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カモフラージュ
黒嶋社長は定足のハスキーな叫び声に反応し、急ブレーキを踏み左折して道路沿いの駐車場に入った。駐車場には多くの乗用車や観光バス等が止めてあって、空いているスペースはまったく見付からない。駐車場を迷うように彷徨って、建物の地下駐車場にいつの間にか入ってしまっていた。ここも高級車が多く止まっていたが、空いているスペースは疎らだがあった。建物の入口近くの空いているスペースを見付けて、黒嶋社長は白いライトバンを停めた。やはりこのライトバンは納入業者のように見えて、探偵と云う存在をカモフラージュしてくれた。片村教頭と深里先生はこの建物のエントランスホールにいる。浮気の密会現場と考えて間違いはないだろう。ここで証拠の写真を撮らなければならない。黒嶋社長は身なりを整えて、ライトバンを下り、観光客を装って建物の中に入って行った。定足も遅れを取らないように、黒嶋社長の後を必死で追う。