他のシスターたちも貴女の様に熱心だとありがたいんですがね、」


神父様はふぅとため息をつかれている。


「それにオラクルさん?やはり上の部屋の方が良いんではないですか?」


上の部屋。


そう、私の部屋は他のシスターたちとは違い、地下室を利用している。


お気づかいありがとうございます。


ですが、私はあの部屋が落ち着くのです。


「そうですか。では今日はもう遅いですから、ゆっくりと休みなさい」


私は神父様に一礼して部屋へと続く通路を進んでいた。


「あら、オラクル」


こんばんは。


「こんな時間にお祈り?熱心ね」


彼女はこの教会のシスターの一人、


あまりよく話さないけれど、悪い人ではない・・・


多分・・・。


「礼拝堂の明かり消しといてね」


あくびをしながら行ってしまった。


ドアの前に差し掛かると私の左手に宿った彼が話しかけてきた。


『あの部屋が落ち着く?よくもまぁそんな出まかせを』


出まかせ・・・。


あながち間違いではない。


本来私にとって地下室は最も忌むべき場所なのだから・・・。



部屋に戻ると彼の妹が眠っている。


そう、昔の私と同じように・・・


『思い出すなセイラム、昔のお前と同じだ。」


!!その名前は捨てた。


二度と言わないで。


『これは失礼、そうだな・・・昔のお前とは決別したのだったな』


決別・・・。


その通りよ、あの時代の私はあの時、あの場所で死んだのだから・・・





時代はかなりさかのぼる。


その頃の私は、今のイタリアの小さな集落にいた。


生まれついて白髪だった私は呪われた子供として迫害を受けていた。


ずっと考えていた。


私は何のために生まれたのだろう?


謂れのない事で私だけではなく、悪魔を生んだ女として私の母も肩身の狭い思いをしていた。


「大丈夫よセイラム、きっと神様は私たちを見捨てはしない。」


どんなにつらい扱いを受けても、母は明るくふるまっていた。


あの事が始まるまでは・・・。



その年、国全土にひどい疫病が広がった。


そして・・・あの日、


「となりの集落でも沢山の人間が死んだそうだ。」


「やはりこれは悪魔の仕業に違いない」


暴徒と化した村人が私たちの家にやってくるのには時間はかからなかった。


「貴様たち悪魔のせいだ」


「悪魔を生んだこの女も魔女に違いない!」


殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。殺せ。


狂ったように村の皆は私の家族をなぶり殺し、私は村の寺院に連れて行かれた。


「悪魔を殺せば報復があるかもしれない」


「ならばいっそ、この寺院の地下室に閉じ込めよう」


私は地下室に連れて行かれ手足を壁に打ち付けられた。


ちがう!


私は悪魔なんかじゃない


皆と同じ一人の人間なんです。


私の言葉は通らない。


あぁ、なんて人間とは醜い者なんだろう。


扉が閉められる。


真っ暗になった部屋の中に、扉が埋め立てられている音が響く。


手足は杭で壁に打ち込められていて身動きがとれない。


声がかれるまで私は叫んだ。


助けて下さい。


私は何も知らない。


私は何もしていない。


私の声は・・・誰にも届かなかった。


そして私の命はここで終わるはずだった。


『助かりたいか?』


朦朧とする意識の中、何かが私に語りかけてきた。


『もう一度聞こう、助かりたいか?』


貴方は・・・だれ?


『お前はただ答えればいい』


助かりたい・・・


私はまだ死にたくない。


『そうか、では私と契約を交わそう』


契約?


『来るべき日の為に、お前は選定者となるのだ』


そういって彼は私の左手に宿った。


『私の名前はネビロス、さぁ選定の日まで眠るがいい』


そうして私は意識を失った・・・。



目を覚ました時、そこは私の全く知らない世界だった。


そうか、この世界が選定の日になるのか。


私の体に刺さっていた杭は既に朽ち果てていた。


どれだけ眠っていたんだろう。


身体が全く言う事を聞かない。


壁伝いに埋められた扉にたどりつき、左手の悪魔に扉を開放させた。


寺院はボロボロに朽ち果てていて、周りには何もない。


ただただ原っぱが広がっているだけだ。


なにも・・・なくなってしまった。


村も、家も、家族も・・・


『さぁセイラムよ、契約の土地へと向かおう』


まって、ネビロス。


セイラムは、あの時死んだ。


『ほぅ、では今のお前はなんなのだ?』


私はひそかに胸にしまっていた聖書の一部を取り出した。


私はオラクル。


選定の日に導く高き方の神託となろう。

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