ヒフングの目覚め
第10章
翌朝、病院は静まり返っていた。レイは病院に到着し、ヒフングの部屋に入った。周りには疲れ切ったヴリンとエルリックが眠っている。ヒフングの左手はまだ包帯で覆われており、昨日の傷の跡が見て取れた。
そのとき、ミシルが病院に入ってくるのが見えた。レイはそっとその場を離れた。午後、再びヒフングの部屋に戻る。
「どうしたの、坊や?」とヴリンが優しく声をかける。
「ヒフングとフェッズさんはまだ目覚めていませんか?」レイは不安げに尋ねた。
「まだですが、医者によればそろそろ目を覚ますはずです」とヴリンは優しく答えた。
レイは頷き、心を落ち着けようとする。出ようとしたその瞬間、フェッズが突然目を開けた。
「うっ…」フェッズはかすれた声で呻いた。
「フェッズさん!」ヴリンは慌てて駆け寄る。
フェッズはゆっくりと起き上がり、部屋を見渡した。「まだ痛む…」彼の視線はヒフングに向かう。ヒフングは左手を包帯で覆ったまま眠っていた。
「え?この子はどうしたんだ?」フェッズは戸惑いながら尋ねる。
「ヒフングは友達を救おうとして、人質になった友人を助けたんです。そのとき左手が深く傷ついてしまいました」とレイは緊張した声で説明した。
フェッズは頭を垂れ、後悔の色を浮かべる。「皆を完全には守れなくて申し訳ない」
「それはフェッズさんのせいではありません」とヴリンは優しく慰める。
「王国間の衝突が突然起きました。私たちは準備ができていなかった…仕方ありません」とエルリックが肩をすくめて言った。
フェッズは立ち上がろうとしたが、ヴリンに制止される。
「まだ起きないでください。しっかり休まないと、傷が治りません」
フェッズは再び横たわった。
ほどなく、ヒフングが小さく唸り、ゆっくりと目を開けた。
「フング!」レイは安堵の声をあげた。
「ここはどこ…?」ヒフングは弱々しく尋ねる。
「王国の中央病院だよ」とヴリンが優しく答える。
「ふーん…」ヒフングは小さくつぶやき、左手を動かそうとして痛みに顔をしかめる。「うっ…」
「まだあまり動かさないで。手は完全に治っていないのよ」とヴリンが心配そうに言う。
「手…?」ヒフングは少し不安そうにレイを見る。
「手は深く傷ついている」とレイは真剣に言った。
ヒフングは次にフェッズを見て、興味深そうに尋ねる。「え、フェッズさんも怪我してるの?」
「そうだ。二人の敵と同時に戦って怪我をしたんだ。かなり強かった」とフェッズは微笑を浮かべながら答えた。
「ふーん…」ヒフングは頷いた。
「二人とも、ちゃんと休んで早く回復しなさい」とヴリンが念を押す。
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夜になり、ヒフングとフェッズは病院食を食べていた。
「私とエルリックは少し外に出て食事してくるわ」とヴリンが柔らかく告げる。
「わかった、お母さん」とヒフングが返事をした。
「僕は先に帰るね」とレイが言う。
「うん、またね」とヒフングが軽く返す。
レイ、ヴリン、エルリックは去り、ヒフングとフェッズだけが残された。
「坊や」フェッズが突然呼びかける。
「ん?」ヒフングは顔を上げる。
「君の名前はヒフングだな?」フェッズは慎重に尋ねた。
「はい?」ヒフングは少し戸惑う。
「橙色の火魔法が使えるのか?」フェッズが真剣に訊く。
「うーん…」ヒフングは困惑した表情。「普通の火魔法にオーラを加え、気のエネルギーを通常の五倍ほど使っただけです。それで橙色になったんです」
「なるほど」とフェッズは微笑む。「そうか、それが橙色の火魔法の作り方か」
「どういう意味ですか?」ヒフングは興味深げに尋ねる。
「君は才能がある。しかし知識はまだ足りない。回復したら王国の図書館に行き、もっと勉強しなさい」とフェッズは賢く助言した。
「はい」とヒフングは頷いた。
フェッズは立ち上がり、ヒフングは少し戸惑う。
「どこに行くんですか?」
「ただじっと座って過ごすのは好きじゃない。特にハカオ王国が戦争を宣言した今、訓練したいんだ」とフェッズは毅然と答えた。
「でも傷は…?」ヒフングは心配そうに尋ねる。
「これは小さな傷だ、すぐに治る。君は自分のことを気にしなさい。君の傷は深く、麻痺の危険がある」とフェッズはヒフングを見つめて言った。
ヒフングの目は少し見開かれ、心配と決意が混ざった表情になる。
「休め」フェッズはそう言い、病院の窓から飛び出していった。
ヒフングは部屋に一人残され、考え込む。
突然、扉が開き、ミシルが小さなバッグを持って入ってくる。
「え?ここで何してるの?」ヒフングは驚き、少し赤面する。
「わ、私…ただお見舞いに来ただけ。友達が、あなたが私を助けたって…」ミシルは照れながら言う。
「あ、ああ…」ヒフングは顔を赤らめて小さくつぶやく。
ミシルは近づく。「もうご飯食べた?」
「病院の食事は食べたけど、もうお腹がすいた」とヒフングは小さく笑う。
「そう…」ミシルはバッグを開ける。「作ってきたの、あなたのために」
「あ、ありがとう…」ヒフングは照れながら受け取る。
バッグの中にはご飯、卵、野菜、魚が入っていた。
「美味しそうだね」とヒフングの目が輝く。
「食べる?」ミシルは恥ずかしそうに尋ねる。
「え?いいの?」ヒフングは笑顔になる。
ミシルはスプーンですくい、ヒフングの口元に運ぶ。顔を赤らめながら。
「え、えっと、自分で食べられるよ…」ヒフングは照れ隠しで言う。
「手を動かすと治りが遅くなるの。早く、嫌ならいいけど」とミシルが言う。
「う、うん…」ヒフングは頷き、口に運ばれた一口を食べた。
二人は少し照れながらも、穏やかな時間を共有する。
「おいしい…」ヒフングは微笑む。
ミシルは最後まで食べさせ、箱を閉じてバッグにしまう。
「私は帰るね」とミシルは微笑む。
「うん、ありがとう。すごく美味しかった」とヒフングは答える。
「明日も持ってくるね」とミシルは笑顔で言い、ヒフングはまた赤面した。
「昨日は助けてくれてありがとう」とミシルが部屋を出る前に言った。
「どういたしまして…」ヒフングは恥ずかしそうにつぶやく。
心の中でヒフングは思う:
「彼女は本当に可愛くて優しい…料理も美味しい。そういえば僕の橙色の火魔法、もっと強化できるかな。普通の赤い火は一番弱い。オーラと五倍の気を使えば橙になる。橙は赤の次の段階。さらに上の段階はどうなるんだろう…色は何になるんだろう。王国の図書館で勉強すればすぐわかるはず。早く学びに行きたい。」
ヴリンとエルリックが部屋に入る。
「フェッズさんはどこに行ったの?」ヴリンが驚く。
「え?」エルリックも驚く。
「出かけました」ヒフングが説明する。
「出かけた!?」二人は驚愕。
「フェッズさんはじっとしていられないそうです。ハカオ王国が戦争を宣言しました。強くなるために訓練しに王国へ行ったそうです」とヒフングは落ち着いて説明した。
「え!?」ヴリンとエルリックは驚く。
「それで、傷は大丈夫なの?」ヴリンが心配そうに尋ねる。
「もう平気だそうです」とヒフングが答える。
「なるほど…」ヴリンはほっと息をつく。
「フェッズさんは将軍だから、自分で回復できる。早く治るだろう」とエルリックが自信を持って言う。
「そうね、よし、これで安心だわ」ヴリンは微笑む。
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