追跡
片村教頭についてはすでに車のナンバーもスマホの番号も顔写真も確認済みだった。だが今回の依頼である浮気相手については調査中であり、片村美夏の話しから三年目の若い女性の先生が怪しいと調査対象になっている。だけれども、その先生―、深里香織が浮気相手だと云うことはあくまで、片村美夏の女の勘でしかない。片村美夏曰く、三年目くらいの世間知らずの小娘が、主人に騙されたのだと、偏見じみた語り口で強い剣幕で論じていた。
教頭の位置情報はスマホで解るが、深里先生のスマホの番号は、職員連絡先の番号からは番号が変えてあって、一度は空振りに終わっている。その辺りが怪しさを生み、浮気の事実があるのではと、調査対象から外せないでいた。
定足は陽が落ちて暗くなり始めるころから、職員の集合写真で確認した深里先生の姿を双眼鏡で探し続けていた。もし帰宅のところに遭遇すれば、定足が尾行して行動調査を行うことになっていた。この三時間はずっと双眼鏡を覗き、車の中で張り込みを続けている。まるで刑事の張り込みのように、パンと珈琲だけの夜食を摂って、深里先生が帰宅して行くのを待ち続けた。時刻はもう二十時に近づいるが、片村教頭にもこれと云った動きはない。本当に会議で遅くなるだけなのか、そう思いかけたとき、片村教頭の車がついに動き出した。教頭の車は白いセダンで、ナンバーは品川3647だ。ナンバーも情報通りで、助手には若い女性を間違いなく乗せている。白いライトバンのエンジンをかけて、教頭を追う準備に入った。