表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/19

ヒフングの目覚め

第10章


翌朝、病院は静まり返っていた。レイは病院に到着し、ヒフングの部屋に入った。周りには疲れ切ったヴリンとエルリックが眠っている。ヒフングの左手はまだ包帯で覆われており、昨日の傷の跡が見て取れた。


そのとき、ミシルが病院に入ってくるのが見えた。レイはそっとその場を離れた。午後、再びヒフングの部屋に戻る。


「どうしたの、坊や?」とヴリンが優しく声をかける。


「ヒフングとフェッズさんはまだ目覚めていませんか?」レイは不安げに尋ねた。


「まだですが、医者によればそろそろ目を覚ますはずです」とヴリンは優しく答えた。


レイは頷き、心を落ち着けようとする。出ようとしたその瞬間、フェッズが突然目を開けた。


「うっ…」フェッズはかすれた声で呻いた。


「フェッズさん!」ヴリンは慌てて駆け寄る。


フェッズはゆっくりと起き上がり、部屋を見渡した。「まだ痛む…」彼の視線はヒフングに向かう。ヒフングは左手を包帯で覆ったまま眠っていた。


「え?この子はどうしたんだ?」フェッズは戸惑いながら尋ねる。


「ヒフングは友達を救おうとして、人質になった友人を助けたんです。そのとき左手が深く傷ついてしまいました」とレイは緊張した声で説明した。


フェッズは頭を垂れ、後悔の色を浮かべる。「皆を完全には守れなくて申し訳ない」


「それはフェッズさんのせいではありません」とヴリンは優しく慰める。


「王国間の衝突が突然起きました。私たちは準備ができていなかった…仕方ありません」とエルリックが肩をすくめて言った。


フェッズは立ち上がろうとしたが、ヴリンに制止される。

「まだ起きないでください。しっかり休まないと、傷が治りません」


フェッズは再び横たわった。


ほどなく、ヒフングが小さく唸り、ゆっくりと目を開けた。


「フング!」レイは安堵の声をあげた。


「ここはどこ…?」ヒフングは弱々しく尋ねる。


「王国の中央病院だよ」とヴリンが優しく答える。


「ふーん…」ヒフングは小さくつぶやき、左手を動かそうとして痛みに顔をしかめる。「うっ…」


「まだあまり動かさないで。手は完全に治っていないのよ」とヴリンが心配そうに言う。


「手…?」ヒフングは少し不安そうにレイを見る。


「手は深く傷ついている」とレイは真剣に言った。


ヒフングは次にフェッズを見て、興味深そうに尋ねる。「え、フェッズさんも怪我してるの?」


「そうだ。二人の敵と同時に戦って怪我をしたんだ。かなり強かった」とフェッズは微笑を浮かべながら答えた。


「ふーん…」ヒフングは頷いた。


「二人とも、ちゃんと休んで早く回復しなさい」とヴリンが念を押す。



---


夜になり、ヒフングとフェッズは病院食を食べていた。


「私とエルリックは少し外に出て食事してくるわ」とヴリンが柔らかく告げる。


「わかった、お母さん」とヒフングが返事をした。


「僕は先に帰るね」とレイが言う。


「うん、またね」とヒフングが軽く返す。


レイ、ヴリン、エルリックは去り、ヒフングとフェッズだけが残された。


「坊や」フェッズが突然呼びかける。


「ん?」ヒフングは顔を上げる。


「君の名前はヒフングだな?」フェッズは慎重に尋ねた。


「はい?」ヒフングは少し戸惑う。


「橙色の火魔法が使えるのか?」フェッズが真剣に訊く。


「うーん…」ヒフングは困惑した表情。「普通の火魔法にオーラを加え、気のエネルギーを通常の五倍ほど使っただけです。それで橙色になったんです」


「なるほど」とフェッズは微笑む。「そうか、それが橙色の火魔法の作り方か」


「どういう意味ですか?」ヒフングは興味深げに尋ねる。


「君は才能がある。しかし知識はまだ足りない。回復したら王国の図書館に行き、もっと勉強しなさい」とフェッズは賢く助言した。


「はい」とヒフングは頷いた。


フェッズは立ち上がり、ヒフングは少し戸惑う。


「どこに行くんですか?」


「ただじっと座って過ごすのは好きじゃない。特にハカオ王国が戦争を宣言した今、訓練したいんだ」とフェッズは毅然と答えた。


「でも傷は…?」ヒフングは心配そうに尋ねる。


「これは小さな傷だ、すぐに治る。君は自分のことを気にしなさい。君の傷は深く、麻痺の危険がある」とフェッズはヒフングを見つめて言った。


ヒフングの目は少し見開かれ、心配と決意が混ざった表情になる。


「休め」フェッズはそう言い、病院の窓から飛び出していった。


ヒフングは部屋に一人残され、考え込む。


突然、扉が開き、ミシルが小さなバッグを持って入ってくる。


「え?ここで何してるの?」ヒフングは驚き、少し赤面する。


「わ、私…ただお見舞いに来ただけ。友達が、あなたが私を助けたって…」ミシルは照れながら言う。


「あ、ああ…」ヒフングは顔を赤らめて小さくつぶやく。


ミシルは近づく。「もうご飯食べた?」


「病院の食事は食べたけど、もうお腹がすいた」とヒフングは小さく笑う。


「そう…」ミシルはバッグを開ける。「作ってきたの、あなたのために」


「あ、ありがとう…」ヒフングは照れながら受け取る。


バッグの中にはご飯、卵、野菜、魚が入っていた。


「美味しそうだね」とヒフングの目が輝く。


「食べる?」ミシルは恥ずかしそうに尋ねる。


「え?いいの?」ヒフングは笑顔になる。


ミシルはスプーンですくい、ヒフングの口元に運ぶ。顔を赤らめながら。


「え、えっと、自分で食べられるよ…」ヒフングは照れ隠しで言う。


「手を動かすと治りが遅くなるの。早く、嫌ならいいけど」とミシルが言う。


「う、うん…」ヒフングは頷き、口に運ばれた一口を食べた。


二人は少し照れながらも、穏やかな時間を共有する。


「おいしい…」ヒフングは微笑む。


ミシルは最後まで食べさせ、箱を閉じてバッグにしまう。


「私は帰るね」とミシルは微笑む。


「うん、ありがとう。すごく美味しかった」とヒフングは答える。


「明日も持ってくるね」とミシルは笑顔で言い、ヒフングはまた赤面した。


「昨日は助けてくれてありがとう」とミシルが部屋を出る前に言った。


「どういたしまして…」ヒフングは恥ずかしそうにつぶやく。


心の中でヒフングは思う:

「彼女は本当に可愛くて優しい…料理も美味しい。そういえば僕の橙色の火魔法、もっと強化できるかな。普通の赤い火は一番弱い。オーラと五倍の気を使えば橙になる。橙は赤の次の段階。さらに上の段階はどうなるんだろう…色は何になるんだろう。王国の図書館で勉強すればすぐわかるはず。早く学びに行きたい。」


ヴリンとエルリックが部屋に入る。


「フェッズさんはどこに行ったの?」ヴリンが驚く。


「え?」エルリックも驚く。


「出かけました」ヒフングが説明する。


「出かけた!?」二人は驚愕。


「フェッズさんはじっとしていられないそうです。ハカオ王国が戦争を宣言しました。強くなるために訓練しに王国へ行ったそうです」とヒフングは落ち着いて説明した。


「え!?」ヴリンとエルリックは驚く。


「それで、傷は大丈夫なの?」ヴリンが心配そうに尋ねる。


「もう平気だそうです」とヒフングが答える。


「なるほど…」ヴリンはほっと息をつく。


「フェッズさんは将軍だから、自分で回復できる。早く治るだろう」とエルリックが自信を持って言う。


「そうね、よし、これで安心だわ」ヴリンは微笑む。



---

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ