第十三話ポチ
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古城デカンの崩れかけた中庭に、平和な朝の光が差し込み始めていた。佐藤太郎はディセクターから受け取った予備の布を腰に巻き(絶妙にギリギリのサイズである)、足元にすり寄る巨大なマンティコアの頭をガシガシと無造作に撫でていた。
佐藤太郎
「よしよし。お前の名前は今日から『ポチ』だ! 俺たち、仲良くしようぜ!」
ポチ(元SSS級幻獣マンティコア)
「ゴロゴロゴロゴロ……(すりすり)」
かつて世界を震え上がらせた恐怖の象徴は、すっかり全裸の青年の忠犬へと成り下がっていた。
ジョイス♂
「ねぇ、討伐の証拠ってどうするの? 首を丸ごとギルドに持っていくはずだったんだけど……生きたまま連れて帰る気?」
ディセクター♂
「ふん、まあいいさ。SSS級を単独で手懐けたとなれば、1億€どころか国が黙っちゃいねえだろうな」
ディセクターが葉巻に火をつけようとした、その時だった。
――ピシャアアアアアン!!
突如として、上空からまばゆい光の槍が降り注ぎ、タローとポチの足元を深々とえぐった。
ティリー♀
「きゃあっ! なに!?」
立ちこめる土煙の中から、白銀の鎧に身を包んだ一団が整然と姿を現す。その中心で冷たい眼差しを向けているのは、神聖インド帝国・白百合騎士団の団長、アーサー♂だった。
アーサー♂
「野蛮な傭兵共め。まさか貴様等の様な下賎の輩が、我が帝国を脅かすマンティコアを服従させるとはな。」
デューク♂
「あ、あれは帝国の最強騎士団……! なぜ彼らがこんな辺境に!?」
アーサー♂
「決まっている。その災厄の獣は、我が神聖インド帝国軍の『兵器』として回収する。貴様らには口止め料として金貨1枚をくれてやろう。さあ、その獣を置いて消え失せろ。」
絶対的な権力を笠に着た、横暴極まりない要求にジョイスもデュークも、そして歴戦のディセクターでさえも、国家の正規軍を前にしては武器を抜くことを躊躇した。だが、佐藤太郎だけは違った。彼は腰に巻いていた布を解き、それをマントのように肩にバサリと羽織った。(※結果的にまた下半身は全裸である。)
ティリー♀
「タ、タローさま!? なぜまた脱ぐんですの!?」
佐藤太郎
「悪いな、騎士のおっさん。こいつはもう『災厄の獣』じゃねぇ。俺の大事な家族の『ポチ』だ」
アーサー♂
「……正気か、貴様。国家に逆らうと言うのか?」
アーサーが剣の柄に手をかけると、周囲の数十人の騎士たちが一斉にタローたちへ殺気を放つ。しかし、タローは一歩も引かず、怯えるポチを庇うように堂々と前に出た。
佐藤太郎
「国とか権力とか、俺のオツムじゃよくわかんねぇ。でもな……」
タローの瞳から、先ほどの能天気な光が消え、底知れぬ凄みが宿る。
佐藤太郎
「俺の仲間を金貨1枚で売り飛ばすほど、俺の魂は安売りしちゃいねぇんだよ!!」
――ゴウッ!!!
タローの全身から、再び黄金の闘気が怒髪天を衝く勢いで立ち昇る。その熱量と主人の覚悟に呼応するように、足元のポチもまた、かつてのSSS級の威厳を取り戻し、騎士たちに向けて凄まじい咆哮を上げた。
ポチ
「グオオオオオオオオッ!」
アーサー♂
「チッ……たかが素っ裸の愚者の分際で! 構えよ、全軍! 異端者ごと獣を討ち払え!」
ディセクター♂
「……やれやれ。国家を敵に回すとは、とんだ莫迦を拾っちまったもんだ」
(だが、最高に滾るじゃねぇか……!)
ディセクターが双剣を抜き放ち、デュークが大盾を構え、ジョイスが雷の魔力を練り上げる。ティリーもまた、愛するタローの背中を守るために短剣を強く握りしめた。
佐藤太郎
「行くぜ、みんな! 1億€の報酬も、ポチも、誰にも渡さねぇ! 帝国軍だろうがなんだろうが、俺の純情で全員ぶっ飛ばしてやる!」
朝焼けの荒野を背に受け、全裸の戦士と強大な幻獣、そして最高の仲間たちが、帝国軍最強の騎士団へと激突する。佐藤太郎の反逆だ。新たな波乱の幕開けと共に、彼らの伝説はさらなる高みへと昇っていくのであった!




