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上位世界

第13話 


静かな図書館の中で、ヒフングは本を読み進めていた。


――「上位世界には様々な姿がある。かつて私が辿り着いた世界には、数え切れないほどの竜がいた。炎の竜、水の竜、雷の竜までも…」


ヒフングは眉をひそめた。奇妙な記述だが、目を離すことはできない。


――「上の世界へ昇る方法と、下の世界へ降りる方法には少し違いがある。

上へ行くには、まず世界の果てに存在する古代遺跡を探し出さなければならない。遺跡は世界中を探索することでしか見つからない。

もう一つの方法は――十万人の人間の魂を犠牲にし、魂を砕く魔法ソルティオを使うことだ。十万の魂を砕くことで上位世界への門が開く。ただし門は十分間しか持たず、通った者は必ずランダムな場所に現れる…」


ヒフングの目が大きく見開かれた。あまりにも恐ろしい方法だ。


――「下の世界へ降りる場合は少し違う。ソルティオで一万人の魂を砕くか、あるいは空間と時間の魔法を使わねばならない」


「……空間と時間の魔法?」

ヒフングは思わず心の中でつぶやいた。


次のページを開く。


――「第十六世界。

私がそこに辿り着いたとき、荒れ果てた大地に立っていた。遠くでは二つの軍勢が衝突しており、神話級の魔法を駆使していた。下位世界の図書館には一切記録されていない魔法だ。それは《魔族級》と呼ばれる魔法だった。

その一つが《リアルバスター》。黄色い爆炎を生み出す魔法で、その熱は一五〇〇度に達する。他の魔法も同じく恐ろしい力を持っていた。

将軍らしき者たちは黒い翼を持ち、空を高速で飛び回っていた。

だが、最も衝撃的だったのは――二人の圧倒的な力を持つ存在が現れ、拳をぶつけ合った瞬間だ。濃厚なオーラが爆発し、黒い雷が周囲に迸った。兵士たちは次々と倒れた。

その雷の一つが私を襲った。私は必死に電撃の壁を張ったが、一瞬で砕かれ、黒雷に吹き飛ばされて全身を焼かれるような痛みに襲われた…」


ヒフングはごくりと息を呑む。胸が締め付けられるような感覚がした。


――「目を覚ますと、そこは第十六世界に住む人物の家だった。彼は私に言った――お前はオーラを浴びたのだと。オーラは気の天敵であり、二度と魔法は使えないだろうと。

その時、私は悟った。自分の人生で到達できる限界に辿り着いたのだと」


――「だが、その男は私にこう告げた。『若者よ、下位世界から来たのだろう? ならば戻って残りの人生を楽しめ』と。

私は答えた。下位世界へ戻る魂の蓄えなど持っていないと。

すると彼は言った。『魂を使わずとも戻してやろう』と。

次の瞬間、彼が手を掲げると、私は弾き飛ばされ、気が付けばミルティの街――私の故郷に戻っていた」


――「その後三年間、私は魔法を使えぬ人間として王国で過ごした。人々に上位世界の話をしたが、誰も信じなかった。だから私は旅の記録を本に書き残すことにした。

あの男が私を戻したのは、おそらく空間と時間の魔法だろう。そして、その過程で私は他世界を巡った記憶の一部を失った」


――「以上が私の旅の全てである。

署名――ステファヌス・ヘリー」


ヒフングは本を閉じ、大きく息を吐いた。瞳には新たな決意の光が宿っている。


「オーラは……気の天敵。強大すぎるオーラに触れれば、気そのものを消し去られる…」


彼は本を棚に戻し、図書館を後にした。外に出ると、すでに空は夕闇に染まっていた。


「もう夜か…」


そう呟きながら帰路についたその時――


「ヒフング!」


振り返ると、ミシルが走ってくるのが見えた。


「ミシル? どうしたんだ?」


「どうしたじゃない! なんで病院から勝手に出たの!? 私とレイ、それにヴリンとエルリック、フェズも一日中探してたんだよ!」


「俺を? 一体何のために?」


「王様がお前を探してる! 今すぐ城へ行かないと!」


「な、なに!? 王が俺を!?」


「いいから急いで!」


ミシルはヒフングの手を掴み、そのまま走り出した。ヒフングの頬が赤くなるが、彼女に引かれて城へ向かう。


やがて城門に到着し、息を切らしたヒフングが問う。

「な、なんで王が俺を…?」


「私にもわからない。でも急がないと、何か良くないことが起きるかもしれない」


二人は城内へ駆け込み、廊下を走っていく。途中、防衛将軍と出会った。


「どうした? そんなに急いで」


「王様を探しています。この友を呼んでいるそうで!」ミシルが答える。


「そうか。王の間は上だ。廊下を進んで左に曲がれ」


「ありがとうございます!」


二人は階段を駆け上がり、やがて目的の扉を見つけた。


「ここだよ! ヒフング、ノックして」


「お、わかった…」


ヒフングは緊張しながら扉を叩き、ゆっくりと開けた。


部屋の中には王がソファに腰掛け、その隣にフェズが座っていた。二人の視線がヒフングに注がれる。扉が閉まり、重苦しい静寂が落ちる。



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