あと四日
第4章
翌朝、ヒフンは出発の準備を整えた。
「行ってきます」
短く言い残し、学院へ向かって歩き出す。目的は校内大会への参加登録だった。
学院に着くと、練習場でレイが剣を振っている姿が見えた。しかしヒフンは真っすぐ教師室へ向かい、ヴリンに会った。
「おはようございます。校内大会に参加したいのですが」
「あなたが出場するの?」ヴリンは少し確認するように彼を見つめる。
「はい」
「分かったわ」そう言って名簿に名前を書き加えた。
「先生、学院の庭でレイと一緒に稽古してもいいですか?」
「構わないけど……校舎を壊さないでね」
「はい」
ヒフンは庭に急ぎ、レイに声をかけた。
「レイ!」
「君も来たのか?」少し驚いたようにレイが答える。
「もう登録した?」
「したよ」
「じゃあ、手合わせしないか?」
レイは肩をすくめ、少し笑みを浮かべた。「いいよ」
言葉が終わるより早く、ヒフンは詠唱した。
「ウォーター・ブーム!」
水が地面に炸裂する。レイはすぐに飛び退き、空中で呪文を放った。
「ファイア・バースト!」
火球が現れ、ヒフンめがけて降り注ぐ。ヒフンは剣でいくつかを斬り払い、風魔法を身体に纏わせて一気に間合いを詰めた。
しかしレイも準備していた。剣にオーラを纏わせ、ヒフンの剣と激突する。オーラ同士がぶつかり合い、金属音が夕日が沈むまで響き渡った。
二人は吹き飛ばされ、荒い息をついた。
「はぁ…もう限界だ」ヒフンが肩で息をする。
「俺もだ…」レイも同じく疲れ切っていた。
二人はベンチに座り、弁当を広げる。食べながらヒフンが尋ねた。
「それ、お父さんが作ったの?」
「ああ。うちの父はレストランで働いてるんだ」レイは小さく笑う。
食事を終えると、レイは立ち上がった。
「俺、先に帰る」
「分かった。また明日」
ヒフンは手を振り、ひとり考え込む。
俺、全然強くなってない気がする…ハカオ王国の学院生って、どれだけ強いんだ?
帰る前に、ヴリンを見つけて駆け寄った。
「先生!」
「何? あなたか」
「剣に魔法を込める方法を教えてもらえませんか?」
ヴリンは少し考えてから頷いた。「いいわ。明日来なさい」
「ありがとうございます。では、失礼します」
家に戻ると、扉に鍵がかかっていた。花瓶の下に置かれた合鍵を取り、中へ入る。テーブルの上には食事と手紙があった。
国で用事がある。明日の朝には戻る。夕食は用意してあるから、きちんと食べて早く寝なさい。 ―父より
風呂に入り、食事を済ませたヒフンは家に鍵をかけ、眠りについた。
翌朝、再び学院へ。ヴリンがまだ来ていなかったので、図書室で本を開く。
魔導書、Eクラス…魔法にも等級があるのか
ページをめくると、「ウォーター・レイゾン」や「ファイア・ブラスト」がEクラスに分類されているのを見て目を見開く。
あれほどの威力で、最弱の部類だと…?
教師室に戻ると、ヴリンが来ていた。
「来たのね」
「は、はい…」
遅いよ…
二人は庭へ行き、まだ稽古しているレイに声をかけた。
「レイ!」
「おう」レイが手を振る。
「レイ、一緒に先生と稽古しよう」
「いいんですか、先生?」
「仕方ないわね」ヴリンはため息をついた。
「やった!」ヒフンは拳を握る。
ヴリンの声が真剣になる。
「剣に魔法を込めるのはオーラと似ているけど、消耗ははるかに激しい。気を刃に流し込み、魔法として放つのよ。ただし――気切れは単なる疲労より危険だから気をつけなさい」
腕を組んで言った。
「さあ、やってみなさい。異常を感じたらすぐ言うのよ」
ヒフンは目を閉じる。
集中しろ…気を剣に流して…解き放つ…
二人は夕方まで格闘した。
「もう遅いわ。今日は帰りなさい。明日また来ること」
「はぁ…思ったより難しい」
「ああ」レイも同意する。
ヴリンは薄く笑った。
家に戻ると、母が料理を作り、父はソファで眠っていた。風呂を済ませて食卓につくと、父が尋ねた。
「今日は何を稽古した?」
「剣に魔法を込める方法を」
「そうか。俺は七日かかったな」父の言葉にヒフンは驚く。
「どんなに難しくても、続ければ必ずできるようになる。諦めちゃダメよ」母が励ます。
「うん、母さん」
翌日、ヒフンは再び学院へ向かう。
彼が去った後、父はため息をついた。
「もうその技を習うのか…俺の頃はまだEクラス扱いだった」
「今の若者は私たちより強いのよ」母が答える。
「でも、習得には時間がかかる」
「ヒフンは今日できるわ」
「ありえん」
「できたら、あなたの食事半分よ」
「な、なんだと…」
学院でヒフンは集中する。
気を剣に流せ…
その瞬間、刃に炎が宿った。
「やった!」
「俺もできた!」レイの剣には風の魔力が輝いていた。
二人は喜びに満ちた表情を浮かべる。
「見事だわ」ヴリンが頷いた。「こんなに早く習得するなんて。私は五日かかったのに。今日は魔力を込めた剣での立ち合いを練習しなさい」
二人は頷き、魔力を一度解いてから構える。
「行くぞ」
レイが笑う。
剣と剣がぶつかり合い、火花と魔力が散った。やがて気が尽き、戦いは止まった。
「はぁ…気の消耗が激しすぎる」ヒフンが肩で息をする。
「ああ」
「今日はここまで。明日は気の容量を鍛えなさい」ヴリンが告げる。
「はい!」二人は声を揃えた。
こうしてその日の稽古は終わり、それぞれ家路についた。
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