ヒフンの試合
第7話
レイとルーゼが待機室に戻ると、ヴリンが不思議そうにレイを見つめた。
「あなた、目の力を持っているの?」
「はい。」レイは静かに答えた。「母は僕を産むときに亡くなりました。そのことで、この目の力を得たんです。」
「そう…でも、大丈夫なの?」ヴリンの瞳には心配が滲んでいた。
「ええ、大丈夫です。」
レイはヒフンのもとへ歩み寄った。
「次は君の番だね。」
「うん、もう待ちきれないよ。」ヒフンは微笑んだ。
しばらくして、場内にアナウンスが響いた。
「次が本日の最終戦! ミルティ王国代表、ヒフン! 対するはハカオ王国代表、レゴン! 両名、入場してください!」
「さあ、行こう。」ヒフンは呟き、ルーゼと共に舞台へ向かった。
両者が姿を現す。
「準備はいいか!」
「準備完了!」二人の声が重なった。
レゴンがニヤリと笑う。
「負ける覚悟はできてるか?」
「俺は負けを受け入れるためにここに立ってるんじゃない。」ヒフンは笑みを返した。
「構え!――始め!」
ヒフンは横に走り込み、一直線にレゴンへ迫る。
「愚かだな。」レゴンが呪文を放つ。
「ファイア・ラグモ!」
炎の壁が立ち並び、無数の火球がヒフンへと襲いかかる。
ヒフンは剣にオーラを纏わせ、次々と火球を斬り裂いた。
宙に跳び、風の魔法を発動する。
「ウィンド・ストライク!」
鋭い三角の風弾が突き進む。
「アースウォール!」レゴンは土壁を築き、攻撃を受け止めた。
だがヒフンは炎を剣に纏わせ、風で加速した勢いのまま壁を突き破る。
「無茶をするな…」レゴンは舌打ちし、オーラを纏った剣を振るう。
二人の刃が激突し、火花が散る。
直後、レゴンが脚に水の魔法を込めて蹴り放った。
「ウォーター・キック!」
水の衝撃が炸裂し、ヒフンは後方へ吹き飛ばされた。
(あのレゴン…本気で戦っていない。)レイは眉をひそめた。
(強い…だが勝つには頭を使わないと。)ヒフンは自分に言い聞かせた。
ヴリンの言葉を思い出す――「魔法にオーラを重ねれば、より強くなる」。
(よし…試してみるか。)
左腕に気を集中させ、炎を走らせる。剣にはオーラを纏わせたまま、再び突進する。
レゴンは魔力を纏った剣で受け止めたが、ヒフンは燃える左腕で打ち込む。
レゴンは後方へ飛び退く。
ヒフンはすかさず、オーラを重ねた炎を放った。
巨大な炎の奔流がレゴンに迫る。
(すごい…魔法にオーラをあんなに自然に重ねるなんて。)レイの目が輝く。
「もう魔法とオーラを融合できるのか!?」フェズが驚愕した。
観客席のヴリン、ジデン、ミシルも目を輝かせて見守る。
「チッ…道化がこんな真似を。」レゴンは顔をしかめる。
「ならばこちらも…」
「サンダー・ブラスト!」
雷光がほとばしり、炎と激突する。轟音と爆発が会場を揺らした。
(雷だと!?)レイの心臓が跳ねる。
「雷魔法…E級以上の術じゃないか。」ヴリンが呟く。
フェズは目を見開き、声を失った。
(あの人が勝てるの…?)ミシルの胸に不安が走る。
魔法の衝突は激しさを増し、ついに大爆発が巻き起こった。
観客の一部が吹き飛ばされ、待機室の窓も砕け散る。
ヒフンとレゴンは弾き飛ばされ、ヒフンの剣は場外へ。二人とも限界に近い表情だ。
「見直したぞ。」レゴンが笑う。「あの爆発でまだ立っているとはな。」
「ハァ…まだ戦える。」ヒフンは荒い息を吐きながら立ち上がる。
「だが終わりだ。」雷を纏うレゴンの手が光る。
「お前が俺と戦う時点で、結末は決まっていたんだよ。」
「言ったはずだ…俺は負けを受け入れるためにここにいるんじゃない。」
ヒフンの掌に炎が灯る。その色が、通常の赤から鮮やかな橙へと変わった。
「炎の色が…!」エルリックが目を見張る。
「橙の炎…赤の上位魔法、E級中位だ。」フェズが驚愕の声を上げた。
レイたちはただ見つめるしかなかった。
二人は同時に魔法を放つ。
ヒフンの橙の炎は雷を押し返し、レゴンを飲み込んだ。
「ぐあああああああ!」
レゴンは燃え上がりながら場外へ吹き飛ばされる。
すぐさま医療班が駆け寄り、水魔法で火を消した。
一瞬の沈黙のあと、観客席がざわめいた。
「卑怯だ! 中位E級の魔法を使うなんて!」
「こんな試合、認められない!」
騒ぎは瞬く間に広がった。
「何が起きてるの…?」ヴリンは動揺する。
「ハカオ代表が負けたことを認められないんだ。」レイが険しい顔で答える。
フェズがヒフンの隣に立ち、声を張り上げた。
「ヒフンは卑怯なんかじゃない! レゴンだってE級以上の魔法を使った! 規則に違反はしていない!」
だが観客たちは耳を貸さず、さらに暴徒化していく。
「まずいな…」エルリックが顔をしかめた。「今すぐ撤退だ。」
「行くぞ!」フェズが叫び、ヒフンの手を掴む。
風魔法で二人の身体は宙に浮き、会場を飛び出した。
「急げ! 俺たちも脱出するぞ!」エルリックの声に、仲間たちも続いた。
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