甘いもの食べると油断しちゃうよね。
3年前。
時雨と凛月はゲームで知り合った。
毎日、夜遅くまで、時には朝が来るまでオンライン上でPCゲームを楽しくしていた。
2年前。
時雨と凛月はリアルで会うことになった。
「こんにちはー…。もしかして凛月さんですか…?」
時雨は、ゲームで知り合った人と会うのは初めてで緊張していたが、その緊張はすぐに解けた。
「そ〜、時雨ちゃんって意外と近くに住んでたんだね〜」
緩い。ゲームの中で話していた時から思っていたが緩い。
時雨は、凛月が想像通り過ぎて、緊張していた自分が少し恥ずかしくなっていた。
少しモジモジしている時雨に凛月は言った。
「そ〜いえば!駅の近くのパンケーキ屋さん行こ!」
いきなり??と少し戸惑った時雨だったが
いつもゲームで振り回されてる時雨にとってもう慣れっこだった。
「行こー。」
割と時雨は顔と声に感情が出ないタイプだが、凛月には時雨が、尻尾がポロッととれてしまうんじゃないか、と思うくらいに尻尾を振り続けている子犬のように見えた。
意外とパンケーキ屋さんは空いており、待たずに店の中に入れた。
お洒落な照明に、どこの国か分からないが綺麗な写真が飾ってあり、店内のBGMには南国の朝を思い浮かぶようなゆったりとした音楽が流れていた。
ベースの低音が心地よい…。と時雨は、溶けそうなくらいゆっくり店内を見回し「ここの席にしよ。」と角の窓際の席を指さした。
凛月は「りょ〜かい。」と時雨が指を指した席に座る。
そしてメニュー表を見る時雨。
どれも美味しそうだ。
時雨は悩む。
「んー。どうしよ。」
本当に悩む。
「この、季節のフルーツ盛り合わせパンケーキでいいんじゃない〜?」
メニュー表の中で一番大きく書かれているパンケーキに指を指す凛月。
「ご注文お決まりですかー?」
「えーと、季節のフルーツ盛り合わせパンケーキ2つくださ〜い」
「かしこまりました」
無難に、おそらく人気メニューを選んだ時雨と凛月。
その10分後。
「お待たせしました」
ドンッ!!
「やば…。デカ…。」
時雨の心が漏れる。
ものすごく大きいパンケーキと、桃と桃と桃。
桃何個使ってんだこれ。
桃のソースがかかった三段重ねのパンケーキ。
これは、かなりボリューミー。
「美味しそ〜!」
早速、食べ始める凛月と
んー。とどこから食べるかを考える時雨。
まずは一口。
ふわふわなパンケーキの生地ととろっとした桃のソースの相性が抜群。やばい。美味しすぎる。
無我夢中でパンケーキを食べる、食べる。そして食べる。
いつの間にか、目の前には大きな白い皿があり、
最初は大きすぎて食べれるか不安だったが、美味しすぎて意外とペロッと完食してしまった。
「「ご馳走でした」」
パンケーキを食べて幸せな凛月と時雨。
「そういえば、俺ん家くる〜?ゲームしよ」
「いいよ。」
時雨は、凛月の家に行ってゲームをすることにした。
「お邪魔します。」
凛月の家は、一人暮らしにしては少し広いなというのが時雨の感想だった。あと、部屋が散らかっている。
汚いという訳では無いが、あまり綺麗ではない。
生活感丸出しって感じ。
「なんのゲームする〜?」
時雨が指を指したゲーム。
それは昔から時雨がプレイしている格闘対戦ゲーム。
かなり時雨は腕前に自信があるようだ。
「中々、渋いゲーム選ぶね〜」
凛月はもっと最近のゲームを選ぶと思っていたが予想とは違う、なかなかマニアックなゲームを選んだ時雨に少し驚いたが、凛月は続けて
「これでさ、負けたら罰ゲームつきでしない??」
凛月は提案した。
これが凛月と時雨の関係をもっと親密なものにしたきっかけかもしれない。
「いいよ。」
得意なゲームで勝負を挑まれた時雨は何も考えずに承諾した。
五本先取の戦いで、早くも王手をかけたのは時雨だった。
正直余裕。凛月はあまりこのゲームは上手ではないようだ。
このままストレート勝ちで凛月に罰ゲームをして貰おう。
そう時雨は思った。
「ね〜時雨、これが罰ゲームの内容ね」
ガサガサ
凛月が近くに置いてあったダンボールの中から、洋服のようなものを取り出す。
「はい、これ」
メイド服…。
あとは、ウィッグや、下着の上下。
「負けた方は、これを着てもらいます」
凛月はニコッと笑顔で言う。
「え。やだよ。恥ずかしい。」
「いや大丈夫でしょ〜時雨」
そして凛月が続ける。
「あと一回勝てばいいんだから笑あと一回だよ〜?」
確かにそうだ。凛月はあと三回も勝たなければならないが、自分はたった一回勝つだけでいい。たったの一回。
時雨は、平常心を保って勝負に挑む。
二回負けた。
もう後がない。
「同点〜」
明らかにおかしい。
凛月のキャラの動きがさっきとは全然別物。
さっきまで、適当にポチポチ押してるだけの凛月だったが、しっかりコンボを決めてくる。
騙したな…。
時雨の脳裏によぎる。
そこで凛月が一つ提案をしてきた。
「俺この一番弱いキャラ使うからさ、俺が負けたら何でもするし、逆に時雨が負けたらなんでもするっていうルールでいい??」
時雨はその条件を5分考えた末にのんだ。
いや、負けるわけが無い。
凛月が使うと言っているキャラは、本当にネタ抜きに最弱。
攻撃力が低く、しかも攻撃パターンが、一個しかない。
HPも他のキャラよりもかなり低く設定されており、正直どんなに上手い人が使っても普通に勝つことはなかなかに厳しい。
ゲームスタート。
時雨は、これまでに無い程集中した。
凛月の攻撃を次々に避けていく。
ある程度の間合いから、時雨はリーチを活かして攻撃をしていく。
凛月を画面端に追いやることが出来た。
隙ができた。
そして、ここぞと言うタイミングで温存していた必殺技を使用する。
時雨は勝ちを確信したが、油断はしない。
さっき凛月に油断して負けてしまったから。
時雨が使用した必殺技は凛月に完全に命中した。
しかし、凛月は特殊なコマンド入力をし、HPを一だけ残していた。
時雨の使っているキャラには弱点がある。
それは必殺技を使用した時の硬直時間。
僅か、0.3秒の時間に凛月はカウンターを打ち込む。
しかし、攻撃力が足りない。
そして遅れて時雨はガードをする。
もう時雨に隙はない。
と思っていたが、凛月は落ち着いてコマンドを入力する。
時雨すらも知らない。HP入れ替えコマンド。
この凛月が使っているキャラでしか使えないコマンド。
あとは軽いジャブをうってKO。
負けた。
負けたら罰ゲーム。負けたら罰ゲーム。
時雨の頭の中で、何度も繰り返す。
もう時雨に逃げ場はない。
そのまま凛月に好き勝手着替えさせられたのであった。
「めっちゃ可愛い〜!」
「もう…満足ですか…。」
「もうちょっとだけ!」
「もう…1時間はこの格好してるんだけど…」
「負けたのは時雨だから文句は受け付けないよ!」
無理矢理女装させられた時雨は、顔を赤らめながら永遠とも思える写真撮影会を耐え凌ぐのであった。
でも、ハマってしまった。
そう、女装に。
凛月に性癖狂わされちゃった。
正直、楽しかった。
沢山可愛いって褒められて嬉しかった。




