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異世界経由型搬送路

作者: qmmkruz
掲載日:2026/06/26

輸送問題を題材にした短編です。

異世界は舞台装置で、内容は行政寄りのSFになります。

軽く読める分量なので、お時間のあるときにどうぞ。


私は『運送省』に勤める官僚、役職は事務次官。


ある日、我が国の輸送問題の解決、それを放り投げられた。

まあ、問題解決は嫌いじゃない。例えそれが仕事でも、そうでなくても。

それに、パズルってのは解いて満足するものではない。解く過程を楽しむものだ。


さて、昨今の輸送に関する問題は大きく2つある。


A)慢性的な人手不足

B)輸送能力の低下


トラックドライバーの労働時間規制と荷主企業への法規制強化が重なり、慢性的な人手不足 と輸送能力の低下が顕在化している。

長距離輸送が困難になる中、中継輸送やモーダルシフトへの転換が急務となっている。


夜しか眠れない程に私は考え、悩み、そして閃いた。天啓と言っても過言ではない。

『だったら、通り道を増やせばいいんじゃない?』


高速道路やバイパス等、輸送の重要な幹線路を二重化する。

既存の道路を交通専用とし、輸送専用の道路を新たに設けるのだ。


A)慢性的な人手不足 → 長距離輸送の自動化により解決

B)輸送能力の低下 → 渋滞の影響軽減により解決


私はさっそく古文書をあたった。

あった、ありました。『異世界への扉を開く術』が。


構想としてはこうだ。


1)現在、輸送幹線路の拠点となっているA地点とB地点に異世界への穴をあける。

2)異世界側のA地点とB地点を直線的に結ぶ搬送路を建設する。

3)A地点とB地点の異世界側にも、輸送拠点を拡張する。

4)搬送路は自動化し、コンテナのみを移送する。

5)A地点とB地点から順次、延伸していく。


ただし問題はある。異世界には必ず存在する実体化したファンタジーだ。


このケースでは成り立つのではないだろうか、専守防衛。

国益、もとい、危険を伴う国策を理由に、多少の例外を認めさせれば。

そうだ、『縦割り』などと日和っている場合ではない。

今こそ、この国の官僚の力を結集するのだ。


こちらから見た異世界には、雄大で手つかずの自然が広がっていた。

陽光、大気、土、水などの環境に、ヒトに害を与える成分や要素は検出されていない。

しかし、その形や色合いは、こちらとは微妙に違って見える。


調査用に飛ばした隠密ドローン--熱と音もコンシールするタイプ--が採取した情報によれば、ヒト型ファンタジーの街がある。

文化的には中世から近代初期くらいまでのレベルだ。

ドローンが見つけた街に局員とレンジャーを派遣、潜入視察をさせたところ、武装集団としては、


・国家的な共同体に属する兵員

・探し物から戦争まで、依頼を生業にする集団


の2つがあり、肝心の武装としては主に刀剣や弓といったところだ。

特筆すべきは、魔法と、不思議な効果を示す武術だろう。

局員は「転生先でよくあるテンプレ異世界」などと報告をしてきたが、何のことやら。

とりあえず現段階では、件の異世界に近代兵器の脅威となる存在は無い、との結論を得た。


ともあれ、未開の地である。

建設にあたっては、かつて建設王国の名を恣にし、惜しまれつつも定年していった『建設の鬼』達の徴用…賦役…、いや、自発的な助力を得られた。

これには『労務省』や『邦土省』の協力が大きかった。


現場の防衛には、『防護省』の全面的な協力を得られた。

一時はクーデターとの謗りも受けたが、それはそれ、よくあることだ。


件の「異世界には必ず存在する実体化したファンタジー」にもうまく対処できているようで、


・4体のヒト型ファンタジーを排除

 修行僧、ビキニ型鎧、尼僧、フルアーマーの恰好をした

 ヒト型ファンタジーの襲撃を受ける。

 フルアーマータイプが効果不明な巨大な光を振るってきたため、

 ミニガンで対抗。

 フルアーマータイプが尼僧タイプに治療を受けているところを、

 レンジャーによって4体とも確保した。

 脅威は低いため近く解放予定。


・ドラゴン型ファンタジーの群を排除

 12体から成るドラゴン型ファンタジーの襲来を受ける。

 AH-64Eと戦闘用ドローンの連携により排除。

 排除されたドラゴン型ファンタジーは、なぜか消滅した。

 動画あり。


・搬送路構築予定地の家屋を排除

 予定地に建築されていた25戸の家屋を排除した。

 居住していたヒト型ファンタジーには、別の場所に

 仮設住宅を建築、提供した。

 快適となった生活に最初は戸惑っている様子だったが、

 最終的にヒト型ファンタジーは感謝の意を表した。


などの報告が上がってきていた。


そうして、8年の歳月をかけ異世界経由型搬送路、『異経路』は完成した。

私は『運送省』の事務次官ではなく、全省庁を統括するために新たに設けられた『事務代官』、その初代に任官された。

総理には、『異経路』構築当時の『庶務省』事務次官を据えた。


そして、『異経路』構築で得たノウハウを生かすのなら。

異世界への穴、その先はどこにでも繋がる。

列強国および枢軸諸国の首脳官邸や重要拠点にも。

一斉占拠からの強制武装解除。人質は首都。

あのスイッチなど、押させなければいい。

兵器など、使うものがいなくなれば、ただの資源だ。

抗議など、話せなくさせればいいだけだ。

逆らうものがいなければ、世界は平和だ。

ここまでやれば、サーバント冥利に尽きるというもの。


なんてね。


昔のハナシだ。もうとっくに退官している。

毎日おそまつ句や、へぼ短歌を詠んでいるよ。


そうそう、新しいパズルも、ね。


読んでいただき、ありがとうございました。



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