ハカオ王国とミルティ王国の宣戦布告
第8章
ヒフンとフェッズが空を飛ぶ中、ヒフンの視線は置き去りにした剣へと向いた。下では観客たちが騒ぎ立てている。
ヒフンは小さく息を吐き、諦めたようにフェッズの後を追った。
その頃、ルーゼがヒフンの剣を拾い上げ、遠ざかっていくヒフンの背中をじっと見つめていた。
ヴリン、エルリック、レイ、ジデン、ミシルも後を追う。その背後ではハカオの兵士たちが次々と迫ってきていた。
「チッ……」フェッズが舌打ちする。
「ベン、ゼルコ。奴らを足止めしろ。捕まるなよ」
「了解!」二人は即座に応じ、兵士たちを食い止めた。
他の仲間たちはフェッズに続いた。
「急いで王国へ戻らねば」フェッズが告げる。
「わかった」ヴリンが頷く。
「来るぞ!」エルリックが叫ぶ。火球が飛来し、皆が身をかわした。
「ヴリン、エルリック! 二人は先に行け。王国の監督に報告しろ。子供たちは私が守る」
「でも……」
「早く!」
「……わかった!」エルリックがヴリンの腕を掴み、二人は高速の風魔法で一気に飛び去った。
「時間を稼ぐしかないな」フェッズが呟く。
「なら、奴らを我が王国に誘い込めば?」ジデンが言う。
「馬鹿者。それでは民が巻き込まれる」フェッズが一喝する。
その時、ハカオの指揮官が剣を構えて突撃してきた。
「危ない!」ヒフンが叫ぶ。
「ウォーター・バスター!」
フェッズが放った水弾が相手を阻み、その隙にさらに逃げる。
だが前方に二人の将軍が現れた。
「待て! 両国は試合の実施を合意したはずだ!」フェッズが叫ぶ。
「試合の開催を認めただけだ。帰還の安全など保証していない」将軍が冷笑する。
「なに……!」
(同じ将軍位が二人……二対一か)フェッズの心が緊張に包まれる。
二人が剣を抜いて突進する。
「行け! 捕まるな!」
「でも!」子供たちは動揺した。
「早く!」
「行こう!」ヒフンが仲間を引き、走り出す。
将軍の一人が追おうとするが、フェッズが立ちふさがる。
「相手は私だ」
「チッ……」二人の将軍が再び構える。
その頃、雨が降り出した。
「雨……?」レイが呟く。
「足元に気をつけろ、滑るぞ」ヒフンが注意を促す。
そこへ新たな指揮官が現れ、素早く迫った。
「見ろ!」ジデンが叫ぶ。
「指揮官だ……」レイが目を見開く。
「急がなきゃ!」ミシルが焦る。
だが彼女は足を滑らせて倒れた。
「ミシル!」ヒフンたちが振り返ると、既に剣を突きつけられていた。
「動くな!」指揮官が怒鳴る。
ヒフンは足を止める。
「仲間を助けたいなら、彼女を置いて行け」
「なに……!」
「人質にすれば貴様らの王国も手出しできまい」剣先がミシルの喉元に迫る。
「行け! さもなくば斬る!」
「やめろ! 彼女の代わりに俺が人質になる!」ヒフンが叫ぶ。
「馬鹿なことを……!」レイが止めようとする。
「替えると思うか? 甘いな」指揮官が嗤う。
ミシルが魔力を溜めかけると、首筋を打たれて気を失った。
「さっさと行け!」
(どうすれば……?)ヒフンの心臓が高鳴る。
「三つ数える。去らねば斬る!」
一方その頃、フェッズは二人の将軍に押されていた。
「観念しろ!」
(試したことのない魔法だが……やるしかない!)
剣に雷の気配を纏わせ、フェッズが回転する。
「サンダー・ストーム!」
暴風と雷が炸裂し、二人の将軍が目を見開いた。
「な、なんだこの魔法は!?」
嵐の中からフェッズが疾風のごとく突撃し、二人を翻弄する。
その頃、王都ミルティ。ヴリンとエルリックが門に飛び込み、必死に訴えた。
「お願いです! 学園代表の子供たちがハカオ軍に襲われています!」
守衛が慌てて報告し、防衛将軍が顔色を変える。
「なに……!」
傍らにいた国王が問う。
「どうした?」
「ハカオ軍が我が代表を襲撃しました!」
「なんだと……!」
「急ぎこちらに向かっています!」
国王は短く考え、即断した。
「防衛軍を整えろ。子供たちは私が救う」
「はっ!」
国王は風魔法で空へ舞い上がった。
一方その頃――
「一!」
「ヒフン!」レイが叫ぶ。
「二!」
(くそ……どうすれば……!)
「三――」
「わかった! 俺たちが去る!」ヒフンが叫び、わざと天を仰いで驚いたふりをする。
思わず指揮官が振り返ったその隙に、ヒフンは右手に橙色の炎を宿し、一気に突進した。
「ヒフン!?」レイとジデンが叫ぶ。
「なっ……!」指揮官が慌てた瞬間、ヒフンはミシルを抱きかかえ、その腹部に炎を叩き込む。
「ぐっ……!」
指揮官の剣がミシルの首へ振り下ろされる。
ヒフンは左手でその刃を受け止めた。
ジジジ……! 剣がオーラを放ち、空気を震わせる。
――つづく
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