盲目的な少女2
「・・・」
オラクルは黙っている、
まるでこの事を話していいのかと迷うように。
「沢山・・・死んじゃったのね」
ベッドで眠っている僕の妹の頭を撫でながら、オラクルは一息ついた。
「彼女の気持ち・・・分からなくは無いの・・・」
オラクルの目が僕に訴える。
彼女の真実が知りたい?と・・・、
迷っている僕がいる、
はたして僕は彼女の真実を知る権利があるのだろうか?
自分の手を見る、
この手で彼女を救えるのか?
オラクルの目を見ればわかる。
それはとても重いものであるのだ・・・
不意にオラクルが笑った。
まるで教師が生徒を見るような優しい目で
「修君は優しいね、彼女の事を心配してる」
いや・・・、僕はそんな大層なものではない。
ただ蓮華の目が、笑っているようで泣いていたから・・・
「・・・わかった、教えてあげるね。」
静かにオラクルは話を始めた・・・。
「私が知っているのはこれだけ、後は修君が判断して」
衝撃的だった・・・まるで出来の悪い三文小説だ。
家庭の中での奴隷・・・それが彼女の存在・・・。
思い出しただけで吐き気がする
その日を生き抜くために実の父親に体を売り、わずかな食事を手に入れる・・・
僕なんかじゃ考えられないような地獄を経験していた蓮華・・・
こんな世界なんかいらない・・・彼女が呟いていた言葉が、何度も頭を廻る。
ゆっくり立ち上がる、
頭の整理がつかない・・・
オラクルに礼を言って彼女の部屋を後にする。
「いやはや、人間は面白いですね」
左手の相棒は何とも楽しそうに話しかけてくる。
「一方は目を覚まさない妹の処へ足しげく通い、一方は家族の奴隷・・・」
やめてくれ・・・ベルゼブブ、その話は今は聞きたくない。
「目を背けてはいけませんよ、知らなければならない事なんですから」
冷酷な声でベルゼブブは告げる。
「あの話を聞いたうえで、修さんがどうするか決める事なんですよ」
僕が・・・決める事・・・
明日の夜、彼女とまた会う。
あの話を聞いて、僕は冷静でいられるだろうか?
そして、事によっては彼女と戦わなければならない。
僕は彼女に牙を突き立てる事は出来るのだろうか?
(迷うな)・・・僕の心が告げる。
(戦え)・・・嫌だ、彼女を僕は救いたい。
(出来るわけがない)・・・確かにその通りだ。でも
何もせずにあきらめる事は、人形と同じだ。
「答えは出ましたか?修さん」
ありがとう、僕を奮い立ててくれて・・・
迷った心では前に進めない。
僕は・・・前に進もう。




