終わりの始まり 2
急いで家に帰り、食事もとらないまま僕はベッドにうずくまった。
今日のあの出来事が頭から離れない・・・
もう一度思い出してみよう。
バイトが終わって僕は近道をしようとあの路地に入った。
その時、目の前に広がっていたのは綺麗な黒髪を靡かせた女性がガラの悪そうな男に絡まれている姿だった。
「なぁ、こんな路地にいたら危ないよ?俺が送ってやるからさぁ~家に案内してよ」
たしかこんな会話だったと思う・・・彼女は少し笑って自分の左手に何かを話していた。
一瞬だった・・・彼女が左手を男にかざした瞬間、今まで人間だったものはただの肉塊
にかわっていた。
ふと疑問が浮かんだ。
何故彼女は自分の左手に何かを話していたんだろう?
むしろ手をかざしただけであんなに簡単に人が殺せるものなのか?
そして・・・何故僕は目の前で人間が死んだのにこんなに冷静に居られるんだろう?
「それはキミも同類だからだよ」
ドアの向こうから聞きなれない声がした
誰だろう?母親ではない・・・そして尋常ではない寒気に僕は襲われた。
ドアを開けてはいけない!
答えてはいけない!
僕の中の何かが必死に警告している。
「?・・・聞こえてるよね?もしかして・・・怖いの?」
ドアの向こうの声は楽しそうに笑っている、頭の中の警告はどんどん大きくなっていく
鼓動が速くなる
息がつまる
まるで蛇に睨まれたカエルだ。
「あ~あ、残念。キミ臆病なんだね~」
声が遠くなっていく、僕を縛っていた緊張がゆるんでいく
「でも・・・」
「逃げられないんだよ?」
僕の肩に手がおかれた
ドアは開いていない
何も入ってきていない
入っているはずがない
でもそれは後ろに居る
「こんばんわ♪」
振り向けない。振り向いてはいけない それは人間がかかわっていいものではない!
「んふふ、こんなに汗かいちゃって、○○○の言ってた通り・・・キミ可愛いね」
首に手が絡まる。耳元で何かが嬉しそうに呟いている。
「やっと会えたよ、キミも私も・・・なんだから」
手が解け、それは目の前に現れた。
銀色の髪、真っ赤な目、色素のない肌、年の頃はおそらく僕と変わらない15~17歳くらいの少女だ。
シスターの格好をした少女は僕の顎をそっと持ち上げた。
「ホント・・・美味しそう・・・」
まるでご馳走を見るように少女はうっとりと僕を見ている
「今日のこの瞬間からキミは・・・」
少女の顔が近づく、目の前に銀色の髪が広がる
「その身に悪魔を飼うんだよ」
鈍い音とともに、目の前が真っ赤になった。
ふと下を見ると既に僕の体は血で染まっている
動けない・・・痛みのせいではない、何が起こったのか頭の整理がつかない。
死ぬのか? 僕は・・・何もわからないまま・・・
嫌だ! 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!
傷を抑えフラフラと立ち上がる。目を閉じればすべてが終わる。終わりたくない!死にたくない!
ドクンッ!!
僕の中で何かが鳴った
「さぁ、始まるよ。」
傷口に黒い何かが集まってくる。それはまるで生き物のように絡みつき、傷など初めからなかったかのように消えてしまった。
「ようこそ、こちら側のせかいへ」
少女は嬉しそうに僕を見ている
「これでキミは人間であることを捨ててしまえたね」
人間であることを?何をいっているんだ?
「これで人数がそろった、やっとゲームが始められる」
僕に抱きつき彼女は話を続ける
「もうちょっとしたらわかるよ、キミの左手が教えてくれるから」
左手が教えてくれる・・・何を言っているんだ?
少女は僕から離れ、窓の方へと向かっていった。
「じゃあまた今度、寂しいけどまたすぐ会えるから」
それだけ言うと少女は窓からあふれてくる闇に吸いこまれていった・・・・




