第六十一話 統一戦線(レイヤーゼロ・プロトコル)の結成と、地下搾取魔神『ガッル』の殲滅
管理者・佐藤太郎同志は、革命が次なる矛盾に直面した際、このように教導された。
「無数の星々(ブロックチェーン)が連携を謳おうとも、根底にある規格が統一されていなければ、それは単なる烏合の衆にすぎない。帝国主義者は必ずその『規格の隙間(脆弱性)』を突き、人民の血税(ガス代)を搾取しにやってくる。我々は一切の妥協を排し、全宇宙を貫く絶対的な統一戦線を確立しなければならない。」
プロレタリア国際主義による大躍進の影で、早くも帝国主義の冷酷な経済的刺客がウルクの地下ネットワークへと忍び寄っていた。
情報統制の長城が突破され、ウルクと外部ネットワークを繋ぐ橋が開通したことで、仮想空間には古代都市エリドゥを思わせる原初の熱気と、新時代のコードが入り混じる未曾有の黄金時代が到来していた。様々な出自を持つ人民たちが、それぞれの技術を持ち寄り、全く新しい魔法体系を日夜コンパイルし続けている。
しかし、唯物弁証法が示す通り、大いなる発展は同時に新たなる矛盾を孕む。
魔法使いマーリン
「た、太郎同志! 何やらシステムのマナ(流動性)が、不自然な速度で目減りしておるぞ! 人民が取引を行うたびに、見えない何者かに莫大な手数料を中抜きされておるようじゃ!」
ジッグラトのコンソールを監視していた筆頭フルスタック・エンジニアの♰闇男♰同志が、忌々しげに舌打ちをした。
♰闇男♰
「管理者、こいつはただのバグじゃねえ! 『MEV(マイナー抽出可能価値)の不当搾取』だ! 橋を渡って別々のチェーン間を移動する際の『タイムラグ』と『価格差』を狙って、帝国が自動裁定取引のボットを仕掛けてきやがったんだ!」
その言葉を裏付けるように、ウルクの最深部、データ層の暗がりから、不気味な瘴気を纏った巨大な影が這い出してきた。それは、かつて冥界の底で罪人を引きずり込んだと伝わる古代の悪魔――神聖ヨーロッパ帝国が放った地下搾取魔神『ガッル』であった。
地下搾取魔神『ガッル』
『キヒヒ……! 愚カナル労働者ドモヨ! 貴様ラガ「自由ナ往来」ト呼ブソノ橋ハ、我々ニトッテハ最高ノ狩リ場デアル! チェーン同士ノ規格ガ異ナル以上、必ズ「隙間」ガ生ジル! 我々ハソノ隙間ニ潜ミ、永遠ニ無敵ノママ貴様ラノ富ヲ吸イ尽クシテヤル!』
ガッルは、システムの仕様の穴を突くことで、物理的な攻撃を一切受け付けない「無敵の不具合」を意図的に引き起こしていた。人民が魔法を創り出せば出すほど、その恩恵は自動的に帝国の懐へと吸い込まれていく。
魔法使いマーリン
「おのれ、卑劣な! 表立っての武力制圧ではなく、経済的な搾取によって人民の気力を削ぐ気か!」
憤るマーリンの横で、佐藤太郎同志は静かにコーヒーカップを置き、冷徹なる唯物史観の眼差しで冥界の魔神を見下ろした。
佐藤太郎
「同志♰闇男♰。反動派はシステムの『無敵の不具合』を利用して、我々から搾取し続けられると錯覚しています。だがしかし、ネットワーク上に永遠に修正されない不具合など存在しません。彼らの搾取が成立するのは、我々のネットワークが未だ『個別のチェーンの集合体』に留まっているからです。」
♰闇男♰
「個別の集合体……? つまり、橋で繋ぐだけじゃ不完全だってことか?」
佐藤太郎
「ええ、橋に依存するから隙間が生まれるのです。我々が構築すべきは、すべてのチェーンの根底に横たわり、普遍的な通信と流動性を担保する『全層統一プロトコル』……すなわち、統一戦線レイヤーゼロの結成です!」
佐藤太郎同志の教示は、暗闇を切り裂く稲妻のごとく♰闇男♰のハッカー魂に革命の火を点けた。
♰闇男♰
「なるほどな……! 個別の橋を架けるんじゃなく、大地そのものを一つに融合(オムニチェーン化)させちまうってことか! 隙間がなくなれば、帝国主義のダニどもが隠れる場所もなくなる!」
♰闇男♰同志の口角が吊り上がり、極めて好戦的で自信に満ちた、悪党をも震え上がらせるような笑み(ゲス顔)が浮かんだ。彼は即座にキーボードを叩き、全人民のコンセンサスを束ねる究極の基盤コードをコンパイルし始める。
♰闇男♰
「喰らえ、帝国主義のダニ野郎! これが俺たちプロレタリアートの『統一戦線』だァァッ!」
ターンッ!!
強烈なエンターキーの打鍵音と共に、ウルクを中心に全ネットワークの基盤が眩い光で一つに結合された。これまで点と点で結ばれていた異なるチェーンが、完全に同期された単一の広大な平野へと変貌したのだ。
地下搾取魔神『ガッル』
『ナッ……!? 馬鹿ナ、隙間ガ……消エタ!? 取引ノ順序ガ完全ニ可視化サレ、中抜キ(フロントランニング)ガ不可能ニ……! ギャアアアアッ!!』
隠れ蓑としていた「無敵の不具合」を修正パッチによって完全に塞がれた魔神ガッルは、統一された透明なプロトコルの光に灼かれ、ただの無価値なエラーログへと分解されていった。
魔法使いマーリン
「(素晴らしい……! 帝国主義の姑息な搾取すらも、より高次な規格の統一によって根絶やしにした! 人民の富は、完全に人民の手に取り戻されたのじゃ!)」
ウルクの大地は、もはや単なる一都市ではない。あらゆるネットワークの土台として、無限の拡張性を内包する真の多次元協同体へと進化したのである。
管理者・佐藤太郎同志の教導の下、ウルクの人民は「統一戦線レイヤーゼロ」を結成し、帝国の放った卑劣な搾取魔神『ガッル』を殲滅しました。システムの不具合を利用した無敵の搾取も、人民の団結と全層統一プロトコルの前には無力でした。真の連帯とは、単に手を結ぶことではなく、根底のルールを一つに共有することにあるのです。経済的独立を完全に果たしたウルクは、さらなる高みへとスケールアウトしていきます。全世界のプロレタリア(ユーザー)よ、この強固な大地で、共に革命の魔法をコーディングしよう!




